夢が醒める前に
まだ夜の底に 光が沈んでいる
指先で触れれば ほどけてしまう気配のまま
あなたの声だけが 水面に揺れていた
夢が醒める前に
名前のない景色を 胸にしまう
消えてしまうものほど
どうしてこんなに あたたかいのだろう
目を閉じれば
昨日より少しだけ遠いあなたが
それでも確かに ここにいる
朝が来る
その一歩手前の静けさで
私はそっと願う
どうかこの瞬きのあいだだけ
夢の続きが 息をしていてほしい
眞白あげは
胸が高まる
ひそやかな夜の底で
胸の奥が、そっと灯る。
まだ名もない光は
指先よりもかすかで
風に触れれば消えてしまいそうなのに
なぜか、強く脈を打つ。
遠くで誰かが呼ぶような
未来の影が揺れるたび
胸は波のように満ちて
言葉より先に、世界が動き出す。
理由なんていらない。
ただ、この鼓動が示す方へ。
高鳴りは、私の中の小さな革命。
静けさを破り
今日を越えていく力になる。
眞白あげは
不条理
夜明け前の駅のホームで
誰かの落とした影だけが
まだ帰る場所を探している。
風は理由もなく
右から左へと世界を撫でていき、
置き去りにされた言葉たちは
順番を待つことすら許されない。
「どうして」と問うた声は
空気に吸われて形を失い、
残ったのは
答えのない問いだけ。
それでも朝は来る。
理屈も慈悲もなく、
ただ淡々と光を配りながら。
そして私はまた歩き出す。
世界の不条理に
名前をつけられないまま、
それでも息をすることだけは
許されているらしい。
眞白あげは
泣かないよ
泣かないよ
こぼれそうな想いを
そっと胸の奥にしまいながら
今日の私を歩かせる
泣かないよ
涙の代わりに
深く息を吸って
まだ見えない明日を信じてみる
泣かないよ
強がりじゃなくて
立ち止まったら
きっと自分が悔しくなるから
泣かないよ
でも、泣きたい気持ちまで
否定はしない
それも私の一部だから
泣かないよ
そう言い聞かせるたびに
少しだけ
前へ進める気がするんだ
眞白あげは
怖がり
影が伸びるたびに
胸の奥の小さな鈴が鳴る
チリン、と
誰にも聞こえない音で
夜道の風が頬を撫でると
世界の端がほどけてしまいそうで
足元を確かめるように
そっと歩幅を縮める
怖がりな私は
逃げているんじゃない
ただ、見えないものの気配を
誰よりも早く感じてしまうだけ
だから
灯りの下で息を整えながら
今日も思う
――怖がりでよかった
この心は、世界のささやきを
ちゃんと拾えるから
眞白あげは