バカみたい
「あの、あのね…。話を聞いて欲しいんだけどいいかな?」
恐る恐る口にする少女。
「? いいけど…、どうしたの?」
心配そうに見つめる少年。
「ただ何も言わず聞いていてくれる…?」
落ち着かない様子の少女。
「うん。いいよ、わかった。ここで聞いてるよ。」
柔らかく微笑む少年。
「もしもね、私に羽が生えてたらどんな羽かなって考えたの。
天使みたいな真っ白な羽、悪魔みたいな深い黒色の羽、妖精みたいなキラキラ輝く羽…、たくさんの羽があるけれど、どれも違うような気がするの…。」
空を眺め手を伸ばす少女。
「なんとなくだけど、もっとドロドロして形がとどまらないような羽だと思う…、なんて言ったらいいんだろ。うーん…。」
遠くを眺め、寂しそうな表情をする。
「ま、いっか!
一旦これは置いといて…。
もし、この世界がなくなったら私は生きていると思う?」
真っ直ぐ見つめて、話す少女。
「……。」
口を閉ざし、静かに聞いている少年。
「……、聞いててって言ったのに答えさせようとするなんておかしかったね。ごめんね。」
「じゃあ、最後にひとつ答えて欲しいの…。」
スっと目を閉じ深呼吸をする少女。
「もし、あなたに話をしなければ、私は今も生きていたかな?」
今にも泣き出しそうに話す少女。
「…。そう、そうかもね…。」
少女から目を離し、そっと答える少年。
「そう、そっか! ありがとう答えてくれて。」
雨の音が響く。
「じゃあ、そろそろ帰るから。」
すぐさま部屋を出ていく少年。
「うん。バイバイ!」
少年を見送る少女。
「ふぅ。」
窓を眺めつぶやく。
「あの時、あんなこと言わなきゃ良かったなぁ…。」
ー同時刻。
「あの時、止めていれば……こんなことには……。」
「「本当に、バカみたいだなぁ……。」」
細かい背景(内容)
少女と少年は、海へと向かっていたが、途中ではぐれてしまった。
・少年は何度も名前を呼んで探したが、少女は見つからなかった。
・目的地だった海に着くと、急に雨が降りはじめ、次第に雨は強く降り始めた。
少年はあきらめ、家に帰ることにした。
次の日、少女は行方不明になっていた。
少女は、少年とはぐれてしまった。何度も名前を呼んだが見つからなかった。
目的地の海へと走る。しかし、雪が降り積もり泣く泣く諦めた。
次の日、少年は行方不明になっていた。
数年後、彼らは出会う。それも、最悪な形で。
・安らかな、瞳(眠り?)・
ーコンコン
「入ってもいい?」
(いいよー!)
ガラッ…。
「今日もお見舞いに来たよ。」
(いつもありがとう!)
「はい、これ、桜のブローチ。
さっき瑠海さんに会って、〝渡してくれ〟って貰ったんだ。」
淡い桃色の花びらに、煌びやかな黄金色の装飾がキラキラと光を反射している。
(わー!!綺麗!瑠海さんにお礼しないと!)
「君がお礼言わないととか言うと思ってたから、この前行った岡山のお土産をおすそ分けしてきたよ。」
(さすが私の幼なじみ!私のことよくわかってるね!ありがとう!)
「あぁ、そうだ。今日は、これを渡しに来たんだ。」
何通かの手紙。花草の装飾がされたものやシンプルなもの、花柄の手紙や、プレゼントのような手紙があった。
(沢山あるね〜!こんなに沢山…。全部読み終えられるかな?)
「君が〝全部読むのは難しい〟って言うと思ったから何回か断ったんだけど、それでも渡して欲しいと頼まれたんだ。」
(ふふっ、あなたの困り顔が浮かぶね〜。)
「だから、僕が読むよ。だから聴いてくれる?」
(もちろん!聞いてるよ!)
