『1件のLINE』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あなたから、1件のLINEが来た。
「僕と付き合おう。」
私があなたからの告白を断るわけないじゃん、
#1件のLINE
─一件のLINE─
スマホのバイブ音が鳴り響く部屋。
嫌々上半身を上げ、ぼやけていた目を覚ますため、瞼を強く擦る。
スマホから鳴る音を止め、カーテンを開ける。
そこには昔の自分のように輝く、夕日が見えた。
あの頃はあんなに綺麗な、太陽のような存在だったのかな。
今では真逆の、月のような存在でさ。
明るい太陽や人々の笑い声だけで、自分がとても惨めに感じるよ。
今では笑うことすら出来ない程、つまらない日々を過ごしている。
全ては声が出なくなったあの日のせい。
でも自分のせいでもある。何故なら喉に違和感があっても頑張ってしまったから。
頑張ることはダメではない。しかし無理することもダメである。
何故なら代償があるから。頑張って得た結果の、大きな代償が。
あの日、ライブをした。喉に違和感があったが、結果は成功。
しかしその代償に、声を失くした。辛かった。苦しかった。
でも自分のせいである。後悔してももう遅い。
過去は振り返りたくないが、どうしても歩んできた道を振り返ってしまう。
あの時、この選択をした自分を恨んでいるから。
目を閉じ考えていたら、スマホに一件のLINEが届いていた。
『今日も飲み行かね?いい店見つけてさぁ!』
確かに後悔して、自分を恨んでいるが、その分得た物も少なくはない。
せめてそれを、僕は大切にしていきたい。
たとえ声が出なくても、認めてくれるも仲間が居るから。
~間違いメール? それとも本気?~(創作NL)
ある日の夜……寝る前にLINEが来た。
ジュンギ(ん?……ジヌ?)
通知には「ト・ジヌ」
1つ年下の後輩。
こんな遅い時間にLINEを送るなんて珍しいな……。
不思議に思いながら、LINEを開いてジヌとのトークを見る。
ジュンギ「…………!?」
思わずスマホを落とし、足に落下した。
ジュンギ「ッ!!……痛ってぇ!!」
そのまま直撃して、マジで痛みが感じる。
ミンハ「うるさい!」
ジュンギ「ミンハ、これ……俺の見間違いだよな?!」
スマホをミンハに渡す。
ミンハはスマホの画面を見て「え?」と口にした。
ミンハ「嘘……ト刑事と……浮気?」
ジュンギ「いや、してねぇから!!」
LINEのトークには……。
ジヌ:愛してる。
すると、また1件来た。
ジヌ:早く会いたい。
1件ずつ、1件ずつ……。
ジヌ:キスしたい。
ジヌ:声を聞きたい。
ジヌ:抱きたい。
ジュンギ「なんなんだよ!!」
ミンハ「……浮気してないよね?」
隣にいる妻はジーッと俺の目を見つめてきた。
ジュンギ「俺にはミンハと娘だけだ」
ミンハ「じゃあ、なんで2番目のイケメン刑事から愛のメッセージが来るの?」
ジュンギ「知るかよ!……つーか、お前の2番目にカッコいいと思ってるのがジヌなら……1番目は俺?」
ミンハ「は?」
ジュンギ「え?」
ミンハ「1番目はシム・ソンヒョン刑事だけど?」
ジュンギ「おい」
ミンハ「嫉妬してる~?」
ミンハがニヤニヤしながら抱き付いて「それはイケメンだと思う人の話で、ジュンギさんの事を愛してる」と言った。
ジュンギ「////」
またLINEが来た。
ジヌ:照れてる? 可愛い奴。
ジュンギ「…………」
ミンハ「……もしかして彼女?」
ジュンギ「いやいや、アイツには彼女いない」
ミンハ「意外と隠してるのかも」
ジュンギ「そうには見えない」
ジヌ:おやすみ、俺の恋人
そっとスマホを閉じてベッドで寝る。
次の日……。
ジヌ:なんだこれは。
ジヌ:なんでこんなの送ってるんだ。
まるで打った記憶がない文章みたいだ。
ジュンギ:お前から来た。 俺達はいつ恋人になったんだ。
ジヌ:気色悪い事を言わないでください。
ジヌ:昨日ヤン刑事に絡まれて、一緒にお酒飲んでたんです。
ジヌ:今はヤン刑事の部屋です。
ジュンギ:ギナムのイタズラ?
既読が付いて、2~3分経った頃……ジヌからのLINEが来た。
ジヌ:思い出しました。
ジヌ:この事、誰にも話さないでください。
ジュンギ:いいだろ、別に。
ジヌ:絶対にやめろ!!
