『1件のLINE』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
遠い記憶…私がまだスリープする前の記憶…。
人間は、LINEと言うアプリを使っていた。
連絡手段だそうだ。
私の中にも、LINEのアプリがインストールされていた。
ほとんど破損して修復出来ない状態だった。
でも、1件のLINEがあった。
「生 き て」
世の中、本当に生きづらい世の中でございます。
えー、数多くある小噺のなかで、『一件のLINE』というものがございます。
これは現代落語といわれる、ごく最近作られた噺でございます。
まあ、LINEというのは、皆様もご存じの通り、ぽつ、ぽつ、と小雨のような短文をこう、相手に送りまして、相手のほうも、
「おっ、来たかあ」
と気づき、送り返してくるという、連絡ツールといいますか、まあそういうものになります。
いやもう、生きづらい世の中の中で唯一と言っていいほど進化したものでございます。
昭和のころは文通とか、もっと昔では電報という、電報……、最近の若者はわかりますかね、
「チチキトクスクカエレ」「サクラサク」など代表的なものがありますが。もはや古典落語でしょう。
「チチキトクスクカエレ」というのは、これはわかりやすいですね。
父が危篤であぶないから、今すぐにでも実家に帰ってきなさい、という緊急性を伝える慶弔電報。
では「サクラサク」というのは?
開花宣言……電報で?
と思うかもしれませんが違いますよ。桜が咲くのは春先、つまり学生の合格発表を意味するんですね。
そんな感じで当時では最も速達性に優れた情報伝達ツールですが、もうちょっと笑えてきますね。ダイイングメッセージみたいな感じじゃないですか。
しかも、「スグカエレ」じゃなくて「スク」ですよ。
濁点が使えなかったんですからね。
文字数に応じて金額が決まってきますから、必要最低限の文字数で内容を伝えようと短くする。そうなると濁点なんて使えるものか! と我慢すると。ケチなものです一文字なんてそんな! ――と。
まあでも、了解のことを「り」とかで送ることがあったとかないとか……。
それを考えると昔の人をバカにできなくなりましたね。本当に生きづらい世の中になりました。
それで昨今の、なんといいますか、Z世代とでもいえばいいんですかね。
そのようなキッズが、ある日押入れの奥から電報の紙を見つけまして。
これが忘れ去られたように保管してあったわけですよ。
「けほっ、けほっ。な、何だこれえ、古びた紙だなあ、ばっちいぞお」
と物珍し気に目を凝らしてみますと、なにやらダイイングメッセージみたいなものが書かれている。
これを見て、好奇心が刺激されたんでしょう。
三度の飯より好きなスマホを使って、解読することにしたのです。
まずはGoogleレンズ。
ご存じですか、すごいですよねぇ。
自動読み取り機能があるので、かざせば自動で読み取ってくれる。
最近のキッズは自分で文字を打たないんです。
全部機械。全部スマホ。
でも、古びた紙ですし、よくある黒いシミだらけですから機械の目では無理な話です。
「あれー、おかしいぞー。いつもならこれで、宿題を、終わらせられるのに」
とか言って、悪戦苦闘するんですが、読み取ってくれないポンコツなので、写真に撮ってLINEで友達に送ることにしたのです。
※アプリが重くなったので残念ながら終了。
『一件のLINE』という現代落語はありません。
【1件のLINE】
普段自分のスマホはならない
決して友達がいない訳では無い
ただならないだけ…うん
珍しくLINEがきたことを知らせる音が鳴った
すぐさま飛びつき
わくわくしながらスマホを覗く
そこにいたのは公式LINE
同じ音がどこかで聞こえて
そのたびに画面を開いて
まだかなって待ち続けて
違ったなってため息吐いて
あたしの感情は
揺さぶられてるのに
このスマホは
少しも振動しない
駆け引きなんてできないよ
きみの いま が 知りたい
【1件のLINE】
こういうお題に[LINE]って単語が選ばれたことに
正直少し驚いている。
手紙、ポケベルのメッセージ、携帯電話のメール…
その時代を表す連絡手段の一つとして
もうLINEは確立されてるんだな。
LINEなぁ…
いつも軽いやりとりで
あっちの都合だけで来るから
こちらも待つしかしなかった
面白くないからゆっくり会話を引き延ばしてたんだ
仕事も頼んで修正作業をひたすらやらせた
それがある日音沙汰すらなくなったから
慌ててルールを捻じ曲げた
あっちからの『1件のLINE』を貰うために
その、なんだ
かなり本気で探り出して、越境したな
連絡は知ってる手段で何度も送った
家にも行って話も聞いた
前と同じで飯が食えなくて眠れもしてないってな
それで思ったんだが、
理由、…これじゃないか?
