『風に乗って』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
風に乗ってあの世界に行ったら君に会えるかな…
僕だけに笑いかけてくれる君に…
自分のことはそっちのけで僕のことばかりを考える君に…
あの日…もし僕と君の位置が逆になっていたら……
僕はあの世界に…
君は両足と片腕を失うだけだったかもしれない……
なぁ……美月……
僕は…もうすぐ君のもとに行くようだよ………
今更だけど…遅くなってごめんね……
僕は……ずっと君にあんな態度とってたけど……
本当に……君を………とても愛していたよ…………
ピピーーーーーーーーーーーーーー
私はこの病院に務めて10年だがこんなに胸を締めつけられるような死に方をした人に初めて会う……
彼女を目の前でなくし自身も両足と片足をなくして……
なのに…そんなものはちっとも悲しくないと言わんばかりに…毎日満遍の笑みを浮かべている……
最初は本当に何も感じていないのか……と思ったがそんなことは勘違いだった……彼の死に顔を見て分かる………
彼は今……とても……とても……幸せそうだ………
彼から流れ落ちるその涙は真珠のようにとても綺麗だった…
「風に乗って」
風に乗って、
あの遠くの地に逝きたい。
14風に乗って
私の父親はくだらない作り話をよくする人で、中でも特別にくだらなかったのは「うちのハムスターは竜巻に乗って飛んできたのを拾った」と言うものだった。ホームセンターで衝動買いか何かしたのを、適当に誤魔化していたのだろう。実際、隣町で小さな竜巻が起こって畑がダメになったという出来事の直後だったので、幼かった私はそのデタラメをすっかり信じた。もう竜巻に飛ばされないようにと大切に育てたハムスターは2年ほどで死に、20年後には父も死んだ。最後の最後までデタラメを言うくせは直らず、病気の進行なども誤魔化して、元気なフリをしながらさっさと入院して、最後の最後まで与太話をしていた。葬儀の日はよく晴れていて、海辺の火葬場から細く昇る煙はまっすぐできれいだった。ふいにその煙が竜巻のように渦を巻いて、ハムスターを連れてくるところを想像した。もちろんそんなことは起こるわけはなく、白い煙はただ昇って消えた。風のない、のどかな水曜日だった。
風に乗ってどこまでもどこまでも遠くへ行きたい。行き着いた先は私のことなんて誰も知らなくて興味がなくて。
だだっ広い草原で風に吹かれながら、草木が靡く音を聞きながらひたすら時間をドブに捨てたい。
溜め息とともに吐き出した白い煙が、風に揺られてすぐに溶ける。とんだ恥を晒したものだ。羞恥心というよりは自分に呆れ返った心境で、絡まって散らかった頭の中を有耶無耶にするかのように髪を掻き乱す。
煙草に口付けたまま深く息を吸って、記憶を反芻した。気が狂いそうなほどに痛む頭と重い足で帰ってきて、乱雑に分厚いコートを掛けた後の記憶が無い。彼女の証言によればソファで気絶するかのように寝ていたらしいが、問題はその後だ。神経質な俺が揺さぶられても起きず、あまつさえ子どものように彼女の手を握ったまま眠ったなど到底受け入れ難い。そこまで気を許すつもりは無かったはずだった。
今日は少し風が強い。咥えた煙草から上がる煙すらも一秒と留まらずに消えていく。いつもこの煙を羨ましく思うのに、気がつけば俺の袖をつまんで見上げてくる存在ができてしまった。振り払おうと思えば容易く振り払える、そんな頼りない力で引き留められて躊躇うような理性が残っていたのかと自分でも驚いた。それでも尚残った未練を、俺の代わりに燃やして風に乗せている。消えたがりの俺を、少しずつ弔っている。
『風に乗って』
風に乗って
もう5月ですね。
ママチャリだけど自転車で近場の河川敷の、自転車ロードに行きたいな。
風に乗ってさぁーと走るの、最高よね。
風に乗って
何処かへ行きたい
学校も将来も友達も家族も
なんもかも捨てて
風に乗ってるだけで
一生が終わるなら
それ以上に楽なことない
もう、いいよ
感情ってモノでこれ以上人間を苦しませるな
本気で人類滅亡、望んちゃっていいか
人工物一切無い 地球に戻っちまえ。
_ ₄₀
「こうやってほら、風をつかまえるの」
そう言ってふわりと空へ浮き上がった少女を、私は呆然と見上げた。ひらりと翻った布の軌跡が、見開いた私の眼に焼きついていく。
難なく空を飛ぶ技を身につけたこの少女は、言わば天才だ。この年齢でそれが可能な子なんて、今までこの辺りにはいなかった。
