〘愛と平和〙
その天秤は常に傾いている。
あるところでは、人々は絶えぬ戦争と貧困に苦しんでいる。これも武器商人達の自己欲(愛)のためだった。人々は暴発音の消えない夜も祈り続けた。夜明けが訪れますように、と。
「天秤の傾きの上には何がある。」
誰かが言った。
「これよりも良いものに違いないよ。」
もう1人が答えた。そうだ、そうだ。と聴衆は言って"それ"に釣り合うようにと"これ"を捨て駆け出していった。ある男はその様を見て、正しいのかも分からぬので抱えたままにしていた。
革命が起こった。
今までふんぞり返っていた奴らは皆死んでしまっていた。同様に仲間達の多くが亡くなっていた。気がつけばいつぞやの男は"それ"のために尽くす最後の1人になっていた。男は民を想い、善政を敷いた。そのためか民の様子は非常に穏やかだ。しかし、暗かった。それに達したはずなのに、釣り合ったはずなのに、いつしか天秤は逆転していた。
「天秤の傾きの上には何がある。」
誰かが言った。
「これよりも良いものに違いないよ。」
もう1人が答えた。そうだ、そうだ。と聴衆は言って"それ"
に釣り合うようにと"これ"を捨て駆け出していった。男たちの理念を知るものは最早誰もいなかった。
ほぅほぅ、と烏がないている。王の死を嘆いて。
3/11/2024, 3:36:07 AM