語り部シルヴァ

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1/19/2025, 10:34:41 AM

『ただひとりの君へ』

ただひとりの君へ。
君はかけがえのない存在だ。
他の人に君の代わりなんていない。
君だから...

ここまで書いてペンを置く。
くさい。いや毎日お風呂に入ってるからそっちじゃない。
どうも言葉がくさくってしまう...

もっとこう...特別な言葉を使いたい。
普段の語彙力の無さを思い知らされる。

「ねえねえ、何してるの?」
「あっ、ノックしてよ〜」
中学生みたいなセリフに笑う彼女に恥ずかしくなる。

「あー、もしかして結婚の...?」
「そうそう。なるべく君にも初見で聞いて欲しいから...」
「どーせくさいセリフばっかになって悩んでるんでしょ。」
悩む理由を当てられ、彼女はニヤニヤと笑う。

「どんなスピーチでも楽しみにしてるよ。頑張ってね。」
俺の頬にキスをしてリビングに来たら、
コーヒー飲もうねと言い彼女は部屋から出ていった。

...彼女のためにももっと頑張ろう。
ペンを持ち新しい紙と向き合った。

語り部シルヴァ

1/18/2025, 11:02:11 AM

『手のひらの宇宙』

私の大事なもの。
昔おばあちゃんから貰ったお守り、
高校の思い出の1ページ、
可愛い娘、
愛しい旦那さん、
そして私自身。

指を折りながら自分の大事なものを確かめる。
私の好きな物は空に広がる星のように沢山ある。
その中でも特に好きで大切なものが今数えたもの。

これらがないと今の私じゃないと言えるほど。
地球に月があるように、そのまわりに宇宙があるように。

この宇宙は私が守り続ける。
自分の手のひらの中で、自分の手が届くこの範囲を。

語り部シルヴァ

1/17/2025, 10:44:19 AM

『風のいたずら』

外に出ると風が吹き荒れていた。
気温も低く外に出るには少々辛い。
厚手のジャンパーにマフラーを巻いたがそれでも寒い。

必要なものが無くなったから買い物に行こうかと
出たばっかりにこれだ。
寒い。さっさと買い物を済ませよう...

1歩1歩進む足は冷えて今にも凍りそうだ。
下も中に1枚履くべきだったか...

身を縮こませながら歩いていると更に突風が吹く。
しっかりと巻いていたマフラーが吹き飛んでしまった。
マフラーはひとりでにふわふわと
風に乗ってあっという間に姿を消した。

空もマフラーが欲しかったのか...
悲しい気持ちを誤魔化そうと頭を正当化させつつ
買い物リストにマフラーを足した。

語り部シルヴァ

1/16/2025, 10:16:06 AM

『透明な涙』

悔しくて1人河川敷で夕焼けを眺める。
試合に負けた。あと少しで勝てたかもしれないのに
実力不足で負けた。
もっと努力しないと。
でも努力したところでもっと強くなれるのか。

悔しい。悔しい。
歯を食いしばって顔を伏せていると、
後ろから声をかけられた。
「何やってんだ。こんなところで。」
「先生...」

顔を上げて振り返ると顧問の先生に声をかけられた。
知り合いに泣きそうになってるのを見られたのと
よりによって先生だったことがすごく恥ずかしい。
恥ずかしさにすぐ顔を伏せる。

全てを察したのか先生は隣に座って独り言を呟く。
「涙が透明なのは女性は煌めかせるため、
男は泣いているのを知られないためらしいぞ。
先生は泣き虫だからいつ気づかれるか
ドキドキしながら泣いてる。」

下手くそな嘘に顔を伏せながらも思わず笑ってしまう。
安心したせいで涙も出てきた。

鼻をすする音が聞こえたのか先生は
優しく背中を叩いてくれた。

語り部シルヴァ

1/15/2025, 10:27:39 AM

『あなたのもとへ』

部活が終わった瞬間後片付けを済ませる。
運動部のお約束で細かい片付けは基本後輩に頼めるので
今日はお願いすることにした。
明日は手伝うつもり。

道着から制服に着替えて忘れ物がないかチェック。
明日の部活の予定を確認して終わり...
の前に入口で振り返り
「お先に失礼します!お疲れ様でした!」
と一言行って出ていく。

校舎に止めてある自転車に鍵を挿して校門を飛び出す。
日も暮れてきた。急がないと...!
路地裏を滑らかに曲がりギアをトップに。
ずっしりとくるペダルを踏みしめ全速力で漕ぐ。

待ち合わせの公園に着く。
急いで携帯を取り出して『お待たせ。着いたよ』
と呼吸を整えながら入力する。

暗くなってきた空に上がった息が白くなって消えていく。
今日は間に合わなかったか...帰ろうと公園に背を向けた時、
後ろから衝撃が飛んでくる。

「待ってたよ。お疲れ様。」
優しく愛しい声にさっきまでの疲れが吹き飛んだ気がした。
「じゃあ、帰ろ。」
そう言って彼女を家まで送る。

手袋もせずに繋ぐ手は芯から温まる温もりがあった。
片手で自転車を押すのはちょっとしんどいけど、
彼女と手を繋げる幸せに比べたら些細なものだった。

語り部シルヴァ

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