教えたはずがないのに
突然アイツからLINEがきた。
「次の活動はいつ?(^ー^)」
既読にしてしまった自分を恨んだ。
この前、思わぬところでアイツと遭遇した。
大概、制服姿しかお互いに知らないから、てっきり、からかわれるかと思ったのに。
アイツは、割と本気だったんだとLINEの文面を見て首肯した。
『推し活』
「ホントに、興味があるのね…。」
なんとなく複雑なのは、なぜなのか。
聖地巡業に同行させたら、予想外の失言に雰囲気を壊されるかもしれないから?
いやいや
アイツだって仮にも同じ文藝部だし、文豪を貶めるようなことを云うだろうか?
私はハッとした。
アイツが原因じゃなくて、私に原因があるとしたら?
焦がれた殿方の軌跡を辿る、その道中に同行するにふさわしいと、私が納得していないのではないのか?
推しが崇高すぎて、無意識に人選までするなんて、なんて傲慢なんだろう…。
当たらずとも遠からずな推察に、私は唇をへの字に結んだ。
「貴方たちにはちゃんとお相手が居て、私は同じ時代に生まれなかっただけなのに…」
私は、何度も読み込んで擦りきれた文庫本を撫でた。
もうすぐ、彼の命日だ。
アイツは、彼の作品をどこまで読んだことがあるだろうか。
「まぁ、訊いてみるか」
私は誰にともなく呟き、アプリを起動させた。
#1件のLINE
7/11/2024, 2:12:53 PM