語り部シルヴァ

Open App

『届かない......』

「えいっ...」
投げたボールは相手の前で三回ほど跳ねて転がっていく。
ダメだ...上手くいかない。
球技は苦手だ...ボールが思った方向へ行かないことが多い。
しかも今日は一番嫌いなソフトボール。
キャッチボールですらこの有様だ。

「ごめーん。届かなかった〜。」
「大丈夫だよ。じゃいくよー」
相手の投げたボールは高く飛び
私が想像しているよりも頭上を行く。
頑張ってボールがグローブに着地するよう調整しても...

「あだっ」
「おーい。大丈夫?」
ボールが頭に着地した。硬くて痛い...

「お節介かもだけどー!もっとボールをよく見てみてー!
あと投げる時はボールと一緒に体を前にして
投げるんじゃなくてボールを腕をメインに
体全体で押すイメージでやってみて!」
遠くから相手の声が聞こえて腕で丸を作り
わかったのジェスチャーをした。
相手が構えたのでアドバイス通りにやってみる。

「投げる時に体を前にしてボールを...えいっ!」

さっきよりも大きく弧を描いて飛ぶ。
そしてゆっくりと落ちていって...
また相手の前で跳ねて転がった。

「いい感じ!ナイスボール!」
届かなかったけど相手がフォローしてくれる。
恥ずかしいような悔しいような感情が込上げる。

あぁ...早く終わって欲しい。
そう思いながらもまた相手からのボールを
キャッチするためにグローブを構えた。

語り部シルヴァ

5/8/2025, 10:41:08 AM