『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ポタポタかな。
ぽつり、の方がそれっぽいかしら。
涙はポロポロなのかな。
ぴちゃん、とか、ぴちょんだと一滴感ある。
ポタっと落ちるなら大粒を想像したり。
雫って色々なのね。
葉から滴り落ちる朝露が
スーッと大地に染み込んでいく時の
キラキラしているけど静謐な一瞬。
私はこれが一番好きかも。
端的に言うと、フラれた。そこにはたくさんの事情があった。仕方がなかった。それでも,その全てのことが頭から抜けるというか、意味のないもののように感じていた。その事実から来る悲しみだけが体中に染み渡っている。
その湿りが溜まりに溜まって、溢れる雫となって瞳から出ようとしている。とても辛い。でも泣きたくはない。上を向くと雫は落ちない。
「大丈夫…!」強がりはいつか本当に変わっていく。
『雫』
ぽたぽた ぴちゃん
雨が降ってきた
でも大丈夫
傘持ってるもん
どんな些細なことからでも
君を守ってあげるからね
『雫の聲』
方舟は水煙の中消えてしまった 貝殻は海を記憶する
幼いあの日、洞窟に隠れて雫の聲を聞いた 等間隔の落水は私の心の安寧だ 時間の存在を忘れて現実と距離を置く 遠くから『おーい』と呼ぶ声がする そう思った瞬間 私は糸巻きのように現実と距離を縮めた
来年は着れないワンピース もうすぐ潮が満ちる
雫
音もなく雫が落ちていたようで
気が付けば深い水溜まりになり
跨いで飛び越えたら靴がはまった
真っ白なスニーカーは泥で汚れて
茶色いシミとなって気が滅入る
今度は落ちてくる雫で洗い流す
もとの真っ白な靴に戻るまで
同じ石の同じ場所に滴り落ちる水滴が、いずれ穴を開けてしまうように。
知らないうちに侵されていたのだ。
僕の胸に空いた穴を、君は埋めずに消えてしまった。
いつかまた現れておくれ。
君の落とす鋭い雫が、今になってこんなにも恋しい。
(雫)
優しさと曖昧さは
どこか似ていて
使い方を間違えると
残酷な刃に変わるよ
今