題:ただ一言、美しい
貴方は美しい。星を観る者として一生懸命で、チコ達に注ぐ愛情が。
貴方は美しい。優しく儚げで、ガラスのように繊細で。
貴方は美しい。いつもはクールだけど、褒められた時の赤らめたその顔が。
貴方は美しい。無限の宇宙にも負けず劣らずのその顔が。
貴方は美しい。全てを魅了するその瞳が。
貴方は美しい。ミステリアスなその横顔が。
貴方は美しい。底辺の俺には決して届かぬその存在が。
貴方は全てが美しいーー。
そんな想いを言葉にして、ワルイージーー彼にしては珍しいーー赤い薔薇を、ロゼッタに差し出した。
これからは何のお題だったか書きます!
赤い薔薇はどんな花言葉か当ててみてください!
お題『美しい』
題:いつかの姫に想いを馳せて
キノコ王国のある華族学校。
その学校の一生徒であるロゼッタは、現王女の娘だった。
華族学校とは、元々高貴な人達が通う学校だが、ロゼッタはその生徒の中で最も位が高かった。
もちろん、友達も多く、成績もトップクラスに優秀。
そして彼女は、空想が大好きだった。
「十年後の私はきっと、純白の美しいウェディングドレスを着て、美しい殿方と結婚しているんだわ」
今日もロゼッタは頬に手を当て、空想に浸りながらニヤついている。
と、ロゼッタの友達が声をかけた。
「ロゼッタ、ちょっとこっち来て!」
「あ、はーい!」
気付いたロゼッタは、友達の後を追う。
友達がふと足を止め振り返ると、顔の前でパンッと手を合わせて懇願した。
「お願い!今年の劇でやる『星を観る者』の天文台の主兼王女役をしてほしいの!」
ロゼッタ達中等部は、今年の文化祭で劇をする事になったのだ。
そしてロゼッタは中等部一年にもかかわらず、中等部三年の人に、是非天文台の主兼王女役のホウア役をしてほしいのだとか。
「え、ホウアって……劇に出てくるあの長身の!?」
「そう!だってロゼッタ、長身だし綺麗だし、頼んできた人、別名ほうき星のホウキギと、もう一つのホウキギの呼び方のコキアを合わせた名前にしたって言ってたし。それくらい劇に熱が入ってる
のよ!だからお願い!これはロゼッタにしか出来ない役なの!」
「……私が、ホウア姫役……」
ロゼッタはこの状況を中々理解出来なかった。自分が劇のヒロイン役なんて……。
ロゼッタ数秒悩んだ末、こう言った。
「分かったわ。その役、引き受けるわ」
「わぁ……!ありがとう、ロゼッタ!恩に着るわ!」
抱きついてきた友人を見ながら、ロゼッタは練習を頑張ろうと決意した。
〜文化祭当日〜
「最後は、中等部一年による劇です!」
司会の声が広い会場に響き渡る。会場から拍手がわく。
ロゼッタは緊張しながらも、舞台に立った。
ーー私は星を観る者。此処に来たということは、何かあるのでしょう?
ーーああ。実は、攫われてしまった姫を助けるために力を貸してほしいんだ。
ーー分かりました。では、このチコを貸しましょう。
ーーありがとう。助かるよ。貴方の名前は?
ーーホウア。このほうき星の天文台から、宇宙を見守っています。……ご武運を。
ーーうん。事が片付いたら、また来るよ。
ーーええ、その時を心待ちにしていますよーー
暫くして劇は終わった。会場からは割れんばかりの拍手が鳴り響く。
ロゼッタは微かな達成感を感じていた。
その後、ロゼッタはその劇のヒロインと自分を重ねて空想をする事が多くなった。
夢みる少女のようにーー。
題:二人きりの空間(ワルロゼ恋愛)
テニスの終了後、いつもの様に帰ろうとすると、そこには土砂降りの雨が待っていた。
行く途中は晴れだったので、傘も何も持ってきていない。かといって他の人に傘を借りるのも気が引ける。
ロゼッタがエントランスで右往左往していると、意中の紫の彼ーーワルイージが後ろに立っていた。
同じくワルイージもロゼッタに好意を寄せていることはまだ誰も知らない。
「ワ、ワルイージさん……」
意中の彼をいざ相手にすると、上手く言葉を発せられない。
「おう、どうした?」
「じ、実は、傘を忘れてしまったようで……」
ワルイージはまたとないチャンスを感じた。
ーーこれは、相合傘ってやつが出来るんじゃねぇのか……?
