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14風に乗って

私の父親はくだらない作り話をよくする人で、中でも特別にくだらなかったのは「うちのハムスターは竜巻に乗って飛んできたのを拾った」と言うものだった。ホームセンターで衝動買いか何かしたのを、適当に誤魔化していたのだろう。実際、隣町で小さな竜巻が起こって畑がダメになったという出来事の直後だったので、幼かった私はそのデタラメをすっかり信じた。もう竜巻に飛ばされないようにと大切に育てたハムスターは2年ほどで死に、20年後には父も死んだ。最後の最後までデタラメを言うくせは直らず、病気の進行なども誤魔化して、元気なフリをしながらさっさと入院して、最後の最後まで与太話をしていた。葬儀の日はよく晴れていて、海辺の火葬場から細く昇る煙はまっすぐできれいだった。ふいにその煙が竜巻のように渦を巻いて、ハムスターを連れてくるところを想像した。もちろんそんなことは起こるわけはなく、白い煙はただ昇って消えた。風のない、のどかな水曜日だった。

4/29/2023, 1:11:30 PM