〝もし…、未来が見えるのなら〟
私は愛する誰かの行く末を見届けることが
出来ているでしょうか。
誰かを憎んだりしていませんか?
あの日のことを思い出して、また泣き出して
いませんか?
あなたは、いつも言っていましたね。
〝大丈夫〟って。
その言葉は未来の私も言い続けているのかしら。
過去でなく未来。未来を見ることは少し戸惑ってしまうかもしれません。
見てしまえば、今を変えようと全力を尽くして、そのまま燃え尽きて消えてしまったのでしょうね。
あなたは、今を生きていて欲しいです。
あなたなりの未来のあり方を信じて、未来のあなたへ託して欲しいです。
もし、未来を見ることが出来たなら…
友人たちの変わりない日常を穏やかに過ごせている未来が見たいですね。
大切な人たちの平穏が続きますように…。
無色の世界
ーコツ…コツ……。
たどり着いたのは、大きな鳥籠だった。
「ねぇ…、起きて。」
誰かが私に話しかけているようだ。
うっすらと目を開けると、そこには心配そうに覗いている翡翠色と陽炎の瞳があった。
「あっ、起きた。よかった…、このまま起きてくれないのかと思ったよ。」
しだいに鮮明になってくる。
ひっそりとした暗闇に、ちりばめられた星空。
黒髪で、先度見た瞳をした少年がいた。
「…?あなたは…誰?」
彼は寂しそうな顔をしている。
「…そっか、また君は覚えていないのか…。」
「…?」
不思議そうに見つめると、彼はふふっと微笑んだ。
「まぁ、これは一旦置いとこう。また、思い出してくれるまで待つから。」
「…そう。分かった。」
「よし、じゃあそろそろ行こう?」
彼は手を差し出す。
「どこに行くの…?」
彼の手を取りながら尋ねる。
「あそこだよー!」
彼が指さしたのは、暗い星空。その奥にある強く輝く星。
「あれは…。」
「君が進むべき場所とも言えるかもね。」
彼は悲しそうな顔をしていた。
彼と共に歩み始める。
〝あら、あの子じゃない。〟
〝ホントだ。また来たのね…。〟
〝勘弁して欲しいわよ。ここはあの子にはふさわしくないわ。〟
〝〝ほんとそうよね〜。〟〟
進む度に様々な声が聞こえる。
「君はあんな奴らのことなんて気にしなくていいよ。君は、素敵な人なんだから。」
彼は、怒っている。私のために。
(なぜ?)
スタスタと歩みを進める。
ー暗闇を通り抜け、真っ白な雲が漂う空間にたどり着いた。
「さぁ、あと少しだよ。」
彼は、スタスタと歩みを早めていく。
彼の手を掴んだまま、引っ張る。
「まって…。私は、これ以上進めない。足が動かないよ…。」
足元が沈んでいく。足は鉛のようになったのか、
1歩も動くことが出来ない。
「…、またか…。」
(また…?)
「ううん、なんでもないよ。じゃあ、僕が連れてくよ。」
彼は、私を抱える。
「…、ごめんね?ありがとう。」
彼の手に少し力がこもる。
「君だから、いいんだよ。」
悲しそうに微笑んでいる。
先程とは異なり、少し遅く歩き始める。
「さぁ、着いた。ここが君の記憶が眠っている場所。」
たどり着いた先には、少しモヤがかかっている。
大きな建物のような部分が、ところどころ見え隠れしている。
「よし、進むよ…。」
「…うん。」
建物らしきものに近づくほど、モヤが消えていく。
上を見上げると、それは籠のようなものに形を変えていく。
それは、鎖が溶けかけ、黒く塗りつぶされたインクのような液体が垂れている。
「鳥…、籠……?」
目の前に、大きな時籠がずっしりと構えている。
「これは、君が記憶の残骸を閉じ込めるために作ったんだ。」
「そうなんだ…。」
「さすがにこれだけじゃ、思い出すことは出来ないよね…。」
彼はカバンから、鍵を取り出す。
澄んだ透明のガラスに、青い宝石が散りばめられた鍵。
鍵をさすと、瞬く間に鍵は黒く淀んだ色に染まる。
重い扉がゆっくりと開く。
「行こう…。」
彼はぎゅっと抱きしめ、扉の中へと進んでいく。
「これで、君の記憶が全て…戻るといいな…。」
彼らが進んだあと、扉はゆっくりと閉まり、
〝ガチャン〟と大きな音を立て鍵がかかる。
モヤが広がり、スウッ…っとその場所から鳥籠は
消え無くなった。
〝あーあ…。いなくなってしまったわ〟
〝大事にしていたのにね〟
〝彼らはどこから間違っていたのかしらね…〟
〝まぁ、救いは訪れないわよね。あの子には…〟
〝〝無色がお似合いよね〟〟
クスクス……
クスクス…
クスクス
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こちらは、個人で書いている小説のほんの一部分。そして、少し内容を変えたものです。
届かぬ想い
ーどうか、どうか叶えてください…神様。
どうか…、あの子を…
「なぁ!兄貴ー!ほんとにこっちなのか〜?