「じゃあ…
…あなたの幼なじみ君だけど、彼なりに頑張ってるとこもあるんだから認めてあげなよ!!
それから、言い忘れてたのだけど…。
ありがとう。私にとって、あなたは唯一の親友だからね!これからもずっとだよ!
親友の磨希より。」
「これで全部かな。」
読み終える頃には既に日は落ちかけていた。
(……。みんな、ほんとにいい人だよね。)
「この手紙の量こそ、本当に愛されてるっていう証拠だよなぁ〜。」
(ほんとにね〜。あなたからの手紙はないのね。
まぁ、直接会いに来てるから必要ないか!)
「……。僕もひとつ言いたいことがあったけど、手紙にはしなかったんだ。直接伝えたかったって言う思いもあったし、言葉にした方がいいと思ったからね。」
窓を開けると日が暮れ始め、夕日が部屋の中を照らしている。
(……。)
「ねぇ。この5年間、僕がどんな思いをしてたと思う?」
冷たい空気が頬を撫でる。
「君が事故にあってから、目が覚めないまま5年がたったんだよ。」
彼女の顔に手をあてる。
「……。今日来たのは、先生に、君がもう目覚めないと伝えられたから最後の挨拶をしに来たんだ。」
彼女の顔にポタッ、ポタッと雫が落ちる。
「…好きだったんだ。ずっと…。君と出会ってから、楽しいことばかりで。もっと一緒にいたいって思えた。」
ふわりと風が吹く。
「もっと君と話がしたかった!もっと…、もっと…。」
涙がとまらず、ポタポタと落ちる。前が見えなくなるほどに、涙が溢れた。
「ありがとう。僕と出会ってくれて。本当にありがとう。大好きだった。大好き…。ありがとう…。」
ふわりと彼の周りを光が包む。
(___君。)
「!?」
前を見ると、彼女がたっていた。
(色んなことで困らせちゃったのに、こんなにも愛してくれてたなんて。嬉しい。ありがとう。)
微笑む彼女も、ポロポロと涙を流していた。
(私も、もっと君と一緒にいたかったし、もっと色んなとこに行ってみたかったよ。)
「ッ……。」
(ありがとう……。最後まで一緒にいてくれて。ほんとにありがとう。私も大好きだったよ!ありがと。
っ…、ごめんね……。さよなら___君。)
いつの間にか寝ていたのか、目が覚めた頃には日が沈んでいた。冷たい空気が部屋を通る。
「僕の方こそありがとう……。」
ーさよなら。
月夜
ーぱちぱちと焚き火の音が響く。
「なぁ、お前さん。ここいらで噂になっている言い伝えを知っているか?」
「噂?またくだらないどうでもいい話なんだろう?」
商人の話は聞くまでもなく噂話ばかり。だが、それがまた信憑性がある話ばかりで納得いかないものだ。
「いやいやそれがまた最近聞いた話なんだが、みんな揃って〝祟りじゃ〟としか言わんのだ。
「ふーん…。で、その祟りの原因が言い伝えから来ていると言いたいのか?」
「あぁ!お前さんはよくわかる人だな!
