ガルシア

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 溜め息とともに吐き出した白い煙が、風に揺られてすぐに溶ける。とんだ恥を晒したものだ。羞恥心というよりは自分に呆れ返った心境で、絡まって散らかった頭の中を有耶無耶にするかのように髪を掻き乱す。
 煙草に口付けたまま深く息を吸って、記憶を反芻した。気が狂いそうなほどに痛む頭と重い足で帰ってきて、乱雑に分厚いコートを掛けた後の記憶が無い。彼女の証言によればソファで気絶するかのように寝ていたらしいが、問題はその後だ。神経質な俺が揺さぶられても起きず、あまつさえ子どものように彼女の手を握ったまま眠ったなど到底受け入れ難い。そこまで気を許すつもりは無かったはずだった。
 今日は少し風が強い。咥えた煙草から上がる煙すらも一秒と留まらずに消えていく。いつもこの煙を羨ましく思うのに、気がつけば俺の袖をつまんで見上げてくる存在ができてしまった。振り払おうと思えば容易く振り払える、そんな頼りない力で引き留められて躊躇うような理性が残っていたのかと自分でも驚いた。それでも尚残った未練を、俺の代わりに燃やして風に乗せている。消えたがりの俺を、少しずつ弔っている。


『風に乗って』

4/29/2023, 1:01:47 PM