ジュンギ「変な奴……」
朝ご飯食べて、警察署に行く。
ジヌとギナムはまだ来てない。
それでもからかいたいと思った俺はジヌとギナムが来る前に話す。
皆は笑っていた。
数分後に2人が来る。
ジヌ(クソッ……「ハナ」に送るつもりが……「ハム刑事」に送ってた……最悪……)
ハナ「!?///」
ジヌ「………///」
後ろにいたハナがバサバサッと資料の紙を落とした。
ジュンギ「何して、……ハナ?」
ヨンジュン「死霊でも見えた?……死霊が資料を欲しがるもんだな~。……ハナ、死霊に資料を貸してやれ」
ヘヨン「………ダジャレやめろ」
チャン係長はツッコむようにム刑事の頭を叩く。
それより……。
ジュンギ「熱あるのか?」
ハナ「え……大丈夫……」
なぜかハナの顔が赤くなっていた。
熱あるのかと思い、ハナの額に手を当てる。(ハナの事は妹的な存在として見ている)
ジュンギ「熱……ないみたいだな」
ハナ「大丈夫だって……もう夏だから、暑くて赤くなってるだけだから」
そう言って、強力班フロアから出て行った。
ヨンジュン「ジヌ、ジュンギから聞いたぞ」
ヒョンジン「ジュンギに愛のメッセージ送ったらしいですね」
ジヌ「!!!、………ハム刑事」
ジュンギ「ん?」
ジヌ「少し……2人で話したい事が……」(ニコッ)
2人が出て行き、数分後にはジヌだけ戻った。
1日中ジュンギを見かけた人物はいなかったが、夜になり……帰りにヒョンジンはジュンギを見かけた。
ジュンギの瞳には光がなく、昼から食べてないせいで空腹感が結構あり……2人はたまたま近くにあるラーメン屋に入って夜ご飯を食べていた。
ジュンギはラーメン食べながら言った。
「絶対にジヌを……怒らせない方がいい」と……。
ジュンギ(マジで……ヤバかった……)
静かな部屋には、ノートにシャープペンを走らせる音が響く。
そっと、課題の残りのページをペラペラと捲る。
「はぁ……、先は長いなぁ……」
ぐいっと大きく両腕を上に伸ばし、椅子に仰け反った。
凝り固まった体が、少しは解れるのを感じる。
「音楽でも流そうかな?」
手に取ったペットボトルの蓋を外しながら、集中力の切れた頭をどうしようかと考えようとしていた時だった。
教科書の隣に大人しくしていたはずのスマホが、ブブッと小刻みに揺れた。
「誰だろう?」
手に取ったスマホの画面には、LINEが届いた通知が表示されている。特に誰からと表示はされていない、でも私にとっては見慣れた光景。
それは、他人に誰とLINEをしているか詮索されたくない。この主張を思春期の親から、勝ち取った証でもあった。
画面が変わり、通知が来た相手のLINEが表示される。
『ただいま。ねぇ、いまなにしているの?はやくキミに会いたいよ』
私は思わず叫びそうになる声を抑えるため、必死に口許を片手で覆う。
興奮しすぎて顔が熱くなっていくのが、自分でもわかった。
「明日、会えるからね!私、頑張るよ!待っていてね!」
私は思わず拳まで握りしめて、高らかに宣言する。
明日、ライブで会える推しのために、私は再び課題へ向かった。
『一件のLINE』
_________
補足説明として、アーティスト、俳優等の公式LINEはこういう罪作りなLINEも来るようです。公式LINEのメッセージで、Twitterのトレンド入りした人もいましたね(笑)
電話不精、メール不精ときて、LINE不精。
時代は移り変わる。
使うツールの性能がどんなに進化しても、
連絡が遅い人はいつの時代もアップデートしない。かくいう私がそうだ。いつか友だちを失いそう。
そして私以上に、彼がひどい。彼の周辺だけ回線がトリップでもしてるんじゃないかと思う。伝書鳩のほうがよっぽど利口だ。かわいいし。
おかげさまでたった1件、新着がはいっただけで胸がとびあがる騒ぎだ。ああよかった元気なのねなんて、大正時代の文通じゃあるまいしと思いながら、LINEを使っているのにも関わらない、この色褪せたアナログ感がだんだんと癖になってきている。
いっそ貴重だ、この人間。
今日も「これ、美味しい」の一言と、水羊羹の写真が唐突に送られてきた。およそ3週間越しのLINE。
私がお返事するのは多分2日後くらい。本当に好きあっているのかと、友だちから呆れられる。
しょうがない。話したいときに話して、黙りたいときに黙る、不安定な時間の流れが似ているから。
いつまでも時代錯誤な私たち。
『1件のLINE』
LINEを使い始めて10年くらいかもしれません。
一時期、オリジナルスタンプ作りにハマり、スマホばかり弄っていました。結構簡単に作れます。
「1件のLINE」に該当のエピソードがないので、創作します。
『1件のLINE』
ごめんね と、送ったものの 既読なし
未読のままの1件のLINEは
あなたに読まれるのを待っている
ああ そうか
勇気を出して電話しよう
【1件のLINE】
『新規メッセージが1件あります』
通知が鳴る音と共に僕の心は情緒不安定になる。
君からだと嬉しいはずなのに何処か不安にもなって。
君からの通知が何よりも動揺させられて。
僕の心は全て君に操縦されていて、翻弄される。
そんなことを気づかず隣にいる君。
君はいつまでこの時間を続けさせてくれるの?