わたしが夜中に目が覚めてスマホの通知を見ると1件のらいんがきていた
それは「おやすみ」
わたしはその1件だけでもうれしかった朝おきたときには元気よく「おはよ!!」って言おうと思う
「1件のLINE」
待って待って、デートのお誘い既読にしちゃった!
瞬速で返信。突如にして始まるファッションショー。
【1件のメッセージ】
coming soon !
たった1件LINEが届いただけで、何かが変わるような気がしてわくわくできるから不思議だ。
1件のLINE
作品No.102【2024/07/11 テーマ:1件のLINE】
赤いバッジは、未読メッセージがあるという表示だ。〝1〟を表示したまま、アプリアイコンの右上に鎮座している。私はずっと、その一件のメッセージを読めていない。
それは、今も同じ職場でそれなりに頼りにしている先輩からの謝罪メッセージなのだけれど、私はずっとそれを開いていない。だからずっと、そのバッジは付いたままだ。もう、五年くらいになるのだろうか。
ここまで来たらもう、読まなくても構わないかと、開かなくてもいいかと、そう思っている。何よりも、あの一連の出来事を思い出したくないのだから。
これからもきっと、赤いバッジの〝1〟は、そこに居続けるのだろう。
─1件のLINE─
相棒と、喧嘩した。
その相棒ってのは一緒にシェアハウスしている、俺の中で一番仲の良い奴だった。
喧嘩のきっかけは些細なことだったと思う。
そこで謝ればいかったものの、ムカついてたせいか昔のミスを指摘したんだ。
そこから段々エスカレートしてって、今までで一番大きな喧嘩になった。
自分でも、過去の話を持ち出すなんてださいって分かってた。
でも、疲れが溜まってたんだと思う。俺も、あいつも。
それから3日間、相棒は帰ってこなかった。
流石に心配になって、ずっと無視していたLINEを見た。
そこには「3日前:世界一の相棒!からの1件の通知」と示されていた。
嗚呼…たしかふざけてこんな名前にしたんだっけ。
そんなことを考えながら、その1件のLINEを見る。
そこには「○○病院 305号室」とだけ残されていた。
俺は嫌な予感がして、急いでその病院へ向かった。
一瞬、なにかの悪戯なんかじゃないかと思った。
305号室。3月5日と捉えると、俺の誕生日だった。
だから、やり返すためのドッキリだと、何処かで信じていた。
しかし現実は残酷で、そんな理想は呆気なく壊された。
病室にはベッドに横たわって、管がたくさんついた相棒の姿。
見ているだけで痛々しい相棒の姿を見て、俺は後悔した。
なにも出来ずに突っ立っていると、医師らしき人が入ってきて、
一瞬驚いた様子をしながら、別室に案内された。
相棒は、3日前。つまり、喧嘩した日に、事故にあったと。
なんでも、手にはコンビニの袋を持っていたからコンビニ帰りらしい。
「その袋を一応」と渡されたが、その中には俺と相棒が好きなアイスが1本ずつ入っていた。
同じ袋には手紙も入っていて、「ごめんな 世界一の相棒へ」と書いてあった。
「はい」の2文字を送るために要した苦悩の合計は、
「いいえ」の3文字のそれらよりもきっと多いだろう。
断ることはあまりにも簡単だ。
1件のLINE
芸能人が個人的に送りあった内容が
週刊誌にバレるのはどうしてですか
どちらかの人が情報を売ったのか
身近な人がこっそり覗き見たのか
それとも第三者がお金を出せば
情報をあぶり出せる誰かがいるのか
まあ自分がLINEやらない理由は
チャットのようなやり取りが面倒だから
つまり今のところ
1件のLINEすら受け取ったことは無い
今までで一番親しみの無いお題だ(笑)。
ごめんなさい、LINEやってないんですー。
END
「1件のLINE」
1件のLINEが届いた。
通知マークの隣には、馴染のある名前とアイコンが並んでいる。
上得意様からのご依頼だ。
今回の荷物は、小包。
以前の依頼の時も小包だった。
…小包が好きな御仁だ。
荷物の場所は、いつも通り。
ハイハイ。あそこですね。了解です。
お届け先は…研究所?
初めての場所だ。後でよく調べなくては。
お届け日は、明日の10時?