道間違えてないよなー!」
草木をかき分け進んでいく兄を追いかける。
「…あぁ、こっちであってる!」
日が暮れ始めている。
あちこちで草木が風に揺られる音や、ガサガサと何かがいるのではないかと思われるような人為的な音もしている。
「なぁ!もう日が暮れちゃうよ!
まだつかないのかー!」
真っ直ぐに歩き続ける。
「あぁ、あってるさ…。」
兄は、ピタッと動きが止まり振り返った。
「さぁ、ギギァギィー…、おィデ、ギゥギィギィー…、オいデ……。」
兄だった者は、聞きなれない重低音と嫌な音を
発し、得体の知れない顔をした化け物に変貌した。
「……ダ……ナ!」
その声を聞いた瞬間、目の前は暗くなり身体は重力を失った。
「ゥワァァァァ!!!!」
叫び声とともに目が覚めた。部屋の中はまだ暗いままだ。しかし、窓の外は夜明けをむかえはじめ
ている。
窓を開けると、夜明けの太陽が部屋を照らす。
その光は、机の上に置いてあった亡き兄のお守り。
そのお守りを手に取る。
「そうか…、そうだったのか…。」
泣きながら胸元にお守りを握りしめた。
あの時の言葉を思い出した。
「お前の分は俺が貰っていくから、俺の分も生きるんだぞ!俺との約束だからな!」
快晴
ギラギラと太陽の日差しが眩しい。街ゆく人々は、既に衣替えをした人も多いように思える。
「おはようー!」
走りながらこっちに向かってきている少女。
私の幼なじみであり、親友の日巳である。
「おはよう日巳、転ぶからゆっくり来なよ。」
満面の笑みを浮かべている。
「はーい! …って、やばっ!!」
つまづいて今にも転びそうだ。
「日巳!」
乗ってきた自転車を捨て、すぐさま駆け寄り支えようと手をさし伸ばす。
「ふぅ、危なかった…。ありがとう、夕雨。」
「どういたしまして〜。」
手を離し、自転車を持ちに行く。
「今日も暑いね〜、これから夏になるのに。」
パタパタと手で仰いでいる。
「そうだね。もう半袖でもいいくらいだよ。」
一昨日から、夏のように暑い日が続いている。
(そのうち、外にも出れないくらいになるとか有り得るのかな…?)
「やっば!早く行かないと、このままだと遅刻する!」
「うそ、まじか!早く行こっ!」
この暑い中、猛ダッシュで学校まで走るのだった。
ハッピーエンド(?)
「あ!あった!
おーい!見つけたよー!」
手にした果実を手にし、大きく手を振る。
ぞろぞろと仲間が次第に集まってくる。
「おぉ!お前が選ばれるとはなー!良かったじゃないか!」
「良かったわねぇ〜。ついにあなたも夢が叶えられるのよ!」
そう、この果実は、選ばれた者が願い1つ叶えられる権利を与えられると言われる〝神秘〟の果実。
何百年に1度現れる不思議な果実。
「これがあれば……」
少年はみんなに別れを告げ、足早に家に帰った。
「姉様!見てください!これっ!」
窓際のテーブルで、紅茶を嗜みながら本を読んでいる人の姿。鮮やかな霞色に、透き通った空色のドレスの女性。彼女が少年の姉である。
「あら…、今回は貴方が見つけたのね。すごいわ。」
本を置き、少年に駆け寄る。
「姉様!これがあれば、あの城に行けますよ!」
ぴくっと姉の表情が固まる。
「……、あの城のことはもういいのよ。これはあなたの願い。あなたの叶えたいものを叶えるためのものよ?」
姉と一緒にテーブルへと向かう。
「でっ、でも!」
「でもじゃないわ。これはとうの昔に私が願ったこと。それは、あなたには重すぎるほどの願いよ……。」
椅子に座ると、窓の遠くを眺めながら呟いた。
「それに……、これは私が叶えなければならないものなの。」
「だから、あなたの願いを叶えなさい。」
ニコッと微笑む。
「……。姉様がそういうのであれば、分かりました。」
姉が入れてくれたハーブティーを飲み、今日あったことを話し始めた。
ーー「あら?もうこんな時間なのね。そろそろ夕食の支度をしないと。」
日が徐々に暮れ始めている。
「あっ!そうだ!姉様、僕の叶えたいことが決待ったかもしれないです。」