『別れようか』
そんなLINEが来たのは私が
『浮気してるでしょ』
って言ったから。
別れる理由ってことは浮気相手のほうが本気なんでしょ?
なんか悔しいなぁ…
ふう…もう…いいか…
『いいよ、別れよう。』
でも、彼は知らない…
浮気相手が私の妹だってことに。
『一件のLINE』
最近部活来てないけど、大丈夫?
先輩からのLINEだった。体調不良ということにしてあるが、本当は部活を辞めようと思っている。通知が来たのはすぐに分かったけれど、未読のまま、30分ほど返事を考えていた。
実は部活を辞めようと思っています…
私はそれを送ったあと、急いでお風呂に入った。入浴中に通知音が聞こえないように、スマホはタオルで巻いて脱衣室に置いた。
「1件のLINE」
初めてLINEをインストールして、わくわくしながら開いたら、知り合いかもなリストに覚えのない人の名前が。
ん?と思った直後に、その人から即行で「久しぶり」的なメッセージが届いた。
―――怖っ
疑問よりも恐怖が勝ち、すぐブロックした。
いま思えば、どちらでお会いしましたか?くらいは聞いてみてもよかった気がするが…。
運命的でも何でもないLINEの思い出である。
『HAPPY BIRTHDAY!!!』
1年に一度、LINEを送る。
大好きな先輩へ。
彼とは高校生のときに出会った。
電車の駅で見かけた。一目惚れだった。
勇気を振り絞って声を掛け、連絡先を聞いた。
それからたまに話すようになったけど、
恋なのか、ただの憧れなのか…
よくわからなくなって…
ただ時間だけが過ぎていった。
―――そして彼も私も卒業した。
切ない思い出。
でもね、先輩の誕生日だけは特別なんだ。
今も必ずお祝いの連絡をする。
「ありがとう」って言われるだけでいい。
先輩後輩でいられるだけでいい。
先輩が幸せならそれでいい。
今日、私は君に別れを告げる。もうずっと分かってた。君と少しずつすれ違い始めていて、好きという気持ちが薄らいでいたことに。付き合い始めたあの頃は毎日が
楽しくてずっとこうして君といられると思っていた。
だけどお互い仕事や人間関係で苛立ちをぶつけるようになっていって、喧嘩ばかりする毎日でどんどん君と過ごす時間に苦痛を感じていた。
でも、このままじゃいけないと思いながら同棲している
アパートへ帰ろうとした時私は見てしまった。
君が他の女と腕を組んで歩いている所を。
だから、決めた。もう私たちは終わりだ。彼が帰って来る前に荷物をまとめる。荷物をまとめた後、携帯を取り出してLINEを開く。彼と今まで紡いできたメッセージに
一通り目を通して文字を打つ。
「私たちはもうお互いを好きじゃない。だから全部終わりにしよう。今まで楽しかったよ、さよなら。」
涙が流れる。これで全てが終わった。私たちの家に楽しかった思い出を置いてドアを開けた。
『1件のLINE』
「まだ好きでいてもいい?」
そんな文を送ったのだがかれこれもう1時間はたっている。彼は今日習い事も何も無いはずだ。
こんな文送んなきゃよかった、そう後悔しつつ送信取り消しに指を動かすと
「別にいいよ笑笑」
こんな返事が来た。
取り消さなくてよかった。こんなことされたら
また好きになっちゃうよ。
諦めきれないじゃん。
あなたの恋を応援するって決めたのに。
でもいいなら、いいのなら。
まだ君のことを愛おしく思います。
波が引いては近づいてくる。
辺りは闇で満たされていて、砂浜に打ち付ける音だけが辺りに響いていた。
本当に真っ暗だ。都会の海なんて大したことなくて、こんなに暗くないと海で癒されることはないと思う。汚いし、濁ってるし、ゴミあるし。それらを闇が隠して、やっと海だと感じられる。もはや音だけが海だと言っているようなものだけれど。
