題:挨拶の星くず(大会編)
✰大会
今日は第7回マリオカート大会当日。
寡黙な新入生を相手に3ヶ月。新入生は大会に出られるほどにまで成長した。
リンクさんはその強さから、「マリカ界の第二主人公」やら「マリカ神」の異名をもつ。
え、私?私は……「チーム戦の守護神」……。
あ、笑わないでくださいね?同チー(同じチームのことですよ)の人を支えているは私ですが。
コースは「エレクトロドリーム」、「スカイガーデン」、「レインボーロード(スペシャルカップの)」、「リンリンメトロ」、「パリプロムナード」、「ロゼッタプラネット」の6コースです。ロゼッタプラネットは私が選びました。
大会、どうなるかなぁ。
✰チーム分け
いよいよチーム分けの工程。
私はマリオチーム。お、ヘイホーさんがいる。
と、相手チームのピーチさんがこう言ってきました。
「絶対負けないから覚悟なさい」
そう言って私に勝てたことありました?出かけた言葉をギリギリ飲み込む。
いったい何処からそんな自信が……あ。
私は相手チームの表を見て声をあげました。なぜなら、相手チームにリンクさんがいたからです。
私の教え子がチーム分けの時点でもう活躍している……。負けてられない!
✰最終コース
大会は順調に進み、最終コースになりました。
ロゼッタプラネットーー雪と氷を基調としたコース。ゴール手前にほうき星の天文台があるのが魅力です!
スタート。スタートダッシュを決めて先頭に立つ。今のところリンクさんが全て1位を取っているので焦る。
1周目と2周目で抜かしたところは何回もあったけれど、その度に挽回される。
いよいよ最終コーナー。不味い、このままでは負けてしまう。同じチームのウェンディさんも全力で援護してるけどリンクさんには無意味だし……、どうしよう!
アイテムボックスから出たのは赤こうら。リンクさんはキノコを持っているから、最後のショートカット中に投げれば大幅ロス!1位になれるかも!
ショトカ地点(ショートカット地点)目前。ショトカに行こうとするリンクさん。ここだ!投げた赤こうらはリンクさんに向けて一直線ーーとはいかなかった。
フェイント……。リンクさんはショトカするフリをしたのだ。私はそのままショトカ地点にアイテム無しで突っ込む。ダート噛みまくってる。負け確定。
リンクさんはイタズラが成功した子供みたいな笑顔を向けた。怒るに怒れない……。ズルいよ、新入生。
✰表彰式
結果、私達マリオチームの負け。
リンクさんは表彰台の上で優勝トロフィーを高々と掲げている。
すると、マリオさんがポンと私の肩を叩いた。
「リンク、あの3ヶ月でこんなにも強くなるなんて……きっとロゼッタの教え方が上手いからだね」
それは褒め言葉なのか嫌味なのかは分からない。けれど、ほんの少しだけ誇らしかった。
挨拶の星くず END
題:挨拶の星くず(リンク編)
✰ある朝のこと
今日、マリオカートの正式なメンバーとして入る日……らしい。
マリオさんによると、「皆面倒見のいい先輩だから。特にこれから君がお世話になるロゼッタって人」とのこと。
お世話になるって……部活みたいなもの?そもそも部活っていうのもよく分からない。
とにかく!今一番優先すべきなのは!自己紹介のことだろ!
✰自己紹介
舞台の裏からちょっと見た程度だけど、かなりいる。
入る前にマリオカートについて少し頭に叩き込んでいる。確かメンバーの数は……50人だった気がする。
50人の前で自己紹介って、結構ハードル高くない……?
でもやらないといけないので、とりあえずマイクの調子を確認してから自己紹介。
「……リンクです。今日からマリオカートのメンバーとして頑張っていくので、先輩の皆さん、どうかよろしくお願いします」
会場から拍手が挙がる。
会話が聞こえなくもない……ん?イケメン?嬉しいけどそこまでイケメンか?
