語り部シルヴァ

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10/13/2024, 11:11:38 AM

子供のように


会社の先輩にとてもクールな人がいる。
自分のだけでなく、周りの人の仕事までも
そつなくこなしてしまう。
上下どちらからも尊敬されていているキャリアウーマンだ。

俺が入社してから今までずっと助けられてて、
まだまだ先輩にはお世話になりそうだ。
そんな先輩にある日話しかけられた。
「ここの遊園地って興味あるかな?」
そう言ってスマホの画面を見せてきた。
映っていたのは有名な遊園地のホームページで、
なんでも先輩の友人にチケットを貰ったが誰
と行けばいいかわからず俺を誘ってくれたようだ。

「行ってみたいなーとは思っていたんですけど、
俺で...いや僕でいいんですか?」

「私の可愛い後輩だからね。嫌だったら別の人を誘うけど...」

「全然!ぜひ同行させてください!」

そんなやり取りをして次の休日...
予定より早く集合場所に着いてしまってドキドキしている。
先輩にも遊園地に行きたいなんて趣味があったんだ...
そんな普段の先輩とのギャップを感じていると、
遠くから先輩の声がした。

「ごめんごめん。お待たせ!」
初めて見る先輩の私服姿にドキッとさせられる。

「じゃあ行こっか!」
俺の手をグイグイ引っ張って行く先輩。
普段と違いすぎて混乱しそうな程だ...

そこから先輩とは色んなアトラクションを楽しんだ。
コーヒーカップ、ジェットコースター、観覧車...
どのアトラクションもはしゃぐ先輩は
まるで俺よりも年下のようだった。

結局夜のパレードまで先輩と遊園地を楽しんだ。
パレードを見てる時に先輩が恥ずかしそうに
「沢山はしゃいじゃった。他のみんなには内緒にしてね。」
と言うもんだから余計に意識してしまった。

女性のギャップの強さと、信頼する人との遊園地は
とても楽しいことを先輩に教えてもらった。
まさか、休日でも先輩から教えて貰うなんて
思ってもなかった。

語り部シルヴァ

10/12/2024, 2:10:37 PM

放課後

放課後のチャイムが鳴り、僕らは校門をあとにする。
並んで少し歩くと、視界がより明るくなった。

空を見上げると曇り空だった空の隙間に陽の光が差し込む。
ところどころで陽の光が差し込むその景色は
とても神秘的だった。
陽の光は金色で、それを曇り空が遮っているけど
雲の端は抑えきれないくらいに光ってる。

僕らはそんな空に見とれて、
さっきまで話してた内容もとんじゃうくらいだった。
会話も飛び、進む足が止まった。
僕らは何かに取り憑かれたのだろうか。

相手も何も言わない。静かに輝かしい雲を見ている。
沈黙が続くけど気まずさは無い。
しばらく僕らは空を見ていた。

曇が輝きを失うまで...

語り部シルヴァ

10/11/2024, 11:55:06 AM

カーテン

頬杖をつきながら見上げる空は去年とさほど変わらない。
秋になってさらに澄んだ空と風で流されて早く横切る雲。
その視界の隅にふわっと優しく揺れるカーテン。

1番前の列の席で落ち込んでいたが
この景色が見れるとなると嬉しいものだ。

立ち上がってカーテンに近寄る。
ザラザラとして太陽の匂いがする。
いつも気にならないけど、無いと寂しい気もする。

カーテンを持ってクルクルと回る。
カーテンに包まれた景色は白くて太陽がぼやけて光る。
このまま眠くなってしまいそう...
みんなこれをしたくなる気持ちがわかる。

...誰かに見られると恥ずかしくなるからすぐやめた。
外は少し暗くなり始めていた。
すぐ夜になってしまう...荷物をまとめて帰ることにした。

それじゃあまた明日。
教室のドアがガラガラと鈍い音をして動いた。

語り部シルヴァ

10/10/2024, 10:53:01 AM

涙の理由

「でさ〜...あの先生がね〜...」
「あ、そうそう、あそこのカフェが〜...」
静かな夕暮れ、誰も来る気配のない校舎裏で
1人の喋り声だけが聞こえる。
...隣の友人はいつもそうだ。

私が落ち込んでいるといつも私がいる場所を見つけては
隣に勝手に座って勝手に喋り出す。
今日あったこと、思い出したこと、私の事。
なんでも目を合わせず空を見ながら話す。

最近は頻度が増えた...というか毎日隣に座っては喋る。
よく話題が尽きないなと思う反面、
他にすることが無いのかと心配してしまうほどだ。

最初こそは嬉しかったけど、
今じゃずっと喋りかけてくれて申し訳なさが強い。
私だってお話したいけど、
私からは話すことも無いしどうせ届かない。

...悔しいなあ。
涙を堪えるため下を向くと友人は独り言のように話した。

「ねえ。気づいてないと思うけど、
私はずっと君のこと見えてるよ。
みんなは君がもう死んで居なくなったって
聞いた時だけざわついてた。
でももうみんな話さなくなった。寂しいじゃんそんなの。
だから私だけでも君の存在を否定しないよ。」

君の声から温もりが伝わってくる気がして、目が暑くなる。
私のことなど気にせず友人は続ける。

「だからさ、どうして泣いてるか教えてよ。」

今まで抑えていた気持ちが溢れ、
小学生のように声をあげて泣きじゃくる。
友人はただ1人、私を肯定してくれていたんだ。

語り部シルヴァ

10/9/2024, 10:49:32 AM

ココロオドル

外が真っ暗な中、僕らのいる場所は
舞台裏なのに目を瞑りたくなるほど眩しい。
ステージは初めてで、
舞台裏からは僕らの名前を叫ぶ声が聞こえる。

ほんの趣味でアップロードした楽曲が世界でどハマりした。
それも一発屋で終わることなく人気は続いた。
そこから有名な事務所からスカウトされ、
なんとライブのお誘いまで頂いた。

僕らはただ自分の趣味を出しただけなのに、
今はその趣味に沢山の人が便乗してくれている。
こんなに集まってくれる人の期待を無下にしてはいけない。

僕らの登場するタイミングの数分前...
舞台裏でよくある裏で掛け声をするやつを
して眩しいスポットライトの下へと走る。

「みんなー!!今日は楽しもうね!」

最初からテンションが上がる曲を歌い始める。
この場のみんなの心はひとつになり、踊り始める。
さ。宴は今始まったばかりだ。

語り部シルヴァ

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