鋭い眼差し
呼吸を乱さず、一点を集中して見る。
やつは俺にまだ気づいていない。
ゆっくりと獲物に近づく。
どんな状況であれ獲物から目を逸らさない。
また四角い光る板に目を奪われてやがる。
あんな眩しいもの何が面白いのか俺にはわからんな...
ついに背中まで来た。
ここで一気に...!!
「ん?どーしたの?遊んで欲しいの?」
にゃーお!!
くそっ...今回もダメだったか...
次こそは...次こそはっ...
獲物からの優しいなでなでに屈服して
そのまま甘えてしまった...
語り部シルヴァ
高く高く
昔から工作が好きだった。
近所のお兄ちゃんが作る作品がかっこよくて
自分もこんなものを作りたい。
そう思った。
びっくり箱やソーラーカーなど親に許される範囲なら
どんどん作っていった。
1番好きだったのはペットボトルを使ったロケットだ。
空気で、ガスで、花火で..色んな方法でペットボトルを飛ばした。
ペットボトルが高く飛べば飛ぶほど
興奮してもっと高く飛ばしたくなる。
もっと、勉強してペットボトルじゃないロケットを
飛ばせれるようになりたい。
もっと高みを目指したい。
あのお兄ちゃんのような人になりたい。
それが僕の夢。
語り部シルヴァ
子供のように
会社の先輩にとてもクールな人がいる。
自分のだけでなく、周りの人の仕事までも
そつなくこなしてしまう。
上下どちらからも尊敬されていているキャリアウーマンだ。
俺が入社してから今までずっと助けられてて、
まだまだ先輩にはお世話になりそうだ。
そんな先輩にある日話しかけられた。
「ここの遊園地って興味あるかな?」
そう言ってスマホの画面を見せてきた。
映っていたのは有名な遊園地のホームページで、
なんでも先輩の友人にチケットを貰ったが誰
と行けばいいかわからず俺を誘ってくれたようだ。
「行ってみたいなーとは思っていたんですけど、
俺で...いや僕でいいんですか?」
「私の可愛い後輩だからね。嫌だったら別の人を誘うけど...」
「全然!ぜひ同行させてください!」
そんなやり取りをして次の休日...
予定より早く集合場所に着いてしまってドキドキしている。
先輩にも遊園地に行きたいなんて趣味があったんだ...
そんな普段の先輩とのギャップを感じていると、
遠くから先輩の声がした。
「ごめんごめん。お待たせ!」
初めて見る先輩の私服姿にドキッとさせられる。
「じゃあ行こっか!」
俺の手をグイグイ引っ張って行く先輩。
普段と違いすぎて混乱しそうな程だ...
そこから先輩とは色んなアトラクションを楽しんだ。
コーヒーカップ、ジェットコースター、観覧車...
どのアトラクションもはしゃぐ先輩は
まるで俺よりも年下のようだった。
結局夜のパレードまで先輩と遊園地を楽しんだ。
パレードを見てる時に先輩が恥ずかしそうに
「沢山はしゃいじゃった。他のみんなには内緒にしてね。」
と言うもんだから余計に意識してしまった。
女性のギャップの強さと、信頼する人との遊園地は
とても楽しいことを先輩に教えてもらった。
まさか、休日でも先輩から教えて貰うなんて
思ってもなかった。
語り部シルヴァ
放課後
放課後のチャイムが鳴り、僕らは校門をあとにする。
並んで少し歩くと、視界がより明るくなった。
空を見上げると曇り空だった空の隙間に陽の光が差し込む。
ところどころで陽の光が差し込むその景色は
とても神秘的だった。
陽の光は金色で、それを曇り空が遮っているけど
雲の端は抑えきれないくらいに光ってる。
僕らはそんな空に見とれて、
さっきまで話してた内容もとんじゃうくらいだった。
会話も飛び、進む足が止まった。
僕らは何かに取り憑かれたのだろうか。
相手も何も言わない。静かに輝かしい雲を見ている。
沈黙が続くけど気まずさは無い。
しばらく僕らは空を見ていた。
曇が輝きを失うまで...
語り部シルヴァ
カーテン
頬杖をつきながら見上げる空は去年とさほど変わらない。
秋になってさらに澄んだ空と風で流されて早く横切る雲。
その視界の隅にふわっと優しく揺れるカーテン。
1番前の列の席で落ち込んでいたが
この景色が見れるとなると嬉しいものだ。
立ち上がってカーテンに近寄る。
ザラザラとして太陽の匂いがする。
いつも気にならないけど、無いと寂しい気もする。
カーテンを持ってクルクルと回る。
カーテンに包まれた景色は白くて太陽がぼやけて光る。
このまま眠くなってしまいそう...
みんなこれをしたくなる気持ちがわかる。
...誰かに見られると恥ずかしくなるからすぐやめた。
外は少し暗くなり始めていた。
すぐ夜になってしまう...荷物をまとめて帰ることにした。
それじゃあまた明日。
教室のドアがガラガラと鈍い音をして動いた。
語り部シルヴァ