『あなたのもとへ』
部活が終わった瞬間後片付けを済ませる。
運動部のお約束で細かい片付けは基本後輩に頼めるので
今日はお願いすることにした。
明日は手伝うつもり。
道着から制服に着替えて忘れ物がないかチェック。
明日の部活の予定を確認して終わり...
の前に入口で振り返り
「お先に失礼します!お疲れ様でした!」
と一言行って出ていく。
校舎に止めてある自転車に鍵を挿して校門を飛び出す。
日も暮れてきた。急がないと...!
路地裏を滑らかに曲がりギアをトップに。
ずっしりとくるペダルを踏みしめ全速力で漕ぐ。
待ち合わせの公園に着く。
急いで携帯を取り出して『お待たせ。着いたよ』
と呼吸を整えながら入力する。
暗くなってきた空に上がった息が白くなって消えていく。
今日は間に合わなかったか...帰ろうと公園に背を向けた時、
後ろから衝撃が飛んでくる。
「待ってたよ。お疲れ様。」
優しく愛しい声にさっきまでの疲れが吹き飛んだ気がした。
「じゃあ、帰ろ。」
そう言って彼女を家まで送る。
手袋もせずに繋ぐ手は芯から温まる温もりがあった。
片手で自転車を押すのはちょっとしんどいけど、
彼女と手を繋げる幸せに比べたら些細なものだった。
語り部シルヴァ
1/15/2025, 10:27:39 AM