〘忘れられない、いつまでも。〙
人を傷つけた時、痕を抉った日。誰に言われるでもなく、自分が被害を受けた訳で無い。けれど、呵責の念に押しつぶされそうになる。
そして、影が囁く。
「お前は悪だ、罪人なのだ。人を殺めた。
許されざるものだ。許されてはいけない。
けして許すな。俺はそれを知っている。」
妄執は声に呼応するかのように次第に大きくなり、俺を食おうとする。逃げる、もそうしきれず飲み込まれる、大きな口へ。無駄な努力だったのか。
ドボンッ。
体内は底知れぬ海のように揺蕩い、生物がこちらを見ていた。目を向けてはいけない、あれを理解してはいけない。せめてもの矜持だった。
覚めたとき、目元は濡れ、息は荒い。あれは俺でない、違う存在なのだ。鏡の像にそう喋る。
5/9/2024, 11:40:56 AM