語り部シルヴァ

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『未来への船』

出航の汽笛がまた鳴る。
また誰かの未来が決まったようだ。
ここは未来への行き先を決める港。
夢を見つけた人を見送る場所。

ここを旅立つ人はみんな希望に満ち溢れた顔で船に乗り、
その人を港にいる人たちが声援を送ったり
クラッカーを鳴らしたりなど色んな方法で見送る。

人は"希望の港"なんていつしか呼ぶようになっていった。
それを皮肉だと言う人も一部居た。
やりたいことが見つかっていない、見つけたけど
技量不足で船に乗れなかったなど理由は様々あった。

僕もその一人だ。
やりたいことを小さい頃から探したがここに来るまで
結局見つからなかった。
だから僕はここで受付をして夢を見つけた人を見送っている。
僕の分まで頑張れと勝手に期待しながら...

「...では、夢に向かって頑張ってください。」
笑顔で見送り、少し経った後で船の汽笛が鳴る。
頑張れ。夢を見つけた貴方ならきっと素敵な未来になる。

そう思うとなんだか自分が余計に惨めに感じるだけだった。

語り部シルヴァ

5/11/2025, 10:33:22 AM