『1件のLINE』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『一件のLINE』
【がたんごとん】
8:33、私は毎日電車に乗ると、決まってLINEを一件母に送る。意味は特にない。強いて言えば、“間に合ったよ”報告だけど、大学生にもなってこのメッセージを送ることに重要性は感じていない。挨拶のようなものだ。
しばらくすると、母から返信が来る。
【てくてく】
どうやら母も家を出て歩き始めたらしい。
今日も窓を覗くと、次から次へと日常が流れていく。この朝の一件のLINEが、離れていても繋がっている感覚を与えてくれて、なんだか安心する。
ちなみに私は実家暮らしだけれど。
家に帰れば母いるけれど。
あの人に送るLINEの最後は
こう、締め括ることが多い。
「お返事は大丈夫です!」って。
性別関係なく、毎日のように
LINEをポンポン
やり取りする人もいるけれど
もう、それは会話みたいなもんで。
特別な人に送るLINEは
長文になりがちだし
1件のLINEを、送るだけで
少しドキッとしてしまう。
たかが、1件のLINE。
だけど…そこには…私の…
【お題:1件のLINE】
『1件のLINE』
「1件の新着メッセージ」
これがホーム画面に出てきたとき
真っ先に思い浮かべる人は貴方一択。
「2件の新着メッセージ」もすき
なにもかも
賽の河原に投げ捨てたから
LINEも辞めちゃった
だから、
わたしには
友達がいない
そういう
分かりやすく
さみしい人が
この世に
一人くらい
いたっていいよね
【1件のLINE】
#1件のLINE
たった1件のLINEで、その日の気分が決まることがある。
せっかく親元を離れてのびのびと生活していたところに、親からのLINEが入ると途端に気分が萎える。それも、今何をしているのかと聞かれたら最悪だ。別に親元を離れたところで、悪いことなど一つもしていないので知られて困ることはないが、離れたところにいても監視しているぞと言われているような気分になる。
いや、実際監視なのだ。既読をつけて返答すればカメラオン強制の電話がかかってくるし、未読にしていても同様の電話がかかってくる。親の、正直言ってどうでもいい近況を事細かに聞かされ、生活状況について今度は根掘り葉掘り聞かれ、それにうっかり素直に答えるとディスられるので多少なりとも話を盛って少しは創意工夫しているような雰囲気を醸し出さねばならない。ビデオ付きなので別の作業もできず、ただただ時間を奪われる。通話が切れた時にはドッと疲れて最悪の気分になっている。
一方嬉しくなるようなLINEもある。普段は滅多に連絡を取らないものの、友達からのLINEが来ると嬉しい。その日は一日中ハッピーだ。幸せよりハッピーという言葉の雰囲気の方が近い。スーパーに行ったらちょっとデザートを買ってしまうくらいには嬉しい。別に友達と話すのは嫌いじゃないから、毎日のようにやり取りできたらそれはそれで楽しいだろうが、いかんせん私の生活には話のネタがない。時たまやってきたLINEに返信して、近況を報告するくらいがちょうど良い。
まぁ、大抵マイナスな1件の方が多いから、定期的にLINEをアンインストールしたくなる。1件のLINEによって気分をかき乱される日々から、早く脱したい。
【1件のLINE】
通知を見ると1件のLINEが来ていた。ボイメ。カンカン鳴る音と踏切を走る電車の音にさようならと呟く少女の声。間に合わなかった。最後にとんでもないトラウマ残して消えようとしてくれるじゃないか。そろそろ連絡が入る頃。電話の着信音、おおよそ予想通り。なんで、少女が。
「生きているんですか、場所は。はい、すぐ行きます。」
飛んでいくと眠った少女がいた。
「心配させてくれる。」
聞こえているのか居ないのか分からないけれど手が少しだけ動いた。
「おはよ。」
通知を見ると1件のLINEが溜まっていた。もう寝る時間だよ、って。
『1件のLINE』5
開けるのがめんどうなLINEがひとつ。
焦点の合わない指先で開けてみる。
そこにあったのは画像がひとつ。
なんだと思い開けてみる。
要約すると催し物の知らせのようだ。
演目日時場所天気なんでも書いてある。
天気は必要だったのだろうか。
あまり興味は引かれなかったが言ってみる。
当日の天気を示すところに興味を持った。
参加すると返事を送る。
驚く相手、送る相手を間違った?
