『ただ君だけ』
君と話すと世界が明るく感じる。
君が笑うと体温が二、三度上がる気がする。
君が他の人と心が痛む。
君に振り回されてばかりだ。
...まぁ、私が勝手に一喜一憂してるだけだけど...
それでも責任取って欲しいくらい。
何回か君を忘れようと色んなことを試してみた。
マッチングアプリだったり恋愛から離れてみたり...
そしたら世界は色を失ったみたいに面白くなくなった。
君が、ただ君だけが私の世界を鮮やかに変えてくれた存在だ。
今日も君を一日中見ていた感想を手紙にして送るね。
語り部シルヴァ
『未来への船』
出航の汽笛がまた鳴る。
また誰かの未来が決まったようだ。
ここは未来への行き先を決める港。
夢を見つけた人を見送る場所。
ここを旅立つ人はみんな希望に満ち溢れた顔で船に乗り、
その人を港にいる人たちが声援を送ったり
クラッカーを鳴らしたりなど色んな方法で見送る。
人は"希望の港"なんていつしか呼ぶようになっていった。
それを皮肉だと言う人も一部居た。
やりたいことが見つかっていない、見つけたけど
技量不足で船に乗れなかったなど理由は様々あった。
僕もその一人だ。
やりたいことを小さい頃から探したがここに来るまで
結局見つからなかった。
だから僕はここで受付をして夢を見つけた人を見送っている。
僕の分まで頑張れと勝手に期待しながら...
「...では、夢に向かって頑張ってください。」
笑顔で見送り、少し経った後で船の汽笛が鳴る。
頑張れ。夢を見つけた貴方ならきっと素敵な未来になる。
そう思うとなんだか自分が余計に惨めに感じるだけだった。
語り部シルヴァ
『静かなる森へ』
今日の天気は大雨だ。
風も拭いて嵐のような天気。
それなのにここの空間は静かすぎる。
ここは少し暗めの森。
子供たちが度胸試しで夜に来たり幽霊が出ると噂されたり
化け物が住んでると言い伝えがあったり...
少し暗めな雰囲気が外観から溢れてるような森。
思わず雨宿りのために入ってしまったが、すごく静かだ。
走ってきた僕の荒い息だけしか音がない。
雨の音は聞こえるが遠くからしか聞こえない。
僕が濡れているのがおかしいくらいだ。
けもの道をまっすぐ歩くが獣がいる気配がない。
雨粒も空を隠すほどの葉が受け止め地面が乾いているほどに...
静かで不気味だ...
雨が止んだらさっさと帰ろう。
少し大きめの木にどかっと座り込み息を整える。
静かで恐怖を覚えるくらいの空間なはずなのに、
遠くから聞こえる雨音がどこか安心感を与えてくれる。
...当分雨が止まないで欲しいなと思う自分がいた。
語り部シルヴァ
『夢を描け』
「んー...」
紙と睨み合いをしてどれだけ経っただろうか。
腕を組み続けて疲れているのに
気が付かなかったほど時間が過ぎていた。
進路希望調査。
誰もが一度はつまづくところだろう。
第一希望から第三希望まであるが...
どれが一番とかじゃなくてそもそも
どこへ行きたいかすら決まっていない。
それなのに進路希望を聞かれても答えれるわけがない。
これを渡された時の先生の言葉を思い出した。
「夢は自由に描けます。
好きなことが思わぬ進路になったり...」
残念だ。僕の夢のキャンパスは真っ白だ。
ここから筆が進む気がしない。
「考えるのやーめた。」
悩んでても仕方がない...
これについてはまた明日考えるとしよう。
語り部シルヴァ
『届かない......』
「えいっ...」
投げたボールは相手の前で三回ほど跳ねて転がっていく。
ダメだ...上手くいかない。
球技は苦手だ...ボールが思った方向へ行かないことが多い。
しかも今日は一番嫌いなソフトボール。
キャッチボールですらこの有様だ。
「ごめーん。届かなかった〜。」
「大丈夫だよ。じゃいくよー」
相手の投げたボールは高く飛び
私が想像しているよりも頭上を行く。
頑張ってボールがグローブに着地するよう調整しても...
「あだっ」
「おーい。大丈夫?」
ボールが頭に着地した。硬くて痛い...
「お節介かもだけどー!もっとボールをよく見てみてー!
あと投げる時はボールと一緒に体を前にして
投げるんじゃなくてボールを腕をメインに
体全体で押すイメージでやってみて!」
遠くから相手の声が聞こえて腕で丸を作り
わかったのジェスチャーをした。
相手が構えたのでアドバイス通りにやってみる。
「投げる時に体を前にしてボールを...えいっ!」
さっきよりも大きく弧を描いて飛ぶ。
そしてゆっくりと落ちていって...
また相手の前で跳ねて転がった。
「いい感じ!ナイスボール!」
届かなかったけど相手がフォローしてくれる。
恥ずかしいような悔しいような感情が込上げる。
あぁ...早く終わって欲しい。
そう思いながらもまた相手からのボールを
キャッチするためにグローブを構えた。
語り部シルヴァ