届かぬ想い
ーどうか、どうか叶えてください…神様。
どうか…、あの子を…
「なぁ!兄貴ー!ほんとにこっちなのか〜?
道間違えてないよなー!」
草木をかき分け進んでいく兄を追いかける。
「…あぁ、こっちであってる!」
日が暮れ始めている。
あちこちで草木が風に揺られる音や、ガサガサと何かがいるのではないかと思われるような人為的な音もしている。
「なぁ!もう日が暮れちゃうよ!
まだつかないのかー!」
真っ直ぐに歩き続ける。
「あぁ、あってるさ…。」
兄は、ピタッと動きが止まり振り返った。
「さぁ、ギギァギィー…、おィデ、ギゥギィギィー…、オいデ……。」
兄だった者は、聞きなれない重低音と嫌な音を
発し、得体の知れない顔をした化け物に変貌した。
「……ダ……ナ!」
その声を聞いた瞬間、目の前は暗くなり身体は重力を失った。
「ゥワァァァァ!!!!」
叫び声とともに目が覚めた。部屋の中はまだ暗いままだ。しかし、窓の外は夜明けをむかえはじめ
ている。
窓を開けると、夜明けの太陽が部屋を照らす。
その光は、机の上に置いてあった亡き兄のお守り。
そのお守りを手に取る。
「そうか…、そうだったのか…。」
泣きながら胸元にお守りを握りしめた。
あの時の言葉を思い出した。
「お前の分は俺が貰っていくから、俺の分も生きるんだぞ!俺との約束だからな!」
4/16/2024, 4:45:53 AM