「こんなん、ベタな恋愛ものとかが似合うテーマじゃん?んなもん、いくら恋多き俺でも書けないって」
大手ファストフード店のイートインスペース。
幼馴染みの青木匡輔とテスト勉強中だ。
といっても、主要5教科において常に学年3位以内をキープしている匡輔に教えを乞う立場だが。
匡輔はストローから口を離し、グラスの半分まで減ったアイスコーヒーを溜め息とともに置いた。
「現実逃避はなはだしいな。創作の期限はまだあるんだろ?何もテスト期間中に考えなくてもいいだろ」
ピシャリと匡輔に冷たく突き放され、青谷慧斗は唇を尖らせた。
「毎日毎日、勉強漬けの放課後なんて、もぉ~‼息がつまるって‼」
すでに飲み干したグラスから、氷が溶けてできたコーラ風味の液体を無理矢理吸いだそうと、慧斗は躍起になった。
今年の学祭で披露する文集のテーマは「未来図」だと告げたあと、顧問のササキンが一言二言何かぼそっと呟いて早々に部室を立ち去ったのは、テスト期間に入る前日の放課後だった。
その時の自分を含む部員たちの顔は、みな同じだったに違いない。
開いた口が塞がらないとは、きっとこんな場面で使うのだろう。
#未来図
4/15/2025, 10:50:17 AM