今夜は星もないし、月もない。海だけじゃなく空気も濁っているここは、何もいい所なんて無い。いや、それは言い過ぎかもしれないけれど。
荒れてるなと、私が一番思っている。理由も分かっている。でも、だからどうという事でもない。解決する訳じゃわないから。むしろもう終わった後だ。
「前なら、明るい海の方が好きだったかな」
もう忘れてしまった。それとも、思い出したくないのか。感情のない呟きは、海に飲まれて消えてしまった。
隣を見ても、海に一緒に来てくれる君はもう居ない。無理に連れてきてたかな。君はまたここに来たりするのだろうか。海に来ても、ずっと隣の君を見ていたことを思い出した。
溢れそうになる感情を抑える。でも直ぐに無理だと察する。
顔が熱い。胸が締め付けられるように苦しい。
でも。いや無理だ。
寄せる波に足で触れる。しゃばしゃばと水が戯れる。海は私を歓迎してくれているように思えた。頬を伝うそれと同じだから、なんて馬鹿なことを思った。
感情が溢れても、声は殺そうと必死だった。声を上げてしまったら、きっともう止まらないだろうから。
膝当たりまで入ったところで、スマホが震えて光る。まるでこれ以上はダメだと知らせるように。
通知なんて、もう気にすることなんてない。君から1件のLINEも、来ることなんてないから。
「別れよう」
え?どうして?なんで?
頭が痛い。吐き気がする
文字が、読めない。
様々な欲望の流れと絶えず繋がり切断する。乳房はミルクを生産する源泉機械であり、口は乳房という機械に接続される器官機械である。エネルギー機械に対して、器官機械があることは、常に流れと切断とがある事である。
このような摩訶不思議で荒唐無稽とさえ思えてくる言説を送ってくる軽佻浮薄の友人がいる。意味を尋ねても答えは返ってこない。彼は語の組み合わせのみに拘っており文が持つ意味を等閑視しているからだ。
水を分解したのならそれは水ではない。
彼は私のようだ。
だが、私は彼だ。
成程、だから似ていたのか。
このようにして、ラインを断絶して繋げていく。
ツギハギの文は醜いフランケンシュタイン。
パトラッシュ眠くなってきたよ。
#107
さよならを
LINEで済ませる
ドライな君
既読スルーの
喪心の僕
お題「1件のLINE」
【1件のLINE】
繋がらなければいいと思いながら〈音声通話〉を押した。
かけてみたものの、言いたいことは特にない。
ただ、確かめたかったのかもしれない。
私にとって、彼にとって。互いが大切な人であると。
はたして電話は切れたのに、耳の奥にまだ音が響く。
それは耳慣れない曲。変わってしまった呼出音。
しばらくの間、スマホを離すことができなかった。
トークルームに〈応答なし〉が残っている。
無かったことにしたいけど、送信取消はできないらしい。
もう一度かける気にはなれなかった。
だって、連続した着信履歴は重いでしょう。
ふと彼が通知をオンにしていたことを思い出した。
〈不在着信〉を見て、彼は何を思うだろう。
心配してくれるかな。それとも、鬱陶しく感じるかな。
考えるほどに思考は悪いほうへ傾く。
用もなく電話をかけるのは初めてではない。
およそ一週間ぶりの電話。繋がらない予感はあった。
かけなければよかったと後悔して〈応答なし〉を消す。
私の記憶からも消えればいいのに。
テレビをつけると、タイミング悪くあの曲が流れた。
いま流行りの。若者に人気。知らない人はいない。
有名なものには興味を持てないって言っていたくせに。
変えるほどの何かがあったと想像するだけで胸が痛む。
しつこいほど確認しないと安心できない、私の悪い癖。
〈明日の夜には帰るね〉そんな嘘を送った。
次は彼氏も連れてきなさいよ、と母が笑う。
予定が合えばね、と適当にあしらって帰路を急いだ。
私にとって大切な、彼にとって私は?
