語り部シルヴァ

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1/14/2025, 10:16:21 AM

『そっと』

最近息子がやたらと勉強するようになった。
塾に行く時間が増え、あれだけ勉強よりも
ゲーム一筋だったのにゲームも控えるようになった。

理由はどうであれ勉強するのはいいことだが
急激に変わる息子に正直戸惑いを隠せない。
今日も勉強をすると晩御飯を食べ終わった後すぐに
自分の部屋へと行ってしまった。
来年から受験生。その準備を今からでもしようとするその姿勢
は親としてはしっかりした子に育ってくれて
嬉しいものだった。

今日も日付が変わる直前まで勉強をするんだろう。
少し差し入れをしようかな。
そう思い静かに息子の部屋へ移動する。
ドアに手をかけようとしたとき、息子の笑い声が聞こえる。
普段とは違う大人しめの笑い声。
女の子っぽい名前を呼ぶ息子。
時たま勉強に関連する話題で盛り上がっているようだ。

こんな気持ちは親のお節介かもしれない。
それでも今までの行動の理由が繋がった気がして
ドアから手を離しそっと部屋から離れた。

語り部シルヴァ

1/13/2025, 11:42:18 AM

『まだ見ぬ景色』

「...でな、そこには俺何人分か
わかんないくらいのでかい鳥が〜」
お見舞いに来てくれたおじさんは
両手を大きく広げて楽しそうに話す。

このおじさんは僕が小さい頃から冒険に出ては
土産話を持ってきてくれる。
体が弱い自分にとってはいつも面白い話をしてくれる。
ドキドキハラハラ、それでいてすごくワクワクする。

「いーなー。僕もおじさんみたいに冒険してみたい。」
「はは、お前もいつか行けるさ。
行けるようになったらおじさんが連れてってやる。」
「ほんと?やったー!」

そう言っておじさんと小指を絡ませて約束をする。
早く元気になりたいな...
おじさんと冒険して色んな景色を見て...

おじさんの話をした後も自分の夢見る世界に
ワクワクが止まらなかった。

語り部シルヴァ

1/12/2025, 10:35:48 AM

『あの夢のつづきを』

ガバッと勢いよく起きる。
外はまだ開けることのなさそうな暗い空。
時間を確認する。午前3時。

なんで起きたから数秒考える。
そういえば夢を見た気がする。
高校の誰もいない場所であの人と...
そんな懐かしい夢を見た気がする。

今日も仕事。それなのにさっきまで見ていた夢を
もう一度見れないかと悩んでしまう。
とりあえずトイレを済ませて水を飲んで...

布団を整えてもう一度寝る準備をする。
懐かしい夢をまた見たい。余韻に浸りたい...
迫ってくる眠気に意識を持っていかれながらも
夢を見れるように願った。

語り部シルヴァ

1/11/2025, 10:37:07 AM

『あたたかいね』

バスが来るまでまだ時間がある...
くそ...席に座りたいからって早く来すぎた。
日が昇る中屋根の下は随分と冷える。
寒そうにしていると、同じクラスの友人に声をかけられた。

「お疲れ、随分と寒そうだね。」
「お疲れ。あーバス停の屋根のせいで寒くてね。」
そういうと友人はカバンからココアを取り出して渡してくる。

「ほい、これで少しは紛れそう?」
「え、嬉しいけど貰っていいのか...?」
「まーた買ってくるから大丈夫!
明日購買でなにか奢ってくれたらいいよ!」
「ありがとう。ってそれ購買目的だろ。」
バレた。と笑う友人。

こんなやり取りをしているだけでも温まるのだが...
話すと笑われそうだから言わないでおこう。
じゃーねーと友人は帰っていった。
ココアを開けて1口飲む。...思った以上にぬるいな。

ココアがぬるくても、友人の優しさが暖かいものだったから気にしないことにした。
明日好きなものを奢ろう。

語り部シルヴァ

1/10/2025, 1:02:40 PM

『未来への鍵』

また...またダメだった。
自分の夢を掴むためにアイドルになったのに、
テレビ番組として出演するとどうも上手く話せない。
正直もうダメかもしれない。

ここまで来たけど結局一般人より
少し顔が知れてる程度にしかなれなかった。
私の未来はここで閉じて残りの人生を
のんびり生きた方がいいのかもしれない...

みんなには申し訳ないけど...
そう考えアイドルグループのみんなに話した。
後輩が何か言いたげそうな顔をしているので聞いてみた。
すると後輩は涙を浮かべ

「私がここまでこれたのは皆さんや先輩のおかげです!
今度は私たちが先輩を支える番です!先輩の目指す未来のために私たちが力になります!」

可愛い後輩からの頼もしい言葉に私まで涙が流れる。
この子たちが私の未来への鍵...
この子達のためにも私がしっかりしないと...!
「ごめんなさい...私弱気になってた。私もっと頑張るね!」

私の夢はいつまにか私"たち"の夢へと変わっていた。
そう...みんなで未来を掴むんだ。

語り部シルヴァ

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