涙雨

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月夜

ーぱちぱちと焚き火の音が響く。
「なぁ、お前さん。ここいらで噂になっている言い伝えを知っているか?」
「噂?またくだらないどうでもいい話なんだろう?」
商人の話は聞くまでもなく噂話ばかり。だが、それがまた信憑性がある話ばかりで納得いかないものだ。
「いやいやそれがまた最近聞いた話なんだが、みんな揃って〝祟りじゃ〟としか言わんのだ。
「ふーん…。で、その祟りの原因が言い伝えから来ていると言いたいのか?」
「あぁ!お前さんはよくわかる人だな!
証拠はいくらでも出てくる訳じゃないが、どうも話が現実的すぎてな…。」
「そうか…、それは私も気になるな…。ぜひ聞かせて貰えないだろうか?」
「あぁ!是非聴いてくれ。あれは……」

昔この村で、大きな厄災があったそうだ。それはそれは大きな被害が出たそうな。
村の村長は、原因を探ろうと被害のあった場所へ行き調査をした。しかし数日後、村長は行方が分からなくなってしまった。そして、次々と捜査に出ていたものは皆突然いなくなってしまったのだった。
ある日の夜、一人の老婆が空を眺めながら呟いた。
「神の祟りじゃ…、月神様の…祟りじゃ。わしらが、怒りに触れてしまったのじゃ…。」
老婆が天に祈り始め、それに続いて村の者達は天に祈りを捧げた。
何数日過ぎただろうか、厄災は日に日に村を飲み込んでいく。
すると一人の少年が言う。
「…生贄。そうだ、神に生贄を捧げれば祈りは届くかもしれない…。」
「生贄…、そうだ! そうすれば村は救われる。」
そう、その言葉は不安を抱えて神にすがる思いで日々を過ごしていた者にとって〝救済〟として伝わっていったのだった。
「あの娘は気に入られているだろうし、あの娘がいいだろう。それに、あの娘はこの村に要らない者だ。」
村のものは皆賛同し、村の離れに住む〝紅羽〟という少女を生贄として神に捧げることにした。

ー後に知ることになるが、少女は代々神の住む社を守り続けた神使の末裔であった。ー

翌日、村のものは月神様が祀られているとされる山奥へと向かった。
社が佇む翠泉の池に少女は、生贄として捧げられた。
「あぁ、月神様!どうか!どうかお救い下さい!」
次々に村の民は祈った。
その後、村のもの達は去っていった。

そして祈りは届かず、厄災はたちまち勢いを増したそうな…。

「…って言う話なんだが…。っておい!ちゃんと聴いてくれよ!」
「あ、あぁ。すまない。少し気になったことがあったから…、気を取られてしまっていたんだ。」
「…?何にだ…?」
「いや、気にする事はないさ。ただ思い出したことがあっただけさ。」
「はぁ…、まぁいいけどよぉ…。一応お前さんの心配はしてるんだからなー?」
「ははっ!あんたはいい人だな!」
次第に日が登り始めて、辺りは夜明けを迎える。
「あ、そうだ。なぁ商人さん。ここから進む道には気をつけていきなよ?」
「ん?この先に気をつけるような危ない道はないさ!心配不要だ。
あんたこそ、そっちの道は険しいから気を付けた方がいいぞ?
めったに登る人なんさ一人もおらんからなぁ!」
がっはっは!と、豪快な笑い声が響く。
「あぁ、気をつけるさ。じゃあ、私はそろそろ行くよ。」
手を振り、互いに歩み始めた。
少し進んだところで振り向き、満面の笑みを浮かべ呟いた。
「あんたが進む道は、直にあんたが話していた場所とそっくりになるだろうな。」
それはそれは…、怖いほどの怒りの籠った笑みを浮かべて。
続く




月夜
私はよく月や星を眺めるのが好きで、家のベランダや庭でよく見てます。綺麗ですよね〜。
でも、首が痛くなりがちなので、最近は部屋の電気を消して、窓越しに空を眺めるようにしてます。

優しい月の光と神々しい星々の光、なんとも言えない美しさ。それを絵にして完成されるのには多くの時間をかけないとですね。
水面に反射する月も綺麗ですね。

3/7/2024, 1:15:31 PM