マナ

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2/24/2025, 3:15:36 PM

「うぅ…、頭が痛い…」

私は自習室の窓際の席で、文字通り頭を抱えながら机に突っ伏していた。

「なぁに?エラはさっきの授業で、もう魔力使い果たしたの?」

エメラルド色の瞳をキラキラさせながら、ハリスが嬉々として、私の顔を覗き込んだ。

「ハリスと私とじゃ、元々のキャパが違いすぎるのよ」
私は顔をしかめながら、両こめかみを両人差し指で揉んだ。

ふふっと笑うと、ハリスは私にこっそり耳打ちした。

「そんなエラのか弱い姿を侯爵子息様は、頻りに気にしてたわよ」

「うそ」

私は口をへの字に曲げた。

「こんな嘘、言って誰か得するかしら?」

ハリスの瞳は面白おかしそうに笑っている。

「そりゃ...」

誰も得しないと思うけど。

「エラ」

不意に馴染みのある声音が、私の名前を呼んだ。

振り向くと、そこにはヴァレンチノ侯爵子息である、ティント・ヴァレンチノが固い表情で立っていた。

「じゃあ、私はこれで」
ハリスは訳知り顔で私に手を振り、踵を返した。

「エラ」
もう一度、私の名前を呼ぶと、ティントは私が突っ伏していた机の真横で足を止めた。

「調子はどうだ?」
まるで部下に戦況を尋ねる騎士団長のような物言いだ。

でも…

私の目線の高さに、ちょうどティントの左手があり、所在無さげにそわそわしているのが分かる。

「具合が悪いなら、医務室のカルロ女史を訪ねた方がいい」

「はい…」

ティントの言葉は正しい。
正直、此処では充分には休めない。

ティントの左手が意を決したように、私の左肩に置かれた。

「動けないようなら、私が医務室まで支えよう?」

瞬間、私の頬が熱くなり、心臓が跳ね上がった。

胸元をぎゅっと握り、私は顔をしかめた。

「いたたた…」

すると、ティントは怪訝な顔をして、私を覗き込んだ。

「エラ?」

はっとして、私はティントに向き合った。
無理やり笑顔を作る。

「大丈夫だよ。ちょっと、疲れたみたい」

ティントの顔が険しくなる。

「顔も赤い。胸苦しさもあるのか?大丈夫ではないだろう」

その瞬間、大きな腕が伸びて、私の目線が一気に高くなる。

え?
何が起こったの?

目と鼻の先には、彫刻のように整ったティントの顔。

「あっ、え?」

私、ティントにお姫様抱っこされてる?!

「君はもう少し、自分を労った方がいい」

そう言って、進行方向を向いたティントの喉仏がゴクリと鳴った。

私はティントに抱えられるまま、ただ固まるしかなかった。

まるで、魔法をかけられたように。

#魔法

1/21/2025, 12:30:09 PM

自分は
何処へ向かえば
いいのだろう

この世界に
かすり傷すら
遺せてない
透明な私

親元を離れるときに
確かに握ったはずの
羅針盤

もう
私には
道標がない

#羅針盤

12/18/2024, 8:21:09 AM

働いて

働いて

働いて

この先の未来がつまらなく思えて


私はドロップアウトした


特にやりたいこともなく


将来の目標なんかもなく


私は無所属になり


誰かの推薦もなく


蟻地獄のような社会で1人


沈まないよう気を張るしかなかった



#とりとめもない話

12/17/2024, 1:22:49 AM

風邪をひいた


身に覚えはあまりないけど

強いていうなら

仕事のストレスだろう


弱いところに出るという

迷信のような言葉は

私の場合は的を射ていた


声がれがひどい


元々低めの声だが

それにしても

酒焼けを疑われそうなハスキー

電話応対なんか最悪だ


こうなってしまったら

耳鼻咽喉科で薬を処方してもらわなくては

どうにもならない


とりあえず

通勤時間を確認し、私は上司に連絡した


案の定

「潰れたカエルみたいな声だな」

とひとしきり感想を聞かされ、有休扱いになった。
潰れたカエルはそもそも鳴けないだろう。

そんなことを思いながら、終話ボタンを押した。

あぁ、今週は面倒な1週間になりそうだ。


#風邪

12/16/2024, 1:51:04 AM

自分という存在に嫌気が差す


メイクを落とさずソファで目覚めた朝は、何もやる気がしない

肌が呼吸困難で絶不調なのが分かる

ただ惰眠を貪りたい

ただ雪に埋もれて正体を無くしたい

そんな空想で目を反らす

現実や未来から


雪に埋もれたら、キレイになれる

そんな気がしていた


#雪を待つ

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