「あらっ、もう少し時間をかけてもいいのよ……って、あの子どこに行ったのかしら?」
キッチンから出てくると、既に弟の姿はない。
玄関の扉が空いたままになっていた。
「もう……、あの子ったら。もうこんな時間なのにどこに行ったのかしら…。」
姉は弟を探しに、家を出る。
「あ!ガーディさん、すみません。弟を見ませんでしたか?」
広場にたどり着き、知り合いのガーディさんに尋ねた。
「えっ?あの子なら、さっき村長のとこに行くっていってたような…。それがダメなら、瑠海の森に行くって言ってたよ。」
「なんですって!?あそこは立ち入ってば行けない場所ではありませんか!」
焦りが募り、憤りをぶつけてしまう。
「少し、落ち着いて。私も、あそこは入ってはダメだと言っておいたさ。でも万が一何かあったら行けないから、警備の人に伝えておいたよ。」
「そ、そうですか……。」
少し安心し、落ち着いてくる。
「貴方たちに何かあったら行けないし、私も一緒に行こうか?」
「ありがたいですお言葉ですけれど、大丈夫です。もう少し、私の方で探してみます。」
「そ、そうかい…。」
ガーディさんにお礼をして、瑠海の森へと向かう。
「あの子、やっぱりお城のことを気にして……?」
不安が募りながら走る。
「どこにいるの!ねぇ、いたら返事をして!」
森の中は既に日が落ち始め、薄暗くなり奇妙な雰囲気が漂っている。
「どこ……、どこにいるの?」
ランタンの明かりを頼りに歩みを進める。だが、一向に人一人にも会わないのだ。
「あのお城に行ったとは思えないけれど……、一応確認をしに行かないと。」
記憶を頼りに、お城がある場所へと走り続ける。
次第に道が開け、薄暗い空に雨足も強くなり始める。
「っ……、っは、あった…。」
ようやくたどり着いたお城は、既にコケやツタでおおわれていていかにも趣がある城だ。
「っ、はやくっ…行かないと。」
残りわずかの体力だが、走る足を止めることは無かった。
階段を何段も上がり、一部屋一部屋くまなく探す。
「どこ?どこにいるの、いるなら答えて!お願いよ!」
ランタンのあかりもあとわずか、残された力を振り絞り、階段をさらに登っていく。
屋上へと、続く階段を上り見えたのは……
「これは…、何?」
その場所は、お城とは言い難いものが沢山転がっている。
ただれた皮膚の間に骨が見えるほど腐りかけている獣の胴体や、人と思われる頭蓋骨に飛び出た目玉。
床には何やら道具で掘られた魔法陣と思われるものが描かれている。
「うっ…、何よ……これ。」
酷い匂いと、血の跡に今にも気を失いそうなほど調子が悪くなり始める。
ランタンで周りを照らしながら、足元も気をつけながら進む。
雨足は酷くなり、荒れ始める。次第に風も強く吹き始める。
そして……、
「……、そ、そんな。」
持っていタラントンを落とし、その場に崩れ落ちる。
そう、魔法陣の中央には弟の亡骸があったのだ。
「……………。」
言葉が出ないほどの、悲しさやむなしさ、恨みや憤りを感じる。
涙がおち、雨につたわり流れていく。
「……ナゼ……。」
次第に風が止み、雨が降り続ける。
魔法陣は、動き出す。周りにはケタケタと笑い声が聞こえる。この世のものとは思えない声らしきものまで聞こえてくる。
「あぁ、そっか……。」
立ち上がり空を見上げる。曇り空の中、雨は止まない。
「私が悪かったのね……。」
昔の記憶が蘇ってくる。
雨の音だけが響く。
「私は……、ようやく帰れるのね。」
光が彼女を囲んで、灯される。
「長かった……。100年以上もの年月が過ぎた。
やっと、やっとだ。」
天に手を伸ばし微笑む。
眩い光が辺り一面に広がり、その城は姿を消した。
「いたぞ!おーい!こっちだ!」
警備員は、森で少年を見つけた。
「おい、おい!聞こえるか!」
少年は少し目を開けて微笑み、気を失った。
……………………………………………………………
ハッピーエンドorバットエンドどっちにも捉えられたらいいなと思うお話でした。