題:懐かしい響き
ーーとても懐かしい響きです。
彼女はゆっくりと、噛み締めるようにそう言った。
それは、上も下も星に包まれた、宇宙を漂う天文台のテラスで言った言葉だった。
✧ ✧ ✧
今日ある人物が、ほうき星の天文台を訪れた。
ピーチ姫を救うと共に、天文台の動力源であるグランドスターを邪から取り戻してくれた英雄ーーマリオだ。どうやら彼は、ロゼッタの様子を見に来たらしい。
「やぁロゼッタ、元気にしてたかい?」
マリオはテラスにいる長身の女性ーーロゼッタに声をかけた。
彼女はこちらを向き、ニコリと微笑み返した。
「ええ、元気ですよ。身体を気遣って下さり、ありがとうございます」
柔らかい声で礼を述べるロゼッタ。見つめ返されたその美しい瞳に、思わず吸い込まれそうになる。
「立ち話もあれなので、お茶を飲みながらでもどうでしょう」
優しく問う。
「ああ、そうだね、ご馳走させてもらうよ」
マリオは快く承知した。そこでロゼッタは星杖を取り出し一振りすると、白いガーデンテーブルとガーデンチェアを出し、アプリコットの香りのする紅茶を注いだ。
マリオは一口すする。
「……マリオ……とても懐かしい響きです」
「それ、いつも言っているよ」
いつもの台詞を口にした彼女は、マリオの言葉にクスリと笑う。
彼女は席を立ち、テラスから身を乗り出してマリオに言った。
「とても懐かしい響きの貴方の名前を、呼んでもいいかしら」
珍しく、敬語じゃない。
でも、銀河の瞳を細めて言う彼女は、とても儚げで。
自分は今呼んでほしいとも思った。
「……勿論いいよ、僕も呼んでほしい」
その返答に、ロゼッタは子供のように無邪気に笑った。
そして、とても懐かしい響きの彼の名前を言った。
「……マリオ」
貴方の名前を呼んだ日は、美しい星の流れる星降る夜だった。
5/26/2025, 12:42:53 PM