『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
⚠︎直接表現はありませんが、下世話な話が苦手な方は読まずに飛ばして下さい。
香り立つ水の目には映らぬ厚化粧
興奮材料にもならないソレは
身の回りを飛ぶ羽虫の様に煩わしく
関心すら湧かない指に胸元をなぞられ
恥らいもなく下世話に腰を揺らし
長ったらしい髪しか纏わぬ相手をすり抜け
無駄に広い寝具へと閉口を保ち身を放った。
心底どうだっていい
一時の快楽で現実逃避が出来るなら
それ以外は興味も無く、望みも無い。
粘度の高い嬌声が耳元で嫌に響く度
蛾の様に鱗粉めいた香りを振り撒き
布の上で乱れ広がる長髪に嫌気が差し
顎下を擽る細い指は終始、触覚に見えていた。
見下げ果てている冷めきった視線にも
虫では気付けないだろうと内心合点がいく。
関係は時計の針とは真逆に後退する
気持ちがいいと声を張る羽虫
互いに独りよがりが過ぎるなと嘲笑し
一方的に熱の薄れる私の体躯を
囲み施錠しようとする腕の重み。
あぁ、馬鹿だな
散々言ったじゃないか
恋慕なんぞは面倒だと。
目を刺す赤い口紅が恋を語る前に
私の口は次なんて無いと告げていた。
ー 香水 ー
自分の後悔
あなたの後悔はなんですか?
人には1つぐらい後悔があるでしょう自分もあります
香りは過去の人の記憶を呼び起こす。
香水の香り、柔軟剤の香りもそう。
良い思い出だけならよかったけど
思い出したくない記憶もある。
それもあってか
香りの強い人はちょっと苦手だ。
香水…
空のエレベーター
乗り込むと柑橘系の香り
あの人の香りだ…
そして、あの娘の香りでもある。
あの娘はあの人の恋人だった。
しかし、別の人の妻となった。
あの人も別の人の夫になった。
ふたりは同じ職場で働いている。
私は…
二人がうらやましい。
いろんな意味で。
私は自分の香りを持たない。
不細工だと言われた。
だから、可愛い顔を造った。
そうしたら、整形だの何だのと、更に詰られた。
臭いと言われた。
だから、好い馨りの香水を纏った。
そうしたら、匂いがキツイ、なんてもっと罵られた。
性格が悪いと言われた。
だから、人に優しくした。
そうしたら、偽善者、だと嗤われた。
自我がないと言われた。
だから、存在を主張した。
そうしたら、憐憫の念を向けられた。
噫、アンタら全員、死んじまえ。
『香水』
彼の声が好き透き通るような美しい声
彼の表情が好き穏やかでにっこり微笑んでる
彼の性格が好き気遣いが出来て皆に好かれる
彼が好き
初めて私に耀を灯してくれたから
あぁ
彼はどんな声だっただろう。
あぁ
彼はどんな表情をしていただろう。
彼は今どんな身体に変化しただろうか。
彼は私が知っている性格のままだろうか。
彼は今どんな人なんだろう。
新月
人通りの無い道
ぽつんとある街灯とベンチ
とっくに廃線となった線路
木が生い茂った駅
この駅から離れられないと私。
こんな夜は嫌いだ
動物の気配もなく
月明かりもない
街頭が微かに光ってるだけ。
愛しい彼
もうとっくに死んでしまった彼。
私が電車なんかに轢かれなければ
彼と家庭を作ったのに、、、
彼が精神を病むことも無かったのに
ごめんなさい
もう顔も思い出せない
あれから何年経ったんだろうか
今文明はどうなってるかな?
彼が気に入って使ってた鈴蘭の香水
ふんわりと漂う匂い
そのふんわり漂う匂いは
今でも思い出せる唯一のもの
彼は私を迎えに来てくれないのかな?
もう、辛いよ
彼が好き。
もう朝が来る
このまま死んでしまおうか
早朝
花と線香を持った小さな男の子とおじちゃん
二人がお供え物をしてくれて帰る時
微かに鈴蘭の匂いがした
縛りつけたかった
どこにも行かないように
でも僕は臆病だから
そっと棚の奥にしまい込んだ
ずっと眠ったまま
いつか見つけておくれ
_香水
あ 困りごと?