「分かった。取ってくる」
「え?ちょっと、待ってください!」
彼女の声を無視して、持ち手に薔薇の模様がある紫の傘を持ってきた。
細身のワルイージの傘は少し小さめだ。
「ほら行きますよ、お姫様」
「え、しかし……」
「傘をささずに帰ればその美しさがかすんでしまいますよ」
彼の紳士さが目立つ。
「……そこまで言うのであれば……」
本当は相合傘が出来るのが嬉しかった。これを狙って傘を置いてきたわけではない。
けれどーーこの日ばかりは、雨を降らせてくれた神様に感謝するしかなかった。
少し小さめの傘の中で肩を寄り添って歩く二人の影。
二人だけの傘の中での秘密ーー。
題:微かな温もりを感じて
遺物調査の帰り道。まだ三分の一も行っていないところで雨に遭った。
行く前は快晴だったので、何の準備もしていない。
かなりの大雨だ。このままでは風邪をひいてしまう。でも近くに馬宿もないし……。
ふとリンクの方を見ると、手で雨を遮るようにして天を見上げている。
ーーリンクは風邪ひかないのかな。
そんな心配が頭をよぎった。
そう思っている内にも雨足は強くなっていく。
「……くしゅんっ」
くしゃみが出てしまった。端ないと思うと同時に、寒さに身体が震える。
と、後ろからフードが羽織られた。
驚いて後ろを見ると、リンクがやったのだと瞬時に理解した。
恥ずかしさに顔が紅潮しているのが自分でも分かる。
そして更に驚いたことに、頭に手が置かれた。リンクが自分の頭を撫でていたのだ。更に顔が赤くなる。でもそれを、心地よく思う自分もいた。
ーー子供の頃風邪をひいた時にしてもらってたのかな。
城に着くまでそうしてもらっていた。
❁ ❁ ❁
それから2週間程、あの日のリンクの手の温もりを感じ、遺物調査と泉での修行に集中出来なかったとかーー。
題:馬鹿みたい
世の中には、勝ち負けなんてどうでもいいって人もいる。
逆に勝ち負けにこだわる人もいる。
少なくともロゼッタは、「勝ち負けにこだわる」方だった。
しかしある日を境に、勝ち負けなんてどうでもいいと思うようになった。
✧ ✧ ✧
マリオカート・バトル戦。
今回はパックンVSスパイ。4分間、パックンから逃げ切れられれば勝ちという、単純な内容。
ロゼッタはスパイ側。牢屋の近くに潜伏することが多いので、仲間が捕まればすぐに助けられる。
でも、今回のバトルは牢屋の周りをパックンが見張っていた。
これでは牢屋の鍵を開けられない。
潜伏場所を変えようとした瞬間、パックンに捕まった。
どうやらロゼッタ以外はもう捕まっていたらしい。第一ラウンド終了。
ーー悔しい。
勝ち負けにこだわるロゼッタは、悔しんだ。
その後もバトルは続きーー、結果はボロ負け。
ロゼッタは深い溜息を吐いた。
✧ ✧ ✧
ロゼッタのスマホに、一通のメールが送られてきた。
送ってきたのはベビィロゼッタ。相手チームのメンバーであり、ロゼッタの幼少期をモチーフとした人物だ。
ロゼッタは銀色の王冠を取った。どうせ後から寝るのだから。
『ママへ
ママ、今日のバトルですっごくくやしそうな顔をしてたよね。
ママが勝ち負けにこだわる人っていうのはしってる。だけど、それでママが落ち込むのはいや。
別に勝ち負けなんてどうでもいいって、ピーチお姉ちゃんが言ってたよ。
ベビィロゼッタより』
ロゼッタは天を仰いで笑った。そしてスマホを放り投げた。
ベッドに顔を填める。自分を元気づけるために、わざわざピーチに相談していたのだ。
勝ち負けにこだわることでベビィロゼッタを悲しませることになるのならーー。
ーー勝ち負けなんてどうでもいい。今までこだわっていた自分が馬鹿みたい。
自分の愚かさとベビィロゼッタの優しさで、涙が止まらない。
ーー勝ち負けなんてどうでもいい。その言葉が反芻した。