珍しい。いつもは当日の夜とかぬかす御仁のくせに、なかなか常識の範囲ではないか。
以前、休日出勤の夜間配達が度重なった際に送った、値上げの要求LINEが功を奏したのかもしれない。
当時は怒りのまま「友情割ならぬ、友情増しを要求します」と、皮肉な文面を送りつけたのだが──
「友情増しの有償増しですね。金で買うお友達とは、実にディストピア感溢れてよろしいですね」
皮肉に皮肉を重ねられて、余計に腹が立ったのは未だに記憶に新しい。
厄介な客ではあるが、届け先の人物たちは興味深いものがある。
学生カップル、海に佇む男性、遠距離恋愛のカップル、傘を忘れた女性…。
それぞれ個性があって面白い。
今回のお届け先である研究所の受取人は、どんな人物だろうか。
受取人の名前は、男性の名前が記されている。
研究所+白衣+男性=博士=おじいさんという連想の等式が浮かんだのだが、実際はどうなのだろうか。
俺は、上得意様に了承のLINEを返すとマップのアプリを開き、研究所の場所を検索することにした。
教えたはずがないのに
突然アイツからLINEがきた。
「次の活動はいつ?(^ー^)」
既読にしてしまった自分を恨んだ。
この前、思わぬところでアイツと遭遇した。
大概、制服姿しかお互いに知らないから、てっきり、からかわれるかと思ったのに。
アイツは、割と本気だったんだとLINEの文面を見て首肯した。
『推し活』
「ホントに、興味があるのね…。」
なんとなく複雑なのは、なぜなのか。
聖地巡業に同行させたら、予想外の失言に雰囲気を壊されるかもしれないから?
いやいや
アイツだって仮にも同じ文藝部だし、文豪を貶めるようなことを云うだろうか?
私はハッとした。
アイツが原因じゃなくて、私に原因があるとしたら?
焦がれた殿方の軌跡を辿る、その道中に同行するにふさわしいと、私が納得していないのではないのか?
推しが崇高すぎて、無意識に人選までするなんて、なんて傲慢なんだろう…。
当たらずとも遠からずな推察に、私は唇をへの字に結んだ。
「貴方たちにはちゃんとお相手が居て、私は同じ時代に生まれなかっただけなのに…」
私は、何度も読み込んで擦りきれた文庫本を撫でた。
もうすぐ、彼の命日だ。
アイツは、彼の作品をどこまで読んだことがあるだろうか。
「まぁ、訊いてみるか」
私は誰にともなく呟き、アプリを起動させた。
#1件のLINE
1件のLINE
あなたの知らない色があります、という、意味深な通知。。。
【1件のLINE】
「さっきアイス食いたくなってコンビニ寄ったんだけどさーあ、ちなみにアイスはパルム。んでコンビニ出たら目の前に鹿がいたんだよ。いたっていうか浮いてた。最近の鹿は飛べるんだな。生命の進化なのか化学の進化なのか俺にはわからんがなんかすごいのはわかる!!だからすげーって見上げてたんだけどじっくり見すぎてアイス溶けてた。それを伝えたくてさ!こんな夜中にごめんな」
深夜3時。LINEの通知音がなる。
公式LINEは非通知だから誰かから緊急の連絡とかかな。
そう思い開いてみると飛ぶ鹿と溶けたアイスの話。
いや、そんなことはどうでもいい。
送ってきたやつの名前がじぃちゃんの名前なんだ。
しっかりフルネームで漢字も完全一致。
じぃちゃん一昨年死んだのに。
天国で楽しくやってんのかな。
「一生君の傍に居る。」
こんな事を言った過去の自分を殴ってやりたい。
「もう最後だね。」
窓の外を眺めながら彼女が言った。顔がよく見ない。しかし、泣いているような気がした。
「そんな事言わないでよ。」
僕は泣いていた。そんな僕の涙を彼女は拭ってくれた。
「泣かないで。笑って。」
何でこんなに優しい彼女が、病気で死ななければならないのか。僕は神を呪った。
「一生君の傍に居る。だから、君も僕から離れないで。」
僕の言葉を聞いた彼女は、少し悲しそうな顔をした。
「ありがとう。」
そう言う彼女の顔は、どこか悲しそうな笑顔だった。
〈今までありがとう。君のお陰で楽しい人生だったよ。私があっちに逝っても、泣かないで笑っててね。〉
彼女の遺書を読んで、僕は泣いた。あの時、一生なんて言わなければ良かった。彼女にとってあの言葉はどれだけ辛かったか。どれだけ呪ったのか。もっと考えて、言えば良かった。謝らなきゃ。僕が彼女を苦しめたのなら、僕は謝らなきゃ。じゃないと、彼女の彼氏だなんて名乗れないよ。僕は屋上に向かった。
〈今から逝くよ〉
僕は彼女宛に、一件のLINEを送った。送信してから思う。何で僕はこんな無駄な事をしたのか。分からないけど、死への恐怖を振り払いたかったのかも。彼女はこんなに怖い事を、一人で抱えていたのか。でも大丈夫。これからは、僕も一緒に抱えるよ。僕は、重力に従うように落ちて逝った。
明かりがない闇に包まれた部屋の中で
スマホだけが唯一の光を生み出した。
よく見ると、一件のLINEがきている。
どうせ、あいつが課題提出期限を聞いてきているのだろう
と、推測した。
仕方なくLINEを開いた。
その瞬間、部屋唯一の光は消え去り、闇の世界となった。
俺は気付いた。
スマホを充電していなかったことに。