で、俺のお世話になる人は……あ、あの片目を隠した水色のドレスの人かな。一応その人の特徴も頭に叩き込んである。
上手くやっていけるかな……。不安ばっかりだな。
✰ロゼッタ
暇だったからウーフータウンという場所の庭に腰掛けている。
ロゼッタさん(?)に挨拶しようと思ってあちこち探したけど居なかったし、道中女性の先輩方がめっちゃ絡んできたし。
「大きいがっこうだなぁ……」
正直がっこうというものを知らない。マリオさんに紹介してもらったけどイマイチ分からなかった。だってハイラルにはがっこうなんてもの、ないんだもの。
そんな風にボーっとしていると、不意に声をかけられた。
「リンクさん!」
誰かが呼んでる?そう思って声のした方を向くと、ロゼッタさん(?)がいた。
ロゼッタさん(?)も探してたのかな……。申し訳なく思う。
するとロゼッタさん(?)は俺の目の前に立った。だから俺も立った。背高いな……と思っていたら、ロゼッタさん(?)が何かを差し出した。
「……何でしょう?」
思ったより低い声がでてしまった。警戒するつもりはなかったんだけど……。ごめんなさい。
「これ、挨拶代わりでなんですが、どうぞ」
星のようなもの。律儀だな。
「これは……?」
徐ろに口を開く。
「星くずです。硬そうに見えますが、中は柔らかいので大丈夫です。味は……甘いハチミツの味がします」
へぇー。この見た目からは甘いハチミツの味が想像できない。
けれど、嬉しい。
「あ、ありがとうございます。ロゼッタ……さん?」
確認するように名前を言う。
と、彼女の顔がパッと輝いた。
名前呼んだだけなんだけどな。
そして彼女は、去り際にこう言った。
「私が貴方を任されたので、くれぐれも逃げ出さないように」
不思議に思った。
だって、マリオカートに入って、頑張っていくって決めたんだから、逃げ出すはずがない。
ロゼッタさんはマリオカートに一生懸命なんだな。
そう思って微笑みかけたけど、彼女は気づいただろうか。
✰『挨拶の星くず(大会編)』、書こうと思っています!
題:挨拶の星くず
✰ある朝のこと
今日、マリオカートに新入生が入ってくる……らしい。
名前は知らない。マリオさんによると、「あんまり喋らない子だから、ロゼッタ、色々頑張って!」とのこと。
色々頑張って、って……。作戦たてる時とか?そんなのどう頑張っていいか分からないよ〜。
でも!先輩として後輩のお手本にならないと!気合い入れて頑張ろう!
✰新入生
いよいよ新入生が来るという時。会場はざわついている。
ほら、よくあるあれ。どんな子かなーとか、仲良くできるかなーとか。
……お、来た。トントンと叩いてマイクの調子を確認してる。律儀だな。まぁ、私もするんですけど。
「……リンクです。今日からマリオカートのメンバーとして頑張っていくので、先輩の皆さん、どうかよろしくお願いします」
おぉ、しっかりしている。「頑張っていく」って宣言してる時点でもう凄い。だって皆さん、言ったこと実行できる自信ないから「頑張っていこうと思います」とかですし。
会場から拍手。女性メンバーは私を除いて全員「イケメンね!」「やだカッコいい♡」と言っている。確かに顔は整ってる。かなり。でも魔女である私は恋愛に超絶疎いのです。
……あ、そういえば。私は新入生が来ると挨拶代わりの星くずをあげようって決めてるの、知ってました?何も持たずに挨拶ってちょっと……ってなるんです。
この子を今日から私が引き受けるのね。……会話難しそう。だって無表情だし……。上手くやっていけるかな。
✰リンク
まずは挨拶代わりの星くずをあげにいこう。
えーっと……何処だ?いないなぁ。あんな女性に人気なら目立ちそうなんだけど……。かれこれ30分、見つからないです。
あっ、居たーーー!!やっと見つけた!というかなんでウーフータウンの中央の庭に腰掛けてんの……。
「リンクさん!」
少し大きめの声で話しかけたけど……あ、気づいた。
リンクさんの目の前に来て。リンクさんも立った。背小さいな。160cmくらいかな?ちなみに私は215cmです(よく「背高っ!!」てびっくりされます)。
「……何でしょう?」
怪しむような目やめてほしいな……。マリオカートの正式なメンバーなのに。
警戒されてるだろうけどわざと無視して綺麗にラッピングしてきた星くずを渡します。
「これ、挨拶代わりでなんですが、どうぞ」
正直言って、緊張した。だってこの子が初めての新入生なんですもん。
「これは……?」
予想通りの返答。まぁ、そうなりますよね。
「星くずです。硬そうにみえますが、中は柔らかいので大丈夫です。味は……甘いハチミツの味がします」
ゆっくりと、丁寧に教える。初見の人には普通に言っても分からないだろうから。
「あ、ありがとうございます。ロゼッタ……さん?」
名前覚えてくれたんだ!小さな歓喜。
私は去る前に、こう一言。
「私が貴方を任されたので、くれぐれも逃げ出さないように」
リンクさんは不思議そうな顔をしていた。
寡黙な新入生と上手くやっていけるかという不安の中に、楽しみも混じっていました。
✰『挨拶の星くず(リンク編)』を書こうと思っています!
