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欲望

胸の奥で、名もない獣が目を覚ます。
静けさを破らぬよう、そっと息を潜めながら、
それでも確かに、世界の輪郭を押し広げていく。

触れたいものは、いつも少しだけ遠い。
指先が届かない距離にあるからこそ、
光は濃く、影は深く、心は熱を帯びる。

欲望とは、欠けた部分の形をした灯火だ。
満たされるたびに姿を変え、
満たされぬたびに言葉を覚え、
やがて私の歩幅を決めていく。

逃げても追ってくる。
抱けば牙を見せる。
それでも私は、
この獣と共に生きていく。

なぜなら、
欲望のない私など、
ただの影にすぎないからだ。



眞白あげは

3/2/2026, 6:32:28 AM