しばらくして返事来る。
失礼ですがどちら様でしょうか。
お前からLINEを送られたものだ。
いえあなたには送られるわけが無いのですが。
LINEは来た?返事はした 。
どうにも食い違う両者の意見。
気が悪いのは送られた側か。
そもそもこの催し物はなんなんだ。
間違いようがないだろうこんな概要。
祓: 0月0日(雨)00:00
これだけかかれたメモ1枚
理解するのに時間は使わない
それなのに未だ続く食い違い
焦る必要は無い
送り間違い和解した。
私が引き下がった。
当日になったらコソッと行くさ。
足りない人魂の代わりにさ。
人間がどのようにしてLINEを送ったのかは
わからんが
返信した時の慌てようが手に取るように見えて
滑稽だった
たまには波長を合わせて驚いてもらおうか
スっと現れた通知
「祖父の一周忌」という言葉
父の死と共に疎遠になった親族
行動力のない自分
既読が付くまで
あと○日
「1件のLINE」
1件のLINE
普段友だちからLINEがくることはあんまりない。
毎日みると、広告ばかりのLINE。
ある夜、LINEきてるって思ってみてみた。
学生時代仲良かった子からだった。
文面は、久しぶり。ごめん、すこしお金貸してくれない?
意味がわからない。
なんで?と返したら、入り用ができてとしか言わない。
そんなことでお金貸したら、巻き込まれそうで怖かった。
ごめん貸せないと返事した。
わかった👍と絵文字付きで返ってきた。
ますます怪しくて仕方がない。
次の日、違う友だちから○○からLINEきた?とLINEがきた。
来た内容を話すと同じ内容で色んな人に聞いてるみたいだ。
お金の入り用の理由をきいたら、彼氏の借金の保証人になってしまったみたいだ。
その後、その子はどうなったのかはわからない。
LINEもそれきり来なくなった。
「1件のLINE」
俺には1つ年下の幼馴染がいる
昔から何をするにもいつも一緒で
妹みたいに可愛がっていた
部活終わりの帰り道
彼女から1件のLINE
『聞いて!私彼氏ができたの!』
胸がズキリと痛んだ
どうして今さら気づいてしまったのだろう
赤い夕日が影を落とす
俺は深呼吸して返事を打ち込んだ
『おめでとう』
俺の初恋は始まる前に終わってしまった
1件のLINE
いつものようにベッドに寝そべりスマホをだらだら眺めていたときだった。
『明日の夜、ヒマ?』
そのメッセージで体を飛び起こした。最低限の用件だけで絵文字の一つもない。
だけど、いつだって私を簡単に舞い上がらせる。
なんの用事だろう。友人からのLINEだったら用件を聞くのは参加を決めるかの判断材料にするだけだが、彼からのLINEは違う。彼の誘いに対して断るという選択肢はない。
「ヒマだよ!」
と勢いのまま返したくなるが、ぐっと踏みとどまる。そんな軽率マネはしない。私は彼とただ遊びたいだけじゃない。好きな彼に好きになってもらい、恋人になりたい。できればその先も。
「一応空いてるけど、なに?」
考え抜いた結果、シンプルが一番だと判断した。送ったばかりなのに、まだ返信来ないのか、既読はついたかばかり気になってしまう。文面も読み返してみると少しそっけない気がする。部屋の中でそわそわ動き回っていると、ピロンと軽快な通知音が鳴った。
ベッドに放っていたスマホに飛びついた。
『花火しようよ、二人で!』
ぐっとガッツポーズをした。溢れ出る喜びでぴょんぴょんと部屋の中で飛び跳ねると、一階から静かにしてよ、とお母さんの声がする。
今はそんな場合じゃない。ついに二人で遊ぶ日が来たのだ。明日はなにを着ていこう。せっかくだから最近買ったリップもして行こうかな。
明日は人生の最高の日になる。
シンと静まりかえった部屋に1件のLINEが届いた
忘れていたのだろうか
記憶からあえて消していたのだろう
か
名前を見てしばらくして思い出す