【1件のLINE】2023/07/12
最近、新しくスマホを買い替えた。
機種はよくわからない。けど、明らかに
私が持つには勿体無いぐらいいいスマホ。別に私は連絡ぐらいしかしないし、こんなにたくさんの機能は要らないんだけどな。
-でも、あんなこと言われちゃったら、買うしかないよねえ。
「ねえお母さん、そろそろガラケー卒業したら?」
唐突に、少しスマホに依存している娘からそんな提案をされた。今ですらスマホの画面と睨めっこをしている。
-提案じゃなくて、要求かな。
「なんで?」
理由はなんとなく想像がつくが、一応聞いてみる。
「なんでじゃないよ。今の人はもう大体スマホだよ?なのにお母さんはまだガラケー使ってるし。学校からの連絡だってメールできたりするんだから、連絡来ないとこっちが大変なんだけど。」
やっぱりそう言う話よね。
最近になってメールでの連絡が多くなったり、同年代の知り合いもスマホを使い始めた。ここらで使っていないのも私ぐらいだ。
でも、だからと言って紙での連絡が来ないわけでもないし、今までだってなんの問題もない。今も特に方針が変わる動きも見えない。
娘がいきなりそんなことを言い出すとは思えなかった。
「本当にそれだけ?」
横目で娘の様子を伺う。女手ひとつで育てたからか、重度の反抗期である娘は、拗ねたようにこちらから目を逸らした。やっぱり何かあるのだろう。
「…だって、友達に笑われたんだもん。」
なるほど。そう言うことだったのね。
確かに、ある程度スマホが出回ったこの時代、ガラケーを持っている母親なんて、彼女らからしたらあり得ない話なのだろう。そこまで気にすることなのかとも思うが、彼女はよほど嫌だったらしい。
「はあ…仕方ないわねえ。」
そう言って私は、40を過ぎた今、スマホデビューを決意したのである。
今日は帰りが遅いわねえ。
雨が降る様子を窓越しに眺めながら、1人ため息をつく。
もう少しで本降りになるから、早く帰ってきて欲しいのだが、どうしたものか。私は心配しながら台所へ向かう。その時、何やら無骨い四角い物体が目に飛び込んできた。
そうだ、スマホで連絡すればいいじゃないか。
私はスマホ画面を開いて、緑色のアイコンを押す。娘曰く、スマホを持つ人々は、大体このLINEとやらで連絡をとっているんだそうだ。
わたしはなれないうごきで日本語のキーボードをゆっくり押していく。
「今、どこにいるの?」
30秒くらいかかって、初めての娘へのLINEを送った。少し鼓動が大きくなっているのがわかる。
私はって続けにもう一件LINEを送ってみた。
「雨、結構降りそうだから、早く帰ってきなさい」
-なんの連絡もない。
どうしたのかしら、部活で何かあったとか?
私は何度もスマホへ一瞥をくれる。その時、スマホの振動音が聞こえてきた。
いつのまにか私は携帯を握りしめて画面を開いていた。
-あれ?LINEってどこだっけ?
まだなれてないせいで、返信を見れないのがまどろっこしい。
ようやくLINEを開いて、娘の、最近人気らしいアイドルグループの画像のアイコンをタップする。
画面には、たった一文。
「どもだちとご飯食べてくから、帰り遅くなる。」
たった一文。
たった一件のLINE。
はめあたしはため息をついて、スマホ画面を閉じ、無造作にソファーの上に放り投げる。台所にある写真立てを見つめて。
そこには、まだ若かりし頃の新米ママの私と、その私に抱きついている満面の笑みの小さく可愛い娘がいた。
無題
窓越しに見る世界が私にとって多少安心するものであるならば、ファインダー越しの世界を見るのはどうだろう?
ずっと写真を見るのは好きだった。そこまでのめり込んだ事はなかったが。特に旅行先でファインダー越しに見る世界は素晴らしいと思う。何よりその時の空気感をそのままに好きな様に切り取る自由が心地良い。ただ困るのは、時々自分が何を撮りたいのか何を感じているのかが全くわからなくなるという事。あの無の感覚が私を混乱させ不安になる。
写真を撮るなら私が何か感じたもの、浮かんだイメージに近いものを撮りたい。一番撮りたいのはもちろん彼。空、それから動物、あとは妹夫婦や姪、甥、木と水のある風景とか、ぐっときた人物のポートレートを撮りたい。
つまりこの世の中にある、私の特別好きなものは勿論の事、その瞬間瞬間の自分の中に感じた「素敵」をもっと素敵に撮りたいんだとそういう事だと思う。そしたら生きていくのも、少し怖くなくならないかな?あー..でも隣に彼がいてくれて、一緒に笑えたらそれだけでもパワーを貰えそう。
もし出来るなら、親の写真も撮ってみたい。もうちょっと心身が整ったらそこも考えて見ようと思う。