い なんで分かんの
あ 変わるから
い 何が?
あ 空気って言うか匂い
い そうなん?
あ 人それぞれのってあるじゃん
い ま
あ 意外と敏感なのよ、人って
い …かもな
『香水』
香水
私の大好きな香水。
上品で、どこか華やかなこの匂いが好きだった。
ある日のバイト終わり、
疲れて重い身体を奮い立たせ歩いて帰っていた。
どこからともなく香ってくる。
私の大好きな香り。
その瞬間、
バッッッ
後ろから口をハンカチで抑えられる。
息が出来ない。苦しい。
もう死ぬのだと、はっきりと思った。
20代〜30代
180cm以上
細身、黒マスク、
逃亡中
この男に殺されかけた。
いつ殺されるか分からない。
それまで、いやこれからずっと、
私は犯人がつけていた香水、
大好きだったあの香水に怯えなくてはいけない。
どうしてなの?
バリーンッ
「もうこんな香水、要らないっ!!!」
あの人からは
私を
優しく包み込んでくれそうなくらい
甘い
恋の香りがする
香水
一瞬で恋をさせてくれる
魔法の香り…それが香水
あなたはどんな香りに
包まれたい?
素敵な恋の魔法…
胸の鼓動が高鳴るわ…
夢のよう…うっとり…
香水
職場ですれ違う、
愛しい貴方。
他の皆に気付かれない様に、
視線を交わし、微笑みます。
ふと、香る、
貴方の愛用する香水の香りに、
私の胸は、痛くなります。
昨夜、貴方が、
私を抱き締めて下さった時も、
この香水の香りがしました。
私はそれが幸せでした。
優しい貴方の、甘い香り。
密やかな、私と貴方の、
蕩けそうな逢瀬を彩る、
貴方の香水の香りが、
私の胸を締め付けるのです。
そして、今夜も。
私は貴方の香りに包まれて、
幸せな時を、
過ごせるのでしょうか。
でも、その時は。
昔の恋人との思い出は、
全て忘れて、
私だけを見詰めて下さいね。
1:香水 16
私の隣に座るあの子は、いつも良い香りがする。
目の前を通るたび、制服が揺れるたび、微笑むたびにローズ系の少し強い花の匂いがする。
最初にあの子を見たとき、一生関わりのない世界にいる人だと思った。
長いまつげに大きい瞳、綺麗な二重に整えられた眉毛。小ぶりの鼻に形の良い唇が魅力的で、鴉の濡れ羽色のような髪に綺麗な体のライン。すべて女なら欲しがるようなパーツで構成されていて、まるで子供の頃憧れたお姫様が生きて歩いているようだった。
一瞬で人々の目線を奪うような人と私は、きっとそれぞれの世界を生きたままこの校舎から羽ばたくんだと思っていた。
高校に通って数ヶ月、変わらずあの子と私は特に関わりがないままそれぞれの世界を生きていた。
話しかけたい気持ちはもちろんあったけど、もしそれで気分を害したらと思うと怖くて実行できなかった。
小さい香水スプレーを押す姿がまるで絵画のようで、それをこっそりと見るだけで幸せだった。
でも、ある日あの子が話しかけてきた。
私のスマホに映るゲーム画面を見て、「ねぇ、そのゲーム好きなの?」なんて綺麗に笑顔を浮かべながら。
あぁ、あの子の瞳の中に私がいる!!!!!
