彗星

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題:いつかの姫に想いを馳せて

 キノコ王国のある華族学校。
 その学校の一生徒であるロゼッタは、現王女の娘だった。
 華族学校とは、元々高貴な人達が通う学校だが、ロゼッタはその生徒の中で最も位が高かった。
 もちろん、友達も多く、成績もトップクラスに優秀。
 そして彼女は、空想が大好きだった。
「十年後の私はきっと、純白の美しいウェディングドレスを着て、美しい殿方と結婚しているんだわ」
 今日もロゼッタは頬に手を当て、空想に浸りながらニヤついている。
 と、ロゼッタの友達が声をかけた。
「ロゼッタ、ちょっとこっち来て!」
「あ、はーい!」
 気付いたロゼッタは、友達の後を追う。
 友達がふと足を止め振り返ると、顔の前でパンッと手を合わせて懇願した。
「お願い!今年の劇でやる『星を観る者』の天文台の主兼王女役をしてほしいの!」
 ロゼッタ達中等部は、今年の文化祭で劇をする事になったのだ。
 そしてロゼッタは中等部一年にもかかわらず、中等部三年の人に、是非天文台の主兼王女役のホウア役をしてほしいのだとか。
「え、ホウアって……劇に出てくるあの長身の!?」
「そう!だってロゼッタ、長身だし綺麗だし、頼んできた人、別名ほうき星のホウキギと、もう一つのホウキギの呼び方のコキアを合わせた名前にしたって言ってたし。それくらい劇に熱が入ってる
 のよ!だからお願い!これはロゼッタにしか出来ない役なの!」
「……私が、ホウア姫役……」
 ロゼッタはこの状況を中々理解出来なかった。自分が劇のヒロイン役なんて……。
 ロゼッタ数秒悩んだ末、こう言った。
「分かったわ。その役、引き受けるわ」
「わぁ……!ありがとう、ロゼッタ!恩に着るわ!」
 抱きついてきた友人を見ながら、ロゼッタは練習を頑張ろうと決意した。

                                      〜文化祭当日〜

「最後は、中等部一年による劇です!」
 司会の声が広い会場に響き渡る。会場から拍手がわく。
 ロゼッタは緊張しながらも、舞台に立った。

ーー私は星を観る者。此処に来たということは、何かあるのでしょう?
ーーああ。実は、攫われてしまった姫を助けるために力を貸してほしいんだ。
ーー分かりました。では、このチコを貸しましょう。
ーーありがとう。助かるよ。貴方の名前は?
ーーホウア。このほうき星の天文台から、宇宙を見守っています。……ご武運を。
ーーうん。事が片付いたら、また来るよ。
ーーええ、その時を心待ちにしていますよーー

 暫くして劇は終わった。会場からは割れんばかりの拍手が鳴り響く。
 ロゼッタは微かな達成感を感じていた。
 その後、ロゼッタはその劇のヒロインと自分を重ねて空想をする事が多くなった。
 夢みる少女のようにーー。

6/7/2025, 12:31:40 PM