涙雨

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ハッピーエンド(?)

「あ!あった!
おーい!見つけたよー!」
手にした果実を手にし、大きく手を振る。
ぞろぞろと仲間が次第に集まってくる。
「おぉ!お前が選ばれるとはなー!良かったじゃないか!」
「良かったわねぇ〜。ついにあなたも夢が叶えられるのよ!」
そう、この果実は、選ばれた者が願い1つ叶えられる権利を与えられると言われる〝神秘〟の果実。
何百年に1度現れる不思議な果実。
「これがあれば……」
少年はみんなに別れを告げ、足早に家に帰った。
「姉様!見てください!これっ!」
窓際のテーブルで、紅茶を嗜みながら本を読んでいる人の姿。鮮やかな霞色に、透き通った空色のドレスの女性。彼女が少年の姉である。
「あら…、今回は貴方が見つけたのね。すごいわ。」
本を置き、少年に駆け寄る。
「姉様!これがあれば、あの城に行けますよ!」
ぴくっと姉の表情が固まる。
「……、あの城のことはもういいのよ。これはあなたの願い。あなたの叶えたいものを叶えるためのものよ?」
姉と一緒にテーブルへと向かう。
「でっ、でも!」
「でもじゃないわ。これはとうの昔に私が願ったこと。それは、あなたには重すぎるほどの願いよ……。」
椅子に座ると、窓の遠くを眺めながら呟いた。
「それに……、これは私が叶えなければならないものなの。」
「だから、あなたの願いを叶えなさい。」
ニコッと微笑む。
「……。姉様がそういうのであれば、分かりました。」
姉が入れてくれたハーブティーを飲み、今日あったことを話し始めた。


ーー「あら?もうこんな時間なのね。そろそろ夕食の支度をしないと。」
日が徐々に暮れ始めている。
「あっ!そうだ!姉様、僕の叶えたいことが決待ったかもしれないです。」
「あらっ、もう少し時間をかけてもいいのよ……って、あの子どこに行ったのかしら?」
キッチンから出てくると、既に弟の姿はない。
玄関の扉が空いたままになっていた。
「もう……、あの子ったら。もうこんな時間なのにどこに行ったのかしら…。」
姉は弟を探しに、家を出る。

「あ!ガーディさん、すみません。弟を見ませんでしたか?」
広場にたどり着き、知り合いのガーディさんに尋ねた。
「えっ?あの子なら、さっき村長のとこに行くっていってたような…。それがダメなら、瑠海の森に行くって言ってたよ。」
「なんですって!?あそこは立ち入ってば行けない場所ではありませんか!」
焦りが募り、憤りをぶつけてしまう。
「少し、落ち着いて。私も、あそこは入ってはダメだと言っておいたさ。でも万が一何かあったら行けないから、警備の人に伝えておいたよ。」
「そ、そうですか……。」
少し安心し、落ち着いてくる。
「貴方たちに何かあったら行けないし、私も一緒に行こうか?」
「ありがたいですお言葉ですけれど、大丈夫です。もう少し、私の方で探してみます。」
「そ、そうかい…。」
ガーディさんにお礼をして、瑠海の森へと向かう。
「あの子、やっぱりお城のことを気にして……?」
不安が募りながら走る。

「どこにいるの!ねぇ、いたら返事をして!」
森の中は既に日が落ち始め、薄暗くなり奇妙な雰囲気が漂っている。
「どこ……、どこにいるの?」
ランタンの明かりを頼りに歩みを進める。だが、一向に人一人にも会わないのだ。
「あのお城に行ったとは思えないけれど……、一応確認をしに行かないと。」
記憶を頼りに、お城がある場所へと走り続ける。

次第に道が開け、薄暗い空に雨足も強くなり始める。
「っ……、っは、あった…。」
ようやくたどり着いたお城は、既にコケやツタでおおわれていていかにも趣がある城だ。
「っ、はやくっ…行かないと。」
残りわずかの体力だが、走る足を止めることは無かった。
階段を何段も上がり、一部屋一部屋くまなく探す。
「どこ?どこにいるの、いるなら答えて!お願いよ!」
ランタンのあかりもあとわずか、残された力を振り絞り、階段をさらに登っていく。

屋上へと、続く階段を上り見えたのは……
「これは…、何?」
その場所は、お城とは言い難いものが沢山転がっている。
ただれた皮膚の間に骨が見えるほど腐りかけている獣の胴体や、人と思われる頭蓋骨に飛び出た目玉。
床には何やら道具で掘られた魔法陣と思われるものが描かれている。
「うっ…、何よ……これ。」
酷い匂いと、血の跡に今にも気を失いそうなほど調子が悪くなり始める。
ランタンで周りを照らしながら、足元も気をつけながら進む。
雨足は酷くなり、荒れ始める。次第に風も強く吹き始める。
そして……、
「……、そ、そんな。」
持っていタラントンを落とし、その場に崩れ落ちる。
そう、魔法陣の中央には弟の亡骸があったのだ。
「……………。」
言葉が出ないほどの、悲しさやむなしさ、恨みや憤りを感じる。
涙がおち、雨につたわり流れていく。
「……ナゼ……。」
次第に風が止み、雨が降り続ける。
魔法陣は、動き出す。周りにはケタケタと笑い声が聞こえる。この世のものとは思えない声らしきものまで聞こえてくる。
「あぁ、そっか……。」
立ち上がり空を見上げる。曇り空の中、雨は止まない。
「私が悪かったのね……。」
昔の記憶が蘇ってくる。
雨の音だけが響く。
「私は……、ようやく帰れるのね。」
光が彼女を囲んで、灯される。
「長かった……。100年以上もの年月が過ぎた。
やっと、やっとだ。」
天に手を伸ばし微笑む。
眩い光が辺り一面に広がり、その城は姿を消した。


「いたぞ!おーい!こっちだ!」
警備員は、森で少年を見つけた。
「おい、おい!聞こえるか!」
少年は少し目を開けて微笑み、気を失った。


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ハッピーエンドorバットエンドどっちにも捉えられたらいいなと思うお話でした。

3/29/2024, 1:45:25 PM