アルメリア

Open App
5/9/2024, 11:40:56 AM

〘忘れられない、いつまでも。〙
 人を傷つけた時、痕を抉った日。誰に言われるでもなく、自分が被害を受けた訳で無い。けれど、呵責の念に押しつぶされそうになる。
 そして、影が囁く。
「お前は悪だ、罪人なのだ。人を殺めた。
 許されざるものだ。許されてはいけない。
 けして許すな。俺はそれを知っている。」
 妄執は声に呼応するかのように次第に大きくなり、俺を食おうとする。逃げる、もそうしきれず飲み込まれる、大きな口へ。無駄な努力だったのか。
 ドボンッ。
 体内は底知れぬ海のように揺蕩い、生物がこちらを見ていた。目を向けてはいけない、あれを理解してはいけない。せめてもの矜持だった。
 覚めたとき、目元は濡れ、息は荒い。あれは俺でない、違う存在なのだ。鏡の像にそう喋る。

3/15/2024, 4:50:09 PM

〘星が溢れる〙
 瞳から輝きが零れ落ちるのをただ見つめていた。閉じた虹彩は何も語ることはない。彼女の口から音が漏れることもなかった。俺も口を噤む。昼休み後の授業時間、屋上前は静寂に満ちていた。

「君はいつからここにいたのか。」とか野暮を聞くことは無い。ここにいる訳なんてたかが知れていて、俺も同類だと思うから。互いに詮索の必要はない。そう割り切って、荷物を床に敷いた。
 それからはルーティーン通りだ。壁にある例の伝言を確認する。『"死"ってどう思いますか。』その言葉から始まった知らない誰かとのやり取り。本来、考えないほうがいいこと。けど、それは俺にとっては大切な命題だった。だから、一番つらい時期ここでこれを見つけたとき、ある種救われた気持ちになった。『"俺"を代弁してくれてありがとう。』人生初の対話。相手と意見の合うことはない。けれど今だに書き続けている俺の生きた証。
 今日の回答は◯◯◯◯だな~、ペンで書き足そうとしてはじめて筆箱を忘れてきたことに気がついた。手元にはリスカ用のカッターしかない。仕方ないので鞄に手を伸ばす。
※続きは気が向いたときに書きます。

3/11/2024, 3:36:07 AM

〘愛と平和〙
 その天秤は常に傾いている。

 あるところでは、人々は絶えぬ戦争と貧困に苦しんでいる。これも武器商人達の自己欲(愛)のためだった。人々は暴発音の消えない夜も祈り続けた。夜明けが訪れますように、と。

「天秤の傾きの上には何がある。」
誰かが言った。
「これよりも良いものに違いないよ。」
もう1人が答えた。そうだ、そうだ。と聴衆は言って"それ"に釣り合うようにと"これ"を捨て駆け出していった。ある男はその様を見て、正しいのかも分からぬので抱えたままにしていた。
 
 革命が起こった。
 今までふんぞり返っていた奴らは皆死んでしまっていた。同様に仲間達の多くが亡くなっていた。気がつけばいつぞやの男は"それ"のために尽くす最後の1人になっていた。男は民を想い、善政を敷いた。そのためか民の様子は非常に穏やかだ。しかし、暗かった。それに達したはずなのに、釣り合ったはずなのに、いつしか天秤は逆転していた。

「天秤の傾きの上には何がある。」
誰かが言った。
「これよりも良いものに違いないよ。」
もう1人が答えた。そうだ、そうだ。と聴衆は言って"それ"
に釣り合うようにと"これ"を捨て駆け出していった。男たちの理念を知るものは最早誰もいなかった。

 ほぅほぅ、と烏がないている。王の死を嘆いて。

2/24/2024, 11:40:45 AM

〘Love you〙
 愛してる、なんて口が裂けても言えないので、せめて慰めにもならない言葉を吐いた。
「Love yourself.」
 これは私があなたに贈れる最大のアドバイス。納得なんて出来ず、しばらく苦しむあなたは変わらぬ孤独を見るだろうが、いつかは気付いてくれると信じている。
 そして、そのときにあなたは知るだろう。永遠の揺り篭などないのだと。

2/22/2024, 2:49:17 PM

〘太陽のような〙
 私、あなたに触れているとおかしくなりそうなの。手から伝わる体温も汗ばんだ感じに髪に触れる息、全部が恋しくて、向いてはいけないのに今にもあなたの方へ振り返ってしまいそうで。

 この気持ちにどう区切りをつけたらいいか、分からないなりに考えているのに、あなたを見つけると、心臓は勝手に飛び跳ねて、いないときはあなたを探し、今この瞬間は幸せすぎて死んでしまいそう。2人して見つかったら終わりなのに。.....大分、末期症状だわ。
 あなたは私たちに必要な人。太陽のように明るくて、手を差し伸べてくれた、平等な指導者。だから、私にあなたを囲うことなんてできないのは当然で、そしてその命が誰よりも重いのも理解ってる。だからこれは私の最期のわがまま。

 私は手を振りほどいて、一見見当違いかと思われる方向へと走り出した、……あなたを置いて。笑いながら行くものだから、追跡者からしたら大層、奇天烈なイカレ野郎に思えたでしょう。あなたからしたら命知らずすぎたかもしれない。でも、合ってるの。幸いにも私は背恰好が似ていたし、形見はあなたに渡し終えた後だったから。


 切ったばかりの毛先が変にくすぐったい。目から汗が滲んでる。嗚呼、日が沈まなければいいのに。

Next