人さがし

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─一件のLINE─

スマホのバイブ音が鳴り響く部屋。

嫌々上半身を上げ、ぼやけていた目を覚ますため、瞼を強く擦る。

スマホから鳴る音を止め、カーテンを開ける。

そこには昔の自分のように輝く、夕日が見えた。

あの頃はあんなに綺麗な、太陽のような存在だったのかな。

今では真逆の、月のような存在でさ。

明るい太陽や人々の笑い声だけで、自分がとても惨めに感じるよ。

今では笑うことすら出来ない程、つまらない日々を過ごしている。

全ては声が出なくなったあの日のせい。

でも自分のせいでもある。何故なら喉に違和感があっても頑張ってしまったから。

頑張ることはダメではない。しかし無理することもダメである。

何故なら代償があるから。頑張って得た結果の、大きな代償が。

あの日、ライブをした。喉に違和感があったが、結果は成功。

しかしその代償に、声を失くした。辛かった。苦しかった。

でも自分のせいである。後悔してももう遅い。

過去は振り返りたくないが、どうしても歩んできた道を振り返ってしまう。

あの時、この選択をした自分を恨んでいるから。


目を閉じ考えていたら、スマホに一件のLINEが届いていた。

『今日も飲み行かね?いい店見つけてさぁ!』

確かに後悔して、自分を恨んでいるが、その分得た物も少なくはない。

せめてそれを、僕は大切にしていきたい。

たとえ声が出なくても、認めてくれるも仲間が居るから。

7/12/2023, 9:59:08 AM