題:最後の言葉
最近、ママの元気がない。ママは元気だと言っているけど、私にはそうは思えなかった。
ーー明らかに無理をしている。
直感的に思った。
娘として母の身体を心配するのは当然なのだ。
✧ ✧ ✧
お日様の光が燦々と降り注ぐ夏の昼のこと。
バルコニーで外を見ていたママに、そっと話しかけた。怪しまれないように、いつもの声の調子で。
「ママ、最近元気ないけど大丈夫……?」
ママは振り返る。それは、いつもと変わらない元気なママ……に見えなかった。
何処か寂しげで。
「大丈夫よ、ロゼッタ。ママはいつでも元気よ」
私に抱きつきながら言う。
すると、私の腕に一粒の水があたった。雨かと思って上を見ると、ママは泣いていた。
それはまるで……娘の私を置いていくのを拒むかのように。
そう、ママは本当に私を置いていくのを拒んでいるのだ。
「ママ、どうしたの……まさか」
最悪な事が脳裏をよぎった。
「ロゼッタ、貴方とこうして話せるのも、これで最後かもしれない。だから、よく聞いていてね」
私はふるふると首を横に振った。
ママには逝ってほしくない。
「ロゼッタ、貴方は一国の王女として、民を想うことよ。そして……私がいつまでも貴方を愛していることを、忘れないで」
私はさっきとは対照的に、こくこくと首を縦に振った。
ママがいつまでも私を愛しているということを、私は胸に刻んだ。
✧ ✧ ✧
その夜、ママは眠るようにして息を引き取った。
最初は息を引き取ったということが理解出来なかった、したくなかった。
昨日ママは言ってくれたのに。結局、泣くことしか出来なかった。
ママの入った棺は、あの丘の上のーー星見のテラスにある木の下に入れられた。
夜、眠い目をこすってパパと星を見に出かけた、あの丘ーー、雪の積もった日、弟とソリをかついで登った、あの丘ーー、少し風の強い晴れた日、ママとお弁当を食べた、あの丘ーー。
そんな家族との思い出がいっぱいに詰まったあの丘の木の下に、ママは入れられた。
ママとの他愛のない生活は、これで最後になってしまったけれどーー。
ママはいつまでも、私のことを愛してくれているという真実を、私は忘れないーー。
題:懐かしい響き
ーーとても懐かしい響きです。
彼女はゆっくりと、噛み締めるようにそう言った。
それは、上も下も星に包まれた、宇宙を漂う天文台のテラスで言った言葉だった。
✧ ✧ ✧
今日ある人物が、ほうき星の天文台を訪れた。
ピーチ姫を救うと共に、天文台の動力源であるグランドスターを邪から取り戻してくれた英雄ーーマリオだ。どうやら彼は、ロゼッタの様子を見に来たらしい。
「やぁロゼッタ、元気にしてたかい?」
マリオはテラスにいる長身の女性ーーロゼッタに声をかけた。
彼女はこちらを向き、ニコリと微笑み返した。
「ええ、元気ですよ。身体を気遣って下さり、ありがとうございます」
柔らかい声で礼を述べるロゼッタ。見つめ返されたその美しい瞳に、思わず吸い込まれそうになる。
「立ち話もあれなので、お茶を飲みながらでもどうでしょう」
優しく問う。
「ああ、そうだね、ご馳走させてもらうよ」
マリオは快く承知した。そこでロゼッタは星杖を取り出し一振りすると、白いガーデンテーブルとガーデンチェアを出し、アプリコットの香りのする紅茶を注いだ。
マリオは一口すする。
「……マリオ……とても懐かしい響きです」
「それ、いつも言っているよ」
いつもの台詞を口にした彼女は、マリオの言葉にクスリと笑う。
彼女は席を立ち、テラスから身を乗り出してマリオに言った。
「とても懐かしい響きの貴方の名前を、呼んでもいいかしら」
珍しく、敬語じゃない。
でも、銀河の瞳を細めて言う彼女は、とても儚げで。
自分は今呼んでほしいとも思った。
「……勿論いいよ、僕も呼んでほしい」
その返答に、ロゼッタは子供のように無邪気に笑った。
そして、とても懐かしい響きの彼の名前を言った。
「……マリオ」
貴方の名前を呼んだ日は、美しい星の流れる星降る夜だった。