少女は踊るようにくるりと空で一回転し、大きく手を振って見せる。それがどれだけ難しい技であるか、全くわかっていない顔をしてる。私がそれを身につけたのはつい先日のこと。なのにそれをあっさりとやってのけるなんて。——これが実力の違いか。
風を身に纏わせられる技使いは、実は少数派だ。空を飛べれば一人前だなんてうそぶいていた大人もいたけれど、あれは大人が子どもを利用するための方便でしかない。いや、詭弁か。
こんな私だって昔はもっと純粋だった。大人たちの役に立てることを誇りに思って。だから風を味方につけようと長らく必死になっていた。
「馬鹿だよね」
思わず独りごちた声は、風に乗って流れていく。
空高くのぼっていくこの少女が、それに気づくのはいつのことだろう。その日が来るのを待ち望んでいるのかどうかもわからず、私は唇を強く引き結んだ。
――風に乗って――
ある浜辺で潮風が吹いた
風に乗って海の大きさを感じた
ある田舎でそよ風が吹いた
風に乗って自然の優しさを感じた
ある花園に小夜風が吹いた
風に乗って紙飛行機が飛んで行った
誰かに届いて欲しい
風に託された
大切な想いだった
私は屋上で歌を歌う。
この歌声を、遠くまで響かせるために。
次の日は山で歌う。
その次の日は、海で。
また次の日は、橋で。
人の目など、些細なものだ。誰がなんと言おうと私は遠くへ歌を歌う。
今日は広葉樹の公園で、私は歌い続けた。
どこへ行くのかは分からない。
ただひたすらに、風が運ぶ事を祈って歌う。
生きているのかも分からない、あなたに届くように歌う。
ふと、私の目の前を青い葉が過ぎった。
それは気がつけばもう、手の届かないところへ飛んでいってしまった。
あの葉のように風よ、私の歌をあなたのもとへ。
『風に乗って』
あなたが受け取ってくれないこの気持ち
風に乗ってどこまでも
風に乗って
空を見てみたい
自由に飛んでみたい
あなたに会いに行きたい
だけどあなたはきっと
あの人といるから
私は風に乗って
ずっと見守ってます
《風に乗って》
#29
【風に乗って】
夏休み。真っ青な空の下に建つ、白い家。その南側にあるサンルーム。ここに僕の思い出が詰まっている。
子供の頃、両親は共働きで家にいる時間があまりなかった。だから夏休みとなれば毎日のように祖母の家に行って過ごした。
祖母はその時もう古希を迎えようとしていたが、随分と元気でまだ仕事をしていた。
仕事と言っても家の近くにある小さな花屋を経営しているくらいだ。
それでも花に囲まれ生活しているからか、祖母はいつもおしゃれをしていて、少女のような雰囲気さえ感じられた。
僕は祖母の家に行くとほとんどサンルームで過ごした。本を読んだりするにも、食事をするにもずっとここにいた。
気が向けば手伝いもしていたが多くはない。
ある時、いつものようにサンルームで絵を描いていると道の向こうに誰かいるのを見つけた。
女の子だった。
僕と同じくらいの年齢のようで、ふわっとした白のワンピースにつばが大きめの麦わら帽子を被っている。
その女の子もこちらに気づいたようで、手を振ってみると、まさか庭に入ってきた。
ぱたぱたと小走りできたと思えばにこっと笑い、
「お友達にならない?」
と言ってきた。あまりにも突然すぎてしばらく意味がわからなかったが、ゆっくりと理解するとなんとなく頷いた。
やった!と声を上げ喜んでいる女の子。
「私ね、このお家の隣に住んでいるの。」
聞いてもいないことを教えてくれたが、不思議と迷惑だとは思わなかった。むしろ嬉しいような…
この出会いをきっかけに、僕と女の子はよく遊ぶようになった。
女の子は名前を花梨といい、カリンの花言葉のように豊麗、美しかった。
僕は花梨と遊ぶようになってからサンルームに篭もることも少なくなっていた。
それでも、一日に1回、絶対にサンルームにいるときがある。
紙飛行機を作るときだ。
花梨と知り合ってから、僕は今で感じたことの無い感情を抱いた。甘くて、それでいて苦しい…そんな気持ちだ。
きっとこれが恋なのだろう。
だから、いつでも花梨と一緒にいたかった。でも、こんな子供には無理すぎる話。
そこで僕は思いついた。文通すればよいのだと。
せっかく文通するのに普通の手紙じゃつまらない。また僕はひらめき、紙飛行機なら面白いだろうと花梨に提案した。
花梨はすぐに乗ってくれて、その日から文通を始めた。
最初に僕が送ることになった。さっそく書こうとしたが、なんだか祖母のいる前では書けなくてサンルームに来た。
