『幸せとは』
仕事の休憩中、どデカいため息をついた。
仕事疲れとかそんなのじゃない。もっと...
「どうした?大丈夫か?」
背中から声をかけられ振り向くと上司がいた。
「あ!お疲れ様です!すみません見苦しい所を...」
「気にすんなよ。で、なにかあったのか?」
上司に問われなんでもないというのも
失礼かと思い心情を打ち明けた。
「特にこれ!って訳じゃないんですけど、
帰ってお風呂にご飯食べて寝てまた出勤...
充実はしてるんですけど、もっとこう...
幸せなことないかなって。」
「あー...確かにわかるな...趣味とかないのか?」
「あるにはあるんですけど、
ゲームとかそんなのしかなくて。」
「自分の趣味をそんなの扱いするな。
お前の趣味はお前しか理解できないんだから
もっと趣味を誇らしく持つんだ。」
「じゃあ...家に帰ったらゲーム三昧でも...?」
「自分の趣味に没頭できるってことじゃないか!
素晴らしいことだ!」
そう言いながら軽く背中を叩いてくる上司に
気分が少し晴れる。
「じゃ、私もお昼にしてくる。お互い昼から頑張ろうな。」
そう言って離れる上司に思わず問いかける。
「あの!上司にとって幸せってありますか!」
一瞬足を止めた上司は
「お前みたいに悩んでるやつに笑顔になってもらうことだ」
と言ってこちらを振り向かず歩いていった。
語り部シルヴァ
『日の出』
やけに眩しくて目を覚ます。
部屋は暗いけどカーテンの隙間から
日差しが直接差し込んでいるようだ。
確か友達に誘われて丸1日ゲームしていたはず...
途中でみんなして寝落ちしていたようだ。
マルチプレイができるゲーム機の画面は
どれも真っ暗になっている。
かなりのどんちゃん騒ぎになって我ながら珍しく
はしゃいだ気がする。
みんなの寝顔を見つつ昨晩のことを思い返すと
自然と笑顔になれる。
…と思ったが1人足りない。
キョロキョロと見渡すとトイレから物音がした。
どうやら1番じゃなかったようだ。
「お。起きた起きた。おはよう。」
「あー、おはよう。あけおめだね。」
「うん、ことよろ。」
他を起こさぬように小声で新年の挨拶を済ませて
軽く雑談する。
今年の年末もこんな風に過ごせれたらいいな。
そんな話をしつつ2人でベランダに出て差し込む陽の光が
部屋に入らないようにカーテンをしっかりと閉める。
日の出の光はねぼすけたちにはお預けだ。
語り部シルヴァ
『今年の抱負』
正月にやることをあらかた終わらせいつもの日常が顔を出し始める頃、あることを忘れていた。
今年の抱負だ。
やはり今年の抱負があってこそ一年が計画的になれるものだ。
早速机に向かい紙とペンを出して姿勢を正す。
...数分経っても白紙のままだ。
色々ありすぎて何を書こうか迷ってしまった。
一旦ペンを置いて腕を組む。
思えば去年も似たようなことをした覚えがある。
確か去年はいっぱいあるからその日思ったことをやろうと
計画性が微塵もない抱負だった気がする。
...今年もそれでいいか。
こうやってグダグダな1年が始まる。
よくいえば自分らしいものだ。
語り部シルヴァ
『新年』
寝ぼけ眼で河川敷を登る。
普段起きる時間より数時間も早いとさすがに眠い。
冬の刺さるような寒さよりも今眠気が強い気がする。
今日は仕事も休み。
寝正月でも良かったけどたまにはこういう正月も
いいんじゃないかと張り切って早起きしてみた。
晴れているのに薄暗い空はまだ寝静まっているようで、
起きるのには早すぎたかと思わされる。
スマホで時間を確認する。
間違えてしまったか...?
そう思いながらスマホを確認していると
頭から暖かさを感じる。
急いで顔を上げると、ちょうど太陽が顔を出し始めていた。
いつも見ている太陽が新年一発目だから、日の出だから。
そんな理由で特別感があるのは少々変な気分だ。
けれどそんな気分も眠気も元旦の太陽は覚ましてくれる。
あけましておめでとう。
心の中で念じ太陽に背を向ける。
眠気も取れて寒さを感じるようになってきたから
帰ってココアでも飲もうかな。
語り部シルヴァ
『良いお年を』
テレビの中の渋谷はカウントダウンが始まる。
周辺に何も無い。車の走る音しか聞こえない。
それに比べてテレビの中はずっと賑やか。
会社帰りのサラリーマン、友人で来た女の子たち、
初々しいカップルと街のインタビュワーは心情を聞いている。
僕もカウントダウンを友達と一緒に行ってみたかったものだ。
残念ながらそんなお誘いをできる友人はいない。
来年はそんな友人を作ることを
目標に入れてもいいかもしれない。
コーヒーで温まりつつテレビをぼーっと見ていると
スマホが鳴る。
誰だろうか。誰かに見られている訳でもないのに
平静を装いつつスマホを見る。
...クーポンのお知らせだったのでスマホを
ベッドにポイッと捨てる。
今年も変わらず1人で過ごすことになりそうだ。
「...良いお年を。」
誰かに言う訳でもないのに独り言がポロッと出た。
やはり...来年は隣に言えるような存在が
できることを努力しよう。
語り部シルヴァ