語り部シルヴァ

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1/9/2025, 12:54:03 PM

『星のかけら』

満点の星空を見る度に昔を思い出す。
小さい頃の僕は結構な泣き虫だった。
泣いた理由はいっぱいあった。
学校で飼っていた金魚が死んだ、友達と喧嘩した、
テストで納得のいく点が取れなかった。
そんなことがある度1人部屋の隅っこで泣いていた。
親に心配かけないように1人息を殺して...

ある日の夜いつものように
泣いて窓越しに夜空を見ていると、おじいさんが空からやってきた。
「どうしたんだい。
なんだか悲しそうな顔をしているじゃないか。」
物腰柔らかそうに尋ねてくるおじいさんを不審者とは思えず
泣いていたこと、泣いた理由を伝えた。
するとおじいさんは優しく笑いながら
星空を摘むように指を動かす。
そのまま僕の前に持ってくると星空は小さな飴になった。

「ほら、星空からもらった飴だよ。
これで元気を出しなさい。」
言われるがままに飴を口に運ぶ。
甘いけどなんの味かわからない。
それでも今まで食べた飴のどれよりも美味しかった。

「それじゃあね。可愛い泣き虫さん。」
おじいさんはそう言って僕の頭を撫でると
すうっと消えていった。

今思えば夢かもしれない。
それでもあの星空の飴のことは忘れられないし、
今でも寂しい夜に元気をくれる魔法になった。

お礼を言いそびれたからまた会えたらな...
少しセンチメンタルになった心に冷えた風が視界を滲ませる。

「おやおや、泣き虫さん。どうしたんだい?」
聞き覚えのある優しい声が夜空から聞こえた。

語り部シルヴァ

1/8/2025, 11:01:06 AM

『Ring Ring...』

携帯をちらっと見る。
残念ながら携帯は微動だにしない。
いや、今日も来ないのかもしれない。

最近彼女から一向に連絡が来ない。
元々嵐のような人だがその嵐がずっと静まりかえっている。
普段は飽きない日々だなと思う反面、
いざ来ないと寂しく感じる。

おかげで勉強も進まない。
でもこっちから連絡するにせよ話題も無い...

勉強も手付かず、悩んでいるとついに携帯が
バイブレーションで揺れながら携帯が鳴る。
呼出音の一回目が終わる前に出る。

「も、もしもし...?」
携帯から聞こえる声はクスクスと笑いながら...

「やっほー。ずっと待ってたでしょ?」
どうやら彼女は僕のことについてはなんでも
おみとおしのようだ。

語り部シルヴァ

1/7/2025, 10:32:09 AM

『追い風』

汗の匂い、冷たい風。
背景から聞こえる声援。
試合終了まで残りあとわずか、
このままだとこっちが負ける。
空気が完全に押されている。

まずい...

体もそろそろガタが来ている。
それでもまだ持ってくれ...

汗は冷や汗に変わっていく気がした。
もし負けたら...なんて先に1人反省会を開きそうになる。
でもそんなことしている場合じゃない。

すると後ろからキャプテンの声が聞こえる。
「お前らー!まだまだこっからだぞー!」

怒った様子じゃなくとても楽しそうな声。
そうだ。そうじゃないか。まだまだ楽しめるじゃないか。
強ばっていた口元が緩くなって笑顔になった気がする。

こんな状況だからこそ楽しくぶつかり合わないと。
俺と同じ気持ちなのか仲間全員前へと走り出した。

残り2分。追い風に乗る勢いで審判のホイッスルが鳴り、
ボールを託された俺はゴール目掛けて走り出した。

語り部シルヴァ

1/6/2025, 10:35:23 AM

『君と一緒に』

今日も乗り越えた。
片付けも終わり今から帰るところだ。
去年まではゆるい部活だったが、
顧問の先生が変わった途端ガチ勢のようなキツさになった。

部室の掃除、ラケットなどの備品の点検は毎日。
顧問の先生が来るまでに準備運動、ストレッチを終わらせる。
試合に全力で挑む学校は当たり前かもしれない。
それでも今までゆるゆるだった僕らからすれば
地獄の日々へと変貌した。

確かにキツイ、初日の翌日は筋肉痛で大変だったし、
まあまあ仲の良い仲間はあっさりやめてしまった。
僕もやめてしまいたいと何度も思った。

それでも...

「や、お疲れ様。今日も厳しかったねえ」
ヘトヘトな僕の隣に疲れたーと楽しそうな君が来る。
同じクラスで2人で部活に入ろうと決めた時から
仲良くしてくれる君。

最初は僕よりも上手く先生にもよく褒められていた。
そんな姿がかっこよくて魅力的だった。
だから僕も必死に努力して君と並べれる強さになった。
今じゃ部活内では強いタッグと呼ばれるほど。

君となら、どんなに厳しくても一緒に乗り越えられる。
君も同じように思ってくれていると嬉しいな...

雑談混じりでコンビニで買った肉まんを分け合いながら
明日も頑張ろうと意気込んだ。

語り部シルヴァ

1/5/2025, 10:39:36 AM

『冬晴れ』

寒い澄んだ空。
雲ひとつない青空の下は風を浴びるにはまだ早い。
マグカップを持つ手は手のひらは暖かいものの、
手の甲側は冷たい風が刺さる。
あかぎれや指が割れそうだ。後でハンドクリームを塗ろう。

今日みたいな日は外を歩けば風は寒く日差しは暑いだろう...
寒いと外に出たくない出不精の自分には関係ない話だ。
必要な時以外外に出てないから正月と相まって
運動不足がすごいことになっている。

いい加減...動かないとね。
そう思いつつ明日からにしようと頭は既に
引きこもる選択をしていた。

今日は...やることもないからマグカップと一緒に
ベランダで白い息でも吐いて寒さを楽しもう。

語り部シルヴァ

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