彗星

Open App

題:キスで返して

「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「美しいからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「優しいからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「頑張り屋さんだからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「全てが好きだからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
 この問いは、一生続くのだろうか。
 ずっとこの問いを繰り返している。それはもう、疲れるほどに。
 ーー貴方の全てが好きだから。
 それ以外に理由はない。けれど、あの人は心配なんだろう。
 そんな理由じゃ。その理由だけでは。
 何で返せばいいんだろう。
 この人の護衛を始めてから、段々この人のことが解ってきて、良いところもたくさん知った。
 当然、好きになった。
 柔らかい笑みとか、挫けず頑張るところとか、英傑達と優しく接するところとか……。
 そういうのを含めた全部が好きなのに、この人ーーゼルダ姫は分かってくれない。
 だから俺はゼルダ姫に近づいてーー。
「……っ!」
 キスをした。
 キスでもしないと、この問いは終わらなそうだったから。
「〜〜〜っ!」
 キスを止めてゼルダ姫の顔を見つめる。
 頬が紅潮して、息が少し荒い。恥ずかしがっているのは一目見て分かる。
「……これで、分かっていただけましたか?」
「っ……!」
 何か言おうとしているんだろうけど、言葉になっていない。
 キスで、貴方の全てが好きだということが伝わったと思う。
 ーー全部が好きなんですよ、ゼルダ姫。

お題『終わらない問い』

10/26/2025, 10:17:40 AM