憂一

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『雫』

小説を書き始めて、6年が経った。
最初は、書きたいという衝動に突き動かされて原稿用紙を殴りつけるように物語を書いていた。
何本か書いて、少しずつ刺々しさが取れていき、今は言の葉の雫が原稿用紙に染み渡るように書いている。
書きたいという意志だとか情熱だとかはもちろん大事なのだろうけれど、人々の心の奥底まで行き届くように、瑞々しい言葉を紡がなくてはならない。川の上流にあるような尖った岩をぶつけられても痛いだけだ。川の流れの中で角を取って丸みを帯びた言葉にすることが必要だ。
そのためには、兎にも角にも言葉と向き合うことだ。
それが物語を書きたいという欲望を言の葉の流れの中で滑らかにしてくれる。
作家というのは川を下らなければならないのだ。

4/21/2024, 12:01:25 PM