証拠はいくらでも出てくる訳じゃないが、どうも話が現実的すぎてな…。」
「そうか…、それは私も気になるな…。ぜひ聞かせて貰えないだろうか?」
「あぁ!是非聴いてくれ。あれは……」
昔この村で、大きな厄災があったそうだ。それはそれは大きな被害が出たそうな。
村の村長は、原因を探ろうと被害のあった場所へ行き調査をした。しかし数日後、村長は行方が分からなくなってしまった。そして、次々と捜査に出ていたものは皆突然いなくなってしまったのだった。
ある日の夜、一人の老婆が空を眺めながら呟いた。
「神の祟りじゃ…、月神様の…祟りじゃ。わしらが、怒りに触れてしまったのじゃ…。」
老婆が天に祈り始め、それに続いて村の者達は天に祈りを捧げた。
何数日過ぎただろうか、厄災は日に日に村を飲み込んでいく。
すると一人の少年が言う。
「…生贄。そうだ、神に生贄を捧げれば祈りは届くかもしれない…。」
「生贄…、そうだ! そうすれば村は救われる。」
そう、その言葉は不安を抱えて神にすがる思いで日々を過ごしていた者にとって〝救済〟として伝わっていったのだった。
「あの娘は気に入られているだろうし、あの娘がいいだろう。それに、あの娘はこの村に要らない者だ。」
村のものは皆賛同し、村の離れに住む〝紅羽〟という少女を生贄として神に捧げることにした。
ー後に知ることになるが、少女は代々神の住む社を守り続けた神使の末裔であった。ー
翌日、村のものは月神様が祀られているとされる山奥へと向かった。
社が佇む翠泉の池に少女は、生贄として捧げられた。
「あぁ、月神様!どうか!どうかお救い下さい!」
次々に村の民は祈った。
その後、村のもの達は去っていった。
そして祈りは届かず、厄災はたちまち勢いを増したそうな…。
「…って言う話なんだが…。っておい!ちゃんと聴いてくれよ!」
「あ、あぁ。すまない。少し気になったことがあったから…、気を取られてしまっていたんだ。」
「…?何にだ…?」
「いや、気にする事はないさ。ただ思い出したことがあっただけさ。」
「はぁ…、まぁいいけどよぉ…。一応お前さんの心配はしてるんだからなー?」
「ははっ!あんたはいい人だな!」
次第に日が登り始めて、辺りは夜明けを迎える。
「あ、そうだ。なぁ商人さん。ここから進む道には気をつけていきなよ?」
「ん?この先に気をつけるような危ない道はないさ!心配不要だ。
あんたこそ、そっちの道は険しいから気を付けた方がいいぞ?
めったに登る人なんさ一人もおらんからなぁ!」
がっはっは!と、豪快な笑い声が響く。
「あぁ、気をつけるさ。じゃあ、私はそろそろ行くよ。」
手を振り、互いに歩み始めた。
少し進んだところで振り向き、満面の笑みを浮かべ呟いた。
「あんたが進む道は、直にあんたが話していた場所とそっくりになるだろうな。」
それはそれは…、怖いほどの怒りの籠った笑みを浮かべて。
続く
月夜
私はよく月や星を眺めるのが好きで、家のベランダや庭でよく見てます。綺麗ですよね〜。
でも、首が痛くなりがちなので、最近は部屋の電気を消して、窓越しに空を眺めるようにしてます。
優しい月の光と神々しい星々の光、なんとも言えない美しさ。それを絵にして完成されるのには多くの時間をかけないとですね。
水面に反射する月も綺麗ですね。
×月□○日
今日は、唯一の友人である、陽世君とドライブをしながら目的地の海へと向かった。
「なぁ、そういやなんでいきなり海なんて行きたいだなんて思ったんだ?」
「え…?」
「いつも、どこかに行きたいなんて行ったことなかっただろ?
珍しいなって思ったんだ。」
車内で流れる涼し気な音楽とは裏腹に、私の心は荒れている。
「ちょっと、気になって…かな。」
「ふ〜ん…。まぁ、理由なんてなんでもいいけど一応心配してんだからな?」
(これは、説教タイムに入りそうだなぁ…。)
そんな私のことを知らずに、車は目的地へと走っていく。
…続く。
今日のお題について
⬇
絆…。絆ってどんなものなんでしょう。あまり考えたことがありませんね…
あの時のずっと信頼していた友達にあっけなく裏切られたことで、酷く傷ついた感情から読み取れるでしょうか…?
(ただ、私が臆病なだけかもしれませんね。)
絆って、パッと言われるとなんだろうと考えてしまいます。
それほど強い絆を感じたことがないから私は知らないのかもしれませんね…、それとも、見ないふりをしていただけかもしれませんね。