全身の髪の毛が浮かび上がるような、顔を鷲掴みされているような不思議な感覚になった。
どうしよう、黙ったらきっとあの子は離れていってしまう、でも気安く話しかけるなんて出来ない。でも、あの子と話せる機会なんてもう無いかもしれない。
私はしばらく黙った末、少し震えた声で返事をした。
「うん、好き。○○ってキャラが特に好きで、あそんでるの。○○さんもこのゲームやっているの?」
「やってるよ。わたしの周りでこのゲームやっている子、全然見ないから○○ちゃんがやってるなんて嬉しいな。ね、○○ちゃんさえ良かったらフレンドになろうよ」
あの子はスマホを操作してゲーム画面を表示したあと、私の隣の席に座ってスマホの横で所在なさげに置かれていた私の手を
優しく包み込み、また綺麗な笑顔を浮かべてきた。
あの子が私の手を触っている
私の顔を見て、微笑んでいる
顔に熱が集まっていくのを感じる
手だって震えている
断らなきゃ、私みたいなのはお姫様の周りにいてはいけない
もっと綺麗な人達がお姫様の周りにいないといけない
なのに、綺麗なこの人からもう目を離せない
瞬きだってろくに出来ない
あの子のローズ系の香りが蛇のように絡みついてくる
「わたしのこと、ずっと見ていたでしょう?」
視界に入ったあの子のスマホは、インストール直後のゲーム画面が眩しく映っていた。
「ねえ、神棚に上げてある箱、なに?」
朝食の納豆を無心でねりねりしていた私に、母が不思議そうに声をかけてきた。
しかしそう問われるであろう事は、既に分かりきっていた事だ。なので私は答えた。
「あれは……私の青春の残滓よ……」
「……朝からかっ飛ばすじゃん……。納豆ねりながら……」
呆れたように言いつつ、母も席に着くと器の納豆を練り始めた。
私には、何よりも愛する『推し』が居た。『彼』はとあるソシャゲのキャラクターだ。
所謂『乙女ゲーム』というジャンルで、主人公(プレイヤー)はゲーム中の数多のイケメンから言い寄られたり言い寄られなかったりする。
そのゲーム中のキャラに、私はガチ恋に近い思いを抱いていた。
彼のグッズや、ゲームの追加シナリオや、彼に関するゲーム中のアイテムなどに、惜し気もなくお金を注ぎ込んできた。当然のように私の部屋には、彼のグッズを集めた『祭壇』がある。
その費用は、きちんと自分でアルバイトをして賄っている。額に汗して得た金銭を彼に突っ込むことに、悦びすら感じていた。
そんな彼の新グッズの情報に、私が飛び付かない筈がなかった。
新しいグッズは『香水』だ。
ゲーム中でもよく、彼からは良い香りがすると描写されていた。
私のみならず、SNS上のファンたちの声も「待ってました!」というものが多かった。分かる。
しかも有名な化粧品のメーカーのタイアップだ。期待値爆上げだ。
化粧箱入りで、瓶も凝っていて、専用アトマイザーまでついて、お値段なんと約三万円! 「安ぅい! 社長〜♡」いや、フツーに高いわ。
しかし買わないわけにはいかない。この為にバイトをしてお金を貯めているのだから!
完全受注生産なので予約をし、注文確定のメールを受け取り、私はその日を楽しみに待っていた。
「……言っちゃったよね。『え、クッサ!』って……」
そう。
あんなに楽しみにしていた彼の香りの香水は、私の好みに全く合っていなかった……。
「臭かったんだ……」
母は「香水が臭いとか草」などと真顔で言っている。だが笑い事ではない(真顔だが)。
それ以来、ゲームをプレイしていても「こんなカッコいい事言ってても、この人臭いんだよなぁ……」と思ってしまうようになった。そしてどんどんと熱が冷め、あれ程に暇さえあれば起動していたゲームにログインしない日もザラになってしまった。
部屋の祭壇も、彼の顔を見る度にあの匂いを思い出してしまうので、日に日に縮小されていき、今では跡形もない。
「つまりあの香水は、私に『現実を見なさい』という神からの啓示だったのよ……」
「神様、そんなに暇じゃないと思うけど、まあそうなのね」
「そう。これからはバイト代がまるまる浮くと思うと、色々買いたいものとか買えるから、神様には感謝しとこうと思って」
