「あ〜学校疲れたーーー!!!」
ばたり、とアミダはリビングのソファに倒れるように飛び込む。
「夏休み終わっちゃったら一気に夏が終わった〜って感じ!」
「まだ暑いよ」
私はソファに寝そべるアミダを床に座りながら見て言う。
「暑くても気分!気分が夏が終わっちゃったの!」
「そうなんだ」
アミダはソファで仰向けで寝て足をぱたぱたさせている。
「そう言えば、今年の夏はそうめんやらなかったなぁ」
「一昨年は流しそうめんってやつやったよね、部屋びしょびしょにしてXに怒られた…」
「そうそう!次は庭でやれ!ってね!ネオは流しそうめん初めてだっけ?」
身体を起こしたアミダはこちらを見て言う。
「うん、初めて」
「なら、またやりたいよね!!!今度Xとハレルヤに内緒でやっちゃお!Xに言うと怒られそうだし…」
と最後はごにょごにょとアミダは言う。
「そうだね、私たちで出来るかな?」
「出来るんじゃない?組み立てて水流すだけだし!」
そわそわするアミダを見て私もだんだん楽しみになっていく。
「じゃぁ、今からやろうか」
「うん!」
上手く流しそうめんの土台を組み立てられなくて2人が庭をびしょびしょにしてXに怒られたのはまた別の話。
近くの学校から夕方の鐘がなる、子供たちはもう帰る合図の鐘だ。
私は散歩で歩くのが疲れて学校近くの公園のブランコに座っていた。
遊んでいた子供たちが友達と別れの挨拶をしてみんな家路へ帰っていく。
(アミダは明日から学校だって言ってたな…)
夏休みという長い休みの最後の日。
さよならグラビティに来て2年目の夏だったが、今年も楽しいことが沢山あった。
みんなで花火を見たり、ラプラスとマモンとお祭りをまわったり、海で女王決戦というのもやってた…
アミダが溶けると言いつつ溶けたらどうなるんだろうね?という質問が面白かったり、ハレルヤが私の作ったシロップ沢山のかき氷を食べてくれたり、Xをもふもふしたり…
「いたいた、ネオ!」
思いふけっていたら、誰かに名前を呼ばれた。
振り向くと
「ハレルヤ」
「もう夕飯できるから、帰ろ?」
にこっと優しく微笑むハレルヤが立っていた。
「うん」
私はブランコから立ち上がり、ハレルヤと並んで歩いて公園をあとにする。
蝉がうるさく鳴いている。
きっと来年もうるさく鳴いているのだろう。
だが、私にとってそれも夏の思い出…
来年もみんなと一緒に楽しい夏に出来たらいいな
そう思いながら私も家路へ歩いていく。
「紫苑ちゃん!どうぞニャン!」
そう言ってダルちゃんは私に猫…?らしき少し不気味なキーホルダーを私に渡す。
「ありがとう、ダルちゃん!これは…猫?」
「そうニャン!」
可愛いニャンよ!とダルちゃんはニコニコしながら言う。
ダルちゃんはどこか可愛くないようで可愛い物が好きらしく(ダルちゃん曰くキモカワらしい)そういうグッズを沢山持っていた。
でも、これは…
「なんかこの猫さん、ダルちゃんの髪の毛の色と同じ毛の色してるね?」
「でしょー!もし、これから紫苑ちゃんがドラマの撮影とかで私と離れ離れになった時に私が近くにいるよ〜っていうお守りというかなんというか…そういうのニャン!」
にかっと笑うダルちゃんがいつもより輝いてるように見えた。
そうだ、私は…私たちは…
「二人で一つ、だもんね!」
目を瞑る。
するとそこにはジャックが立っていた。
「ラプちゃん、どうしたの?元気ないの?大丈夫!私がラプちゃんのネガを切り取ってあげるね!」
いつものジャックがいつも通りに話しかけてきて安心した。
「ねぇ、ラプちゃん、私気づいたんだけども、ラプちゃんって私の事好き…なんだよね?私もラプちゃんの事、大好き!これはちゃんとその、付き合いたいとかそういう気持ちだよ!ラプちゃんは…どうかな?」
まさかの言葉が出てきて私は驚きが隠せない。
「ラプちゃん?!泣いちゃったの?!大丈夫?」
「うん、大丈夫、ありがとう、ジャック」
「良かった、ラプちゃん、大好きだよ!」
目を開ける。
ジャックはそんな事を言わないということをわかってても何度も心でその風景を見てしまう。
未来を透視できるこの力で何度観てもジャックはその言葉を言うことはない。
だから、せめて心の中で…………
「ふぅ、暑いね」
ハレルヤはそう言うと庭から冷房がきいている部屋の中へ入る。
「ハレルヤお疲れ様」
「ネオありがとう」
ハレルヤは私の渡した麦茶の入ったコップを受け取り一瞬で飲み干す、それほど喉が渇いてたんだろう。
「雑草、抜いてたの?」
「うん、放っておいたらすごい生えてきちゃって虫とか凄くなりそうだし…」
「虫…出てきたら私がやっつけるのに」
「あはは、ネオは心強いなぁ…でもいちいち出てきたのをやっつけるのもネオが大変だし、虫も可哀想だからね…」
ハレルヤはカンカン照りのベランダへ目をやりながら言う。
(ハレルヤは優しいな…)
私はそういう優しいハレルヤが好きだ。
だから少しでも貴方の役に立つために…
「私も、手伝うよ」
そう言うとハレルヤは微笑み、ありがとう、と言った。