1度思いたずと過去の事が芋ずる式に思い出してきた。
いい事も悪いことも
昔に縛られてはいけないよ
過去は変えられないから
未来もしくは今を生きようよ
だから自分は
LINEをやらないのかもしれない
過去を見ないために
「元気?」
もう動くことはないと思っていたトークルームは、一件のラインで半年ぶりに日付が更新された。
「あ、既読ついた」
「そりゃつくだろ」
「ブロックされてると思ってた」
「しねぇよ。するわけねぇだろ」
ぎこちない会話のキャッチボールを繰り返したのち、この機会を逃せば、きっとまたいやそれこそ未来永劫に話せなくなってしまうと思った俺は「少し話すか」と通話を切り出した。
「え」
「都合悪りぃか?」
「いや違くて上手く話せないかもしれないから返答に困った」
「俺が適当に話すから別にいい」
「できないでしょ。口下手じゃん」
「舐めんな。話してない間に俺だって成長した」
「こっちはなんも変わってない。いやマジで上手く話せなくて黙ってばっかになるかもよ」
「だから構わねぇよ。これを機にまた頻繁に話して慣らしていけばいいだろ。……もういいからかけんぞ」
断われるのは怖くて半ば強引に通話ボタンをタップする。一回、二回と重なっていくコール音を聴いていると、そのコール音に合わせるように脈を刻むスピードも早まっていく気がした。五度目のコール音のあと受話器から聴こえてきた控えめな「もしもし」に熱くなる胸。懐かしさと嬉しさが入り混じって変な感じだ。きっと今度は失敗しない。今度こそ上手くやる。固い決意を胸の中で唱えながら頭に浮かんだ言葉を紡いでいく。崩れてしまった関係をゆっくりと時間をかけて修復していきたい。足りない部分は補い、隙間を無くすように縫い合わせる。かつてこいつが俺にそうしてくれたように今度は俺がこいつのことを満たしてあげたい。ただそれだけだった。
「ねえ、怒ってないの?」
「お前の方こそ」
「怒るわけない」
「だったら俺も同じだ」
「……ありがとう」
「……あのとき、逃げてごめん。弱くてごめん」
「それはこっちも同じだから。なんだかすれ違っちゃったみたいだね。でもさ……なんていうの……その、燕と同じで元の場所に還るんだね」
「なんだそれ」
「詳しく聞きたい?」
「ああ、ぜひ聞かせてほしい」
「1件のLINE」
何が好き?どんな人がタイプ?
今までどんな人を好きになった?
今…好きな人はいますか??
あなたに聞いたあと私はスマホの画面を閉じる。
私を好きと言って欲しい。でも好きな人がいたらどうしよう。なんて返ってくるのかな。不安とドキドキが彼からの
返信を待つ時間は、まるで時間が止まっている。
通知の音がなったときも恐る恐る画面を開く。1件のLINEの通知…。返信きたのかな…。なんて送ってきたのかな。
スマホのロックを解除して、ゆっくりスライドする。
…なんだ。公式アカウントか。深いため息をしてまた彼からの返信を待つ。まだ既読がない。
彼の既読を待ちながら、今までのLINEを振り返る。
最後まで見たあと、ふと彼からの返信が来てしまった。
お前が好き。たった1件のLINEでも彼からのLINEは
私にとってかけがえのない存在だ。
1件のLINE
「電話をしよう」
LINEがきていた。
月曜夜中の22時。
試験の準備で忙しい私に気遣って、
彼はきまって週初めの夜遅くに連絡をくれた。
一月の間の約束を律儀に守って。
待っていた。
1日、2日と数える時間はあまりにも長くて、
もしかしたらもう二度と
君と繋がることはないのかもしれないと
私はきまって週終わりに涙を流した。
それでも月は繰り返し同じところへ戻っていた。
今日、話せたら言おうと思っていたことがある。
詰まることのないように何度も頭で唱えたその言葉。
「好き。」
と、言われた。
何度も頭の中で唱えていた。
言葉は、脳から口へつながるどの神経の途中で
息を切らしたのだろうか。
「私も、」