「一番くじだって、好きで買ってたんじゃん……」
お母さん、正論はやめて。娘の心にクリティカルすぎるから。
「昔から言うじゃん。『女心と馬肥ゆる秋』……って」
「初めて聞いたけど」
「つまり私は、ひとつ大人になったの。そういうことよ」
ふぅん、などと、母は気のない返事をしつつ味噌汁をすすっている。
私も食卓の焼き鮭を箸で解しつつ、あの香水が味噌汁と焼き鮭と納豆の匂いだったら好きになれたかもしれないのに……と、詮のないことを思うのだった。
お題『香水』
香水買ってよ
マーキングして
興味ないって顔しないで
ちゃんと私に執着して
「香水、いい匂いだね。買ったの?」
「ああ、いや。うん。買ったよ」
私は知っている。
彼は香水なんて買っていないということ。
彼が動くたびに香る香水は女物だと言うこと。
出張から帰った日は必ずこの匂いがすること。
ああ、この人と早く別れないといけない。
あの人の香水はなんだったのだろうか
すれ違うときのあの匂いは
忘れられなくて
夢の中でも
ぼんやりと窓を見ていたあのときも
思い出しては消えていく
結局匂いだけでは検索できなくて
自分ではあの匂いは言葉にできなくて
今もあの香水の名前を知らない
香水
昔は流行なんて気にしない君だったけど、
今はネックレスに、香水に、ピアス。
都会に染まってしまった君は、
匂いも横顔も雰囲気も、
何もかもが違った。
それなのに、
私の脆い心はまだ、
折れることはなかった。
私の事を想っててくれたのは、
優しい優しい君だけだったんだもん。
だから早く隣の女じゃなくて私にしてよ。
忘れられない香りがある。
その人の名前は忘れた。
顔もぼんやりとしか覚えていない。
それは、みずみずしいフルーツのような、少し甘く澄んだ香り。
初夏に出会ったその香りは、大人の自由な感じがした。
今までにも、過去はいらないとか思い出は捨てたなどと書いてきた。その人の思い出も痕跡も
何も残ってはいない。
でも、香りの記憶だけは今も消えない。
_______________
せっかくの「香水」というお題なので、もう少し。(延長戦)
少し前に海っぽい香水を買った事を書いたけど、私は香水が好きで時々買うんですが、結局好きな香りばかりを買ってしまうんです。香りの好き嫌いが結構あるんで、あまり冒険はしないんですね。普段はフローラルやフルーティ、あと紅茶の香りが多いので、ちょっと違うタイプのものを、と思っての先日の海っぽい香水だったんです。
ジョーマローンのウッドセージ&シーソルト。
これは単体で使ってもいいのですが、重ね付けもお勧めですよ、という事なので、最近は色々試しているのです。
香水のランキングでよく上位にいるアレ。
私には世間が絶賛する程の好きな香りではないのですが、このウッドセージを重ね付けすると、なんかまろやかになるというか、海に咲く花みたいで良い感じになるのですよ。
例えるなら、カレーを作る時の最後に牛乳を入れるとまろやかになる事に似てるでしょうか。(多分違う)
そういう訳で新たなる発見を求めて、日々実験してるのです。
もしも興味を持たれた方がいらしたら、重ね付けの相性の良い香水を恋人同士で付けてみては如何ですか。新しい世界が見えるかもよ。
「キッツ……」
臭う。強烈な花の匂い。ハッとして、思わず出た悪態を急いで飲み込んだ。居間で寝転ぶ母から香るものだ。そうに決まっている。こんな悪態を聞けば、直ぐにでも頬を張りにくるだろう。だが幸い、母は寝息を立てていた。派手な服を着たまま、派手な化粧を落とさないまま。
母は美しい。少々、毒々しい見目と態度だが。同年代の女性に比べたら美人である。もっとも、周囲の比較対象の女性達は第一子を授かり、産んだ直後であることが多い。慣れぬ育児に翻弄され、自身の見目を気遣う余裕のない人々だ。そのような人々と、見目に全神経を注いでいるような女では土俵が違う。
「……ただいま、母さん」
返るはずもない返事を期待して、声をかけた。部屋に充満する、この匂いは嫌いだ。多分、大人になっても嫌いなままなのだろう。
だが、母に成り得ぬ女の芳香を、いつか私も身に纏うだろう。霧中の未来であれ、それだけは確かだ。