彗星

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題:最高の一時を

(今日は彼が来るのだから、最高のおもてなしをしなくては……!)
 ほうき星の天文台の書斎では、ロゼッタが熱心におもてなしについての本を読んでいた。
 ロゼッタは普段、そんな本は読まない。しかし、彼女がその本を読んでいる理由は。
 意中の彼ーーリンクが、天文台に来るからだ。
 しかし、初めてのピーチ以外の初めての来客なので、バトラーに相談してみると……。

『来客におもてなしは当たり前ですぞ、ロゼッタ様。まずはおもてなしをマスターしましょう!』

 ……とのことだった。しかし、そこでロゼッタの恥ずかしすぎる事実がバレる。
 それは……。
 “ピーチ以外初めてと言っているがピーチは一回しか天文台に来ていない!”というもの。
 気軽に話せる友達なのにそれはないでしょ……と、天文台中がしん、となったほど、チコ達は衝撃を受けていた。
 そんな中ロゼッタはというと、

『友達少ないし招待するのも相手の都合とか余計に考えちゃって誘えないんですよ!!』

 という、見苦しい言い訳だった。当然、チコ達は返答に困り俯き、ロゼッタは恥ずすぎる事実がバレ顔を真っ赤にし、同じく俯いていた。
 そこでバトラーは、

『まずは書斎へ行っておもてなしについての本を探しに行きましょう。無ければ近くの星へ買いに行きましょうか』

 と提案した。これには一同賛成し、ロゼッタも頷いた。

✧ ✧ ✧

 ……と、こんな感じで今に至る。
 ロゼッタはもとの勉強熱心なところを活かし、三百ページほどのその本を半分ぐらいまで読み進めた。
 今は朝の6時半ほど。彼が来るのは夜の9時くらいだ。
 それまで時間を潰すためにチコ達の世話やグランドスターの管理などをしていく。
 そして夜の6時になると、ロゼッタは書斎を出てキッチンへ入っていった。
 エプロンと三角巾を装着すると、星杖を駆使し料理を開始した。
 ロゼッタが作るおもてなし料理は、ハロウィンが近い季節というのもあり、濃厚なかぼちゃタルトと、かぼちゃのムサカを作ることにした。
 かぼちゃタルトとかぼちゃのムサカは時間がかかるので、バトラーの手伝いと星杖で効率的に作る。
 そうして1時間半後、ついにロゼッタのおもてなし料理が完成した。
 オレンジ色の綺麗な色をしたタルトと、具だくさんなギリシャ料理のムサカは、とても食欲をそそるものだった。
 あとは、彼が来るのを待つだけだ。

✧ ✧ ✧

 夜9時。
 約束通り、彼は来た。
 天文台の戸を叩いて、中に入ってきた。
「こんばんは、ロゼッタさん」
「こ、こんばんは、リンクさん!」
 力んでしまい、つい声量が大きくなってしまう。
 そしてリンクがテーブルの方を見ると、その顔が喜びに満ちた。
「この料理はロゼッタさんが作ったのですか?」
「まあ、はい……。バトラーの力もありますが……」
「すごいですね!おもてなし、ありがとうございます!」
(褒められた……!初めてのおもてなしで自信無かったけど、成功して良かった!)
 その後、二人で談笑したり食べたりして、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
 リンクが帰ったあと、ロゼッタは後片付けをしていた。
 しかし、その顔は楽しそうだった。
「上手くいって良かったですね、ロゼッタ様」
 バトラーが話し掛けた。
「ええ、彼もすごく喜んでいたし……私、幸せです」
 そう言って本当に幸せそうに笑うロゼッタは、胸が温かくなるのを感じていた。
 外では雪が、静かに降っていた。

『おもてなし』

10/28/2025, 1:10:00 PM