違う、ちがう、違うよ。
わかっているはずだ、
同じ言葉を吐き続け、月が沈み目を覚まして、
私はあることに気づくんだよ。
彼の戻る場所が太陽にあるということ。
光がさして、私と彼と人々が明瞭な輪郭を取り戻したとき、
私の後ろに落ちる影は彼の影の中にいないこと。
彼の影の外側には別のなめらかな輪郭が見えていた。
夜になると、
影は暗闇にとけてしまう。
だから、見えなかったんだ。
見ないように、口にしないように、
そうしたら本当に見えなくなる気がしたから。
でも、幾度となく訪れる朝に説得されたのだ。
もう、終わりにするべきだと。
誰かの輪郭に住む彼を好きな私と、
その輪郭に住まない私を好きな彼。
もし彼と誰かの輪郭が重なっていなければ、
それは私の好きな彼といえるだろうか。
ときどき住む私の宿が彼のゲストルームなら、
彼の宿は彼女の暖かいリビングか隅々まで清潔に整えられたベッドルームだろうか。
彼女の家に住む彼の宿を借りている。
そこは本当に暖かく静かで穏やかだった。
朝になると入ることのできない、とても素敵な…。
私も誰かの宿になりたい。
誰かもまた私の宿になって。
そういう夢を見続けている。
今夜は夢を見る前に、言わなければ、
「君がいて本当に良かった。
妻には言えないことも何故か君には話せてしまうんだ。」
「ええ、そうですか。それは、よかった。」
「今週も、君と話したいことがたくさんある、
君と話した次の日に娘が…」
口を開いたまま思考が止まっていた。
長い間待ち続けたこの一週より長い、静寂に
全身が包まれて、動くことなどできない。
手の中で光る、画面に並んだ吹き出しは
どれも形を変えていない。
送られた最後の一文は、変わらず淡白に味気なく
要件だけが綴られている。
それなのに今日のこの、7月11日の彼からのLINEは、
私の心に入り込んで、二度と出てはいかない。
彼女のなかに彼が宿り、また彼のなかに誰かが宿る。
私は…、
ラインなんて面倒。
メールで十分じゃない?
なんか、写真とかいるし、名前も登録したやつになるから、フルネーム?名字?名前だけ?あだ名?
と、思ってから20年。
今ではラインがならない日はない。
広告だったり広告だったり広告だったり。
子育てしてる間こそ、ママ友や子供の部活やらで連絡のツールのいかんを発揮してくれた。
今となっては昔の新聞折り込みちらしのように広告を受け取るツール。
ラインごと消しても生活に問題ないと思う。
ママ友は所詮ママ友。
年賀状を送り合う程度の友達とさほど変わらなくなった。
それでもたまにラインのアイコンを眺めて、誰かの写真が変わったのをお便りのように見るため。
過去の友達の日常をチラリと見たいが為。
「お元気ですか?久しぶりにお会いしたいです。」
の一通のラインが送信できない。
筆不精という言葉を聞かなくなったけれど、ライン不精というのかな。
スーパーなんかでバッタリ知人に会えば
「久しぶり!今度お茶しよう!ラインするね」と、どちらともなく言う社交辞令。
仕事でもしたら違うのかな?とも思うけれど、今更、働いて友達作ろうとも思わない。
取り立てて誰かに相談しなきゃならない事もない。
ピコンとなったラインをみると、子供から写真が一通。
こういうのがあるからラインをやめられないのよね。
ようちゃんだいすき
ってきたら大喜び
(*゚∀゚人゚∀゚*)♪
しちゃうわ☺️
tsutsuから来たら泣いちゃう。
。゚(゚´Д`゚)゚。嬉し泣
笑
#1件のLINE
1件のLINE
私は私が生まれてきた理由が何一つ分からなかった。
私は私がこの世界で最も憎かった。
このなよなよしたとこも、メンタルの弱さも、運動神経の悪さも、勉強ができないところも。嫌いだった。
ただ、そんな私にも毎年1回の楽しみがある。
それは私の誕生日。
周りにとってはなんてことない普通の日で、私だけが浮かれる日。
