『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
茹だる季節を 置き去り
蒼き虚しさ 旧き石の灰
君の項を 巫山戯るよう
幾千年 天へ滴る名残痕
一度 問うても応えなく
声 木霊して真偽もなく
頷く君の今を連れ出す
―――
(雫)
雫
自然と雫が垂れてきた
私のほうが上だと思っていたのに
先を越された屈辱
昨日は雫が頬を濡らしただけではなく、鼻水まで流して、先輩のシャツを楕円形に湿らせてしまった。
みっともないところを見せてしまったような気がして、アルバイト先の長身でイケメンの先輩に対して、目を合わせられなかった。
けれど気になってしまって仕事の合間に少しだけ見ていると、目があってしまい、少し口角を上げてにこっと笑った気がした。
あまりに自然な笑顔にホッとして心が落ち着いてきた。
これまで感情を吐露することは今までにない体験だったので、自分でも自分のことがよくわからなくなっていた。
ツンツンと脇腹に触る者がいたので、左を見たら、後輩が震えていた。
「ねぇ、今の見ました? 確実に女性のハートにダメージを浴びせるスマイル! はー幸せ」
とうっとりしていたので、
確かに昨日は少しぎゅっとされて
(距離感が零で、そうゼロで? え?)
鼻をくすぐる香りと温もりと体格の良さが伝わってきたのが蘇ってきて、
「先輩? 赤くなったりして、風邪でも引きました?」
さっき落ち着いた心がざわざわとして、(心臓がうるさいわ)
「あれ? 硬直してます? 彫刻みたい」
と後輩が訝しんで脇腹をツンツンしても動けなかった。
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「やっと終わったな」
「次の講義行こうか〜」
都心部にある伝統的な大学のキャンパスでは自由に歩いている学生が沢山居て、大学の最寄りの駅までは笑い声や物音で騒がしかった。
「なー、今日もバイト?」
と馴れ馴れしく友達が肩を叩いてきた。
「うん」
スマホをチェックしながら、歩いていたら友達が急に半眼になって、
「バイト、どう?」
と訊いてきた。
「え? 真面目にやってるよ」
「お前が怪我して以来、ラグビー辞めてさ、どうなるかと思ったらバイト始めて心配してたんだ」
と眉を寄せていたかと思えば、
「イケメン、長身、知性、スポーツ、何でも揃っているからバイト先でも騒がれてるじゃね」
と好奇心をのぞかせた顔で訊いてくる。
「彼女できた?」
何故か小声で訊いてくるので
「いや、できないよ」
とスマホから目を離して思わず苦笑してしまった。
「そうかー、お前でもまだか」
と若干嬉しそうな顔をした友達が言った。
駅に到着して、改札のところで
「ああ、これから定期通院しているところに行くからまたな」
というと、
「怪我が治るのはもう少し時間かかりそうなんだな」
とさらに心配そうにしているので、
いつも気遣ってくれる友達に対して本当のことを伝えようと決めた。
「うん、もうこの脚ではラグビーはできないんだ」
「そうか、そうなんだ。ごめん、言わせちゃって」
少ししゅんとしてしまった奴に、
「いや、気にするなよ」
と言って病院に向かった。
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※本日の2024年4月21日(日)テーマ(雫)で書かせていただいた掌編は、昨日の4月20日(土)テーマ(何もいらない)の続きとなっております。
こころは しずく
きみのこころを
しぼるように
僕の思いを
しぼりだすように
雫が垂れて私の額に当たる
私の方が良かったのに、
後悔しても戻ってこない。垂れてこない
雫はどんな場面でも綺麗と感じる
なんでだろう 不思議だ
僕は花弁の先から
落ちようとしてる雫が好きだな
君はどんな雫が好きなの?
