ないものねだり
手を伸ばせば届くはずの
あの光は
いつも指先の少し先で
ふっと形を変えてしまう
欲しいと願うほど
遠ざかるのは
きっと世界の気まぐれじゃなく
わたしの心の癖なのだろう
持たぬものばかり数えて
ため息を重ねても
胸の奥の空白は
埋まるどころか
静かに広がっていく
それでも
追いかけずにはいられないのは
手に入らないものほど
美しく見えてしまう
この不器用な性質のせいだ
今日もまた
ひとつの願いを
そっと胸にしまいながら
歩き出す
満たされないままの
わたしという物語を連れて
眞白あげは
好きじゃないのに
好きじゃないのに
どうして胸の奥が
ひと呼吸ぶんだけ
痛むのだろう
触れたくないのに
指先は あなたの名を
空気の上でなぞってしまう
忘れたいのに
夜の静けさは
あなたの影ばかり
丁寧に拾い集める
好きじゃない
そう言い聞かせるたび
言葉の端が震えて
嘘だけがやわらかく積もっていく
好きじゃないのに
どうして
こんなにも
あなたで満ちてしまうのだろう
眞白あげは
特別な存在
ひとつの声が
遠くで揺れた風を連れてくる
名を呼ばれたわけでもないのに
胸の奥がそっと、あたたかくなる
世界のざわめきに紛れても
あなたの気配だけは
不思議と見失わない
まるで夜空が
たった一つの星を示すように
特別とは
飾られた言葉ではなく
静かに寄り添う影のようなもの
触れなくても
確かにそこにあるとわかる光
今日もまた
その存在に救われて
私は少しだけ
優しい方へ歩き出す
眞白あげは
バカみたい
まっすぐ歩けばいいのに
わざわざ遠回りして
夕暮れの影に話しかけては
返事がないことに安心している
そんな自分が
バカみたいだと思う
忘れればいいのに
胸の奥の小さな灯りを
そっと手で覆って守ってしまう
消えてしまったら困るくせに
灯っていても苦しいなんて
ほんとうにバカみたいだ
笑えばいいのに
うまく笑えない日ほど
誰かの笑顔がやけに眩しくて
目をそらした自分を
また責めてしまう
そんな弱さも
バカみたいで、愛しい
それでも
明日の自分は今日より少し
まっすぐ歩けるかもしれないと
根拠もなく信じてしまう
その希望だけは
バカみたいに強いまま
消えない
眞白あげは
二人ぼっち
世界のざわめきが
遠くへ沈んでいく夜
残されたのは
あなたと私の呼吸だけ
言葉は少なくていい
触れた指先の温度が
すべてを語ってしまうから
孤独が二つ
寄り添っただけのはずなのに
なぜだろう
こんなにも心が軽い
明日がどんな色でも
この瞬間だけは
二人ぼっちでいい
誰にも見つからない
小さな宇宙のままで
眞白あげは