ここなら花梨の家も見えるし、飛行機を飛ばすには絶好の場所だ。
手紙を書くなんてことは今まであまりしてこなかったから内容が思いつかない。結局在り来りな事を書いてしまった。
花梨
今日からよろしく。でいいのかな。
おばあちゃんが育ててるカリンがそろそろ咲くから今度見においでよ。
待ってる。
こんな事しか書けなかった。当時は中々だと思ったが、今思えばとんでもなくつまらない手紙だ。
書いた手紙を飛行機の形にして花梨の家へと飛ばす。
風に乗って飛んでゆく紙飛行機は、僕たちの思い出や恋も詰まっている。
ふわふわ。ふうわり。
赤い風船が、空高く浮かび上がった。
風に乗って、風船はどこまで行くんだろう。
どこかへ逃げ出したい。
嫌なこと、全部忘れたい。清々しい気持ちで。
逃げたあと、戻ってくるから。
お題『風に乗って』
─風に乗って─
私はね、今日ベランダで歌ったんだ。
風がとても強かったよ。
気を抜いたら落ちちゃいそうなぐらいつよかった。
でもね、その風のおかげで沢山歌えたよ。
私の声を全部消してくれるの。
歌うのは楽しかったよ。
自意識過剰だけど、意外と上手く歌えたと思うの。
風に靡いてる庭の木を見てたらね、ふと思ったの。
声を消すみたいにベランダから落としてくれないかな、って。
風に乗って、私の存在ごと消してくれたらいいなって、思ってしまったの。
最近ね、私は死にたいのか分からなくなっちゃって。
風に押されたら、自然に死ぬことができるかなって思ってね。
そんなことしても、死ぬ勇気がなければ抗ってしまうのにね。
分かっていても、いつまでもこの癖は抜けない。
ベランダに居ると、楽になれるから。
だから今日も、風の強いベランダで、私は歌う。
病室の窓は換気のために少しだけ空いていた。
新年度が始まり、普通だったら私も今頃、高校生活をスタートしていたはずだろう。
でも、ちょっとした事故で、現在ベッドで寝たきり生活。ようやく上半身を二十度くらい起こせるくらいになった。
少しあいた窓からは、もう桜のピンク色は見えず、萌える緑色の葉っぱ達だけが見えた。
風は北風から南風にかわり、少し温かい。
そんな風にのって、どこからか歌声が聞こえてきた。
ここは五階なので、外からは聞こえないと思うのだけれども……と、なると、同じ病室から?
風も心地よいけれども、歌声もまた柔らかで心地よい。日向ぼっこに最適な日差しも差し込み、私はだんだんとうとうとしてきた。
あわよくば、歌声だけでなく、私も風にのってこの病室から抜け出したいなぁ。
【風にのって】
この穏やかな風に乗って
私の気持ちも君に届かないかなぁ、、、
なんて。
今日は本当にいい天気で暖かい。
ふわふわ気持ちいい風が時折吹く、、
今日も、
大好きなんだよなぁ、
教室で君が楽しそうに友達と話している姿を見るだけでもこんなに心が跳ねる。笑っている君の顔はやはりすごく良い。嬉しくなる。
ベランダに出て私はそんなことを考えて浸ってる。
太陽眩しいし教室に入ろ、、
『今日いい天気だよな!ひなたぼっこ?笑授業始まるぞ』
、、これは、やばい、嬉しすぎる。すき。
普通の会話でもどきどきしてしまう私はかなり君に恋してるよ。
「う、うん!今入ろうと思ってたところっ!笑」
ふー、緊張したー、、
チャイムが鳴りみんなが席に座り始めて自分も座る。
一番後ろの席の私は君の背中をチラッとみて
顔がにやけそうなのを抑える。
いつか、ちゃんと伝えよう。
よし。と背筋を伸ばして教科書をひらいた。
紙飛行機を、あの人の元まで飛ばしたい。
あの人は言った
『風は多くのものを運ぶ。』
『花粉やウイルスもあれば、人の声や願いも運ぶ』
だから僕は、
このメッセージを書いた紙飛行機を飛ばす。
天国にいる、あの人に向けて。
「届くといいなぁ...」
「届かなかったら誰の手に渡るんだろ」
届かなくてもいい。
だって僕は、あの人が言っていたことを
信じてるから。
僕は、紙飛行機を飛ばした。
あの空の上にいるあの人の元に届くことを願って。
お題〚風に乗って〛
「匂い」がしたの。あなたの。
私 べつに匂いフェチじゃないし
こんな街中で ありえないのに。
ココロが 凍りついた感じ。
血の気が引くって こういうことなのね。
すれ違ったのは どんな人だった?
ゆっくり振り返った。
心臓の音がうるさい。
ちがう。
ホッと安心したのと
残念だったと期待してた自分。
あなたであっても 声はかけられないのに。
#風に乗って