お題『雫』
自分の一生において、何を後世に残せるのだろうか・・・
先日、庭の草木の手入れや剪定をした。ハイビスカスの爽やかな香りが鼻を潤す。
何気なく思う。草木や土が俺の生活というか、心身面を支えてくれているのだという。
朝の植物の雨粒?雫は尊い。だから・・・俺はキレイな雫を残していきたい。
−雫−
頬を流れ顎を伝ってつと落ちる 悔しさ隠さぬ君を見ていた
題-雫
300字小説
雨女の恋
「私、雨女ですの」
お嬢様はよくそう言って苦笑いされておりました。旅行、パーティ、お芝居見物など、お嬢様が楽しみにしている日には必ず雨が降ると。反対に運動の苦手なお嬢様の体育会や海水浴などの日は必ず雲一つない青空になりました。
他に雨が降る日と言えば、お嬢様が執事と出かける日でしょうか。髪が乱れて困るとちょっとおかんむりのお嬢様はとても愛らしかったです。
そんなお嬢様の御成婚の日。その日は朝から快晴でございました。高砂の謡が流れるなか、一度会っただけの見合い相手のもとに嫁ぐお嬢様はしばし執事を潤んだ目で見つめられてました。
真っ青な空の下、出ていかれるお嬢様。玄関先には一粒二粒、雫の跡がございました。
お題「雫」
「雫」
みんながみんなして、仲良さそうに群れる。
群れるのが当たり前。
集団は優先されて当然で、群れないお前は負け組。
そんな空気が嫌いだ。
本当は、群れの中で全員仲良しなんてそうそう無くて、
1人が怖くて必死に笑顔を作ってる。
馬鹿みたいじゃん。
確かに自分が流されて辛くても安心できるかも。
でも雫は、それだけで綺麗なんだよ。
雫は落ちると土に染み込み、蒸発して雨として降り、また雫になる。だから人間もそう人間として死に人間に生まれ変わる。その雫が決して落ちないことは無く、雫として綺麗に儚く誰も知らずに落ちていく。人間の理想はこれなんだ。
顔から滴り落ちた一滴の雫。それが2滴3滴と増えていき私はそれを止めることなどできず、ただ見ていることしか出来なかった。
もしそれを止める力があれば何か変わっていたのかもしれないね
ポツポツと音を立てながら
落ちていく
一滴一滴の雫がやがて大海へ
向かって行く
そしてまた
ポツポツと音を立てながら
帰ってくる
雫って言ったら雨のこと浮かべた。
雨の日って憂鬱になるらしいけど、綺麗だよね
(何も浮かばなかった)
雫
なんか響きがいいよね
こんな名前の子とか、かわいいな
草木についている雫は綺麗なのに
お風呂の雫は厄介じゃない?
夏ならイイけど
冬はさ「ヒィ!」ってなるw
雫=水や液体のしたたり
涙もしたたり?
雨のしたたるイイ女とか?
あ、それ、ワタシかも⁉️w
自分くらい自分褒めないと
生きていけないお年頃…
雫ちゃんって名前がよかったなー
◯◯子世代からしたら
憧れる❤︎
雫(随時更新
君が瞳から溢すその一滴が
僕にとってはとても辛く、そして儚く感じた。
【雫】
まだ負けたくないと思いながらも
目からは雫が流れていく
それでも前には進むべく
拳を握って歩き出す
血も汗も数え切れないほど流したけれど
その雫も足跡のように
自分の後ろに落ちている
苦しみながらも立ち向かったことは
決して無駄ではないと
その雫が教えてくれる
長い沈黙の間、何度も何度も唾を飲み込んだ。
机を挟んで目の前にいる彼には目を向けられなかった。彼もまた、私を見ることなく俯いていたからだ。
窓からは夏の顔をほんの少し覗かせた陽の光が差す。そんな季節の訪れに周りの人々は浮き足立っているように賑やかに談笑を楽しむ。それと裏腹に、ウエイターは忙しなく笑顔を忘れ店内を行ったり来たりとする。
私はどこか自分が遠いところにいるような感覚になる。私と言う存在を確かめるために、机の上に乗せた指を僅かに折り曲げると、疑うまでもなくしっかりと意識の伝達は体の末部に行き着いた。
そのまま、コースターに乗せられたグラスに手を伸ばす。喉が渇ききって痛みを感じるほどでアイスコーヒーにしておいてよかったと浮かぶ。
ついこの前まで、二人でこの喫茶店で同じホットコーヒーを頼んでいたのにな、もうあったかくなったもんだ。そんなことを思いながら。
「……ごめん、別れてほしいんだ」
彼は、ずっと溜めていたような声で、独り言のように私に伝えた。
ああ。
グラスにようやく触れた手には、結露した冷たい温度が流れ落ちていく。飲もうとしていたアイスコーヒーは机から離れることなく、溶けた氷でコーヒー分離した水を揺らす。
そのうち手に流れる冷たい雫と、その上に瞳から溢れとめられない涙が落ちて、私の心をぐちゃぐちゃにかき混ぜていく。
終わりが来るだなんて、想像もしていなかったあの日々が蘇って、私は小さな嗚咽を漏らすことしかできなかったのだ。
【開いた傘の上で、雨のしずくが勢いよく跳ね返る音】
一滴一滴に個性と意思が感じられてなんか良い。
【一定のリズムを刻む、フィルターから滴るコーヒー】
音と香りの両方から癒しをくれる。
【頬を伝い落ちる涙のしずく】
濁ったものを消し去ってくれる不思議な水。
ありふれた日常で見つけた、愛しい雫たち。
19:雫
『雫』
小説を書き始めて、6年が経った。
最初は、書きたいという衝動に突き動かされて原稿用紙を殴りつけるように物語を書いていた。
何本か書いて、少しずつ刺々しさが取れていき、今は言の葉の雫が原稿用紙に染み渡るように書いている。
書きたいという意志だとか情熱だとかはもちろん大事なのだろうけれど、人々の心の奥底まで行き届くように、瑞々しい言葉を紡がなくてはならない。川の上流にあるような尖った岩をぶつけられても痛いだけだ。川の流れの中で角を取って丸みを帯びた言葉にすることが必要だ。
そのためには、兎にも角にも言葉と向き合うことだ。
それが物語を書きたいという欲望を言の葉の流れの中で滑らかにしてくれる。
作家というのは川を下らなければならないのだ。