黒山 治郎

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⚠︎直接表現はありませんが、下世話な話が苦手な方は読まずに飛ばして下さい。












香り立つ水の目には映らぬ厚化粧
興奮材料にもならないソレは
身の回りを飛ぶ羽虫の様に煩わしく
関心すら湧かない指に胸元をなぞられ
恥らいもなく下世話に腰を揺らし
長ったらしい髪しか纏わぬ相手をすり抜け
無駄に広い寝具へと閉口を保ち身を放った。

心底どうだっていい
一時の快楽で現実逃避が出来るなら
それ以外は興味も無く、望みも無い。

粘度の高い嬌声が耳元で嫌に響く度
蛾の様に鱗粉めいた香りを振り撒き
布の上で乱れ広がる長髪に嫌気が差し
顎下を擽る細い指は終始、触覚に見えていた。

見下げ果てている冷めきった視線にも
虫では気付けないだろうと内心合点がいく。

関係は時計の針とは真逆に後退する
気持ちがいいと声を張る羽虫
互いに独りよがりが過ぎるなと嘲笑し
一方的に熱の薄れる私の体躯を
囲み施錠しようとする腕の重み。

あぁ、馬鹿だな
散々言ったじゃないか
恋慕なんぞは面倒だと。

目を刺す赤い口紅が恋を語る前に
私の口は次なんて無いと告げていた。

ー 香水 ー

8/30/2024, 8:53:37 PM