そんな日に、親から毎年1件LINEメッセージが届く。
生まれてきてくれてありがとうだの、可愛らしいだの、優しいだの、頑張ってだの、あなたらしくいなさいだの、ここの家族になってくれてありがとうだの。
親の《愛》が、私の目に映る日。
だから大好き。
1件のLINE(2023.7.11)
「ええー…」
目の前で閉まったドアと、無情に過ぎ去っていく電車。思わず気の抜けた声が出る。遠くの方で鳴いている蝉の声が、より虚しさを際立たせた。
時刻表を確認すると、次の電車は20分後。まったく、田舎ってのはこれだから…。
仕方がないので、ホームの寂れたベンチに腰を下ろして、何の気もなしにスマホを見る。
「あー…めっちゃ通知たまってる…」
返信が億劫だからと未読のままにしていたLINEが21件。それを1件ずつ確認して返信するのは面倒だが、20分という微妙な時間を潰すのにはちょうどいいだろう。
死んだ魚のような目でぽちぽちと返信していって、残り1件となったとき、私はぴたりと指を止めた。
そのメッセージが送られてきたのは、1年前の3月。私が高校一年生のときだ。並大抵の人なら、それほどの期間未読スルーするような関係なんて、余程険悪か疎遠なのかと思うだろう。まぁ、ある意味疎遠というのは間違っていないかもしれない。このメッセージの送り主は、既にこの世にはいないのだ。
1年前、とてもくだらないことであの子と喧嘩した。きっかけはなんだっただろうか…もう、あまり覚えていない。あの日、あの子と口論になって、喧嘩別れをして…次の日、あの子のご両親からの電話で、もう二度と仲直りできないということを知った。交通事故だったらしい。帰宅途中、家の近くの横断歩道を渡ろうとしていたあの子に、信号無視したトラックが突っ込んできて…即死だったそうだ。あまり詳しくは、聞けなかった。
メッセージの送信時刻は、あの子が亡くなる10分前。きっと、家路の電車の中で打ったのだろう。あの子の訃報を聞いてからその通知に気づいて、内容を見る前に通知を消してしまった。もしそのメッセージを開いて、読んでしまったら。既読をつけてしまったら。あの子がもう、返信などできないのだということを嫌でも受け入れなければいけないから。
けれども、きっともう、潮時だろう。この一年、嘆いたし、悲しんだし、憤った。そして、諦めがついた。もう、あの子はどこにもいない。私が既読をつけたってつけなくたって、帰って来はしないのだ。
震える指をなんとか動かして、あの子とのチャット画面を開く。
『ごめん。私が言いすぎた。明日また、一緒に帰ってくれますか?』
もう枯れ果てたと思っていた涙が、ひとつこぼれた。短くて、大した内容でもないメッセージ。しかし、当たり前だが、このメッセージを送ったときのあの子は、まだ明日があると思っていて、私と仲直りして、また明日一緒に帰りながら、笑い合えると信じて疑っていなかっただろう。無機質なデータの塊の中で、あの子がまだ微笑んでいるような気がした。
きっと、既読は永遠につかないけれど、私は一年越しの返信をする。
『ごめん。一年も放っておいてごめん。私の方こそ言いすぎてごめん。一緒に帰れなくて、ごめん。』
未読メッセージは、0件になった。
言葉には、霊が宿る。言葉には、力があり、重みがある。見えるものでは、決して無い。しかし、多くの人々が計り知れないほどの永い時間を掛け、変化させ続けて来たものだ。
謂わば、言葉とは其の土地の歴史であり、文化であり、様々なものの根底なのだ。
今の時代は、遠く離れていても誰とでも連絡できる。
その言葉の相手と自分自身に与える影響力と重みを、気軽に連絡することが出来てしまうからこそ、実感することは難しいと思う。
言葉には、人の人生を変える力がある。
たった一言で…人を殺めることも、人を救うことも、出来てしまう。
言葉は、『諸刃の剣』という事実を決して忘れては無らない。