『星』
まだ寒さが続く夜の下、手袋を忘れてしまい手をコートの
ポケットに突っ込み肩を震わせながらトボトボと歩く。
早く暖かくなって欲しい。服のかさ増しで肩こりが
酷くなったり朝の準備が多くなって嫌だ。
そのせいで少しでも早く
布団から出ないといけないのは朝から地獄だ。
ため息をつくとマスク越しにでも口から白い息が漏れた。
その白い息を消えるまで見送ると空は満点の星空だった。
「おぉ...綺麗。」
白い息があとも上を見ながら歩いていると
前方から強い衝撃を受けた。
「〜〜〜〜っ!!!」
咄嗟に頭を抱える。
寒さは吹き飛び自分の周りに星がキラキラと輝いている。
あぁもう散々だ。さっさと帰ってご飯を食べて寝よう。
ぶつけた部分を冷たい手で冷やしながら
チカチカした視界をフラフラしながら帰った。
語り部シルヴァ
『願いが一つ叶うならば』
家に帰った瞬間。ここが悲惨な現場に
なっているなんて誰が予想出来ただろうか。
休み明けの出勤日。
ゴミ出しも忘れず仕事もこなせて順調なスタートを切れた。
家に帰れば愛しのわんちゃんがお出迎えして
一緒にご飯を食べてのんびりするというのが理想だった。
なのに家に帰ってもわんちゃんは顔を出さない。
いつもと違う。そんな違和感を覚えて
恐る恐る廊下を歩いてわんちゃんを探す。
台所でわんちゃんの背中を見つけた時は安堵した。
そのまま歩いていくと、全てを理解した。
棚の鍵を閉め忘れていたようで、
中身をわんちゃんがぶちまけていた。
あぁ、神様。今願いをひとつ叶うなら...
朝の自分に戸締りをチェックするよう言ってください。
しょんぼりしているわんちゃんを怒るに怒れない私は
すぐさま片付けることにした。
語り部シルヴァ
『嗚呼』
「じゃ、補習だからやっとけよ〜」
担当代理の先生はそう言いながら教室を出ていった。
先生が出て行ってすぐに教室はガヤガヤ音でうるさくなる。
確かに静かにしとけとは言われなかったけど...
高校生にもなってルールを守れないものかとため息をついてやるはずだった範囲を教科書を見つつ勉強することにした。
こんなバカ真面目だから。
という理由でクラス委員長を任されたが正直やる気は無い。
仕事も無ければクラス委員長だからとみんなが
言うことを聞いてくれるわけでも無さそうだ。
授業開始30分。
思ったよりもやる範囲が狭く終わってしまった。
次の授業分も...と思ったが次は今日やる予定だった部分を
やるだろうと思い教科書を閉じた。
あと半分ちょい。
周囲の様子を見ると最初とほぼ変わっていなかった。
ゲラ笑いするカースト上位の女子、
スマホの音量を大にしてゲームする男子。
静かに、それでも目立ってしまう男子たち...
いつも通りだ。
やることが無くなったから空を見ながら寝ることにした。
嗚呼、今日も平和で何よりだ。
語り部シルヴァ
『秘密の場所』
公園の整備された道を進む中、
人が見ていないのを確認して道から外れて獣道を進む。
進んだ先は整備はされていないものの、
ぽっかりと空間が広がる。
周囲は背の高い草木に覆われて地面は沢山踏まれて
雑草は生えていないしっかりと踏みしめれる地面。
僕の匂いかカバンに入れてあるおやつの匂いか、
僕がここに来るのをわかっていたように
僕が入ってきた入口を囲むように待機していた。
「こんにちは。可愛い住人さん。」
喋ると相手は「にゃ」と満足気に返事する。
ここに住む猫ちゃんを追いかけて見つけたこの場所。
人に慣れた猫ちゃんたちがこの時期
僕で暖を取りに集まってきてくれる。
今は誰も知らない秘密の場所。
変な人に荒らされないようにどうかずっと見つからないでね。
語り部シルヴァ
『ラララ』
家に帰ってすぐ床に体を投げ出す。
フローリングの冷たさがすぐに全身を冷やす。
けれどもう1歩も動けない。疲れた。
頑張って寝返りをして天井を見上げる。
電気の付いていない電球が月のようだ。
目を瞑り叫ぼうとした。
日々の疲れを叫び声で描き消そうとした。
大きく息を吸い...
「...〜♩。」
叫び声は歌声に変わった。
というか変えた。シンプルに近所迷惑だ。
こ疲れた時は歌を歌うのが最終手段になっている。
私の最後の足掻き...
「〜♪。...ぐすっ。」
歌声はどんどん鼻声に変わっていく。
あぁダメだ。今日は無理っぽい。
意識が薄れてきた。
次目が覚めたら全て片付けよう...
睡魔に任せて私はそのまま目を閉じた。
語り部シルヴァ