涙の理由
「でさ〜...あの先生がね〜...」
「あ、そうそう、あそこのカフェが〜...」
静かな夕暮れ、誰も来る気配のない校舎裏で
1人の喋り声だけが聞こえる。
...隣の友人はいつもそうだ。
私が落ち込んでいるといつも私がいる場所を見つけては
隣に勝手に座って勝手に喋り出す。
今日あったこと、思い出したこと、私の事。
なんでも目を合わせず空を見ながら話す。
最近は頻度が増えた...というか毎日隣に座っては喋る。
よく話題が尽きないなと思う反面、
他にすることが無いのかと心配してしまうほどだ。
最初こそは嬉しかったけど、
今じゃずっと喋りかけてくれて申し訳なさが強い。
私だってお話したいけど、
私からは話すことも無いしどうせ届かない。
...悔しいなあ。
涙を堪えるため下を向くと友人は独り言のように話した。
「ねえ。気づいてないと思うけど、
私はずっと君のこと見えてるよ。
みんなは君がもう死んで居なくなったって
聞いた時だけざわついてた。
でももうみんな話さなくなった。寂しいじゃんそんなの。
だから私だけでも君の存在を否定しないよ。」
君の声から温もりが伝わってくる気がして、目が暑くなる。
私のことなど気にせず友人は続ける。
「だからさ、どうして泣いてるか教えてよ。」
今まで抑えていた気持ちが溢れ、
小学生のように声をあげて泣きじゃくる。
友人はただ1人、私を肯定してくれていたんだ。
語り部シルヴァ
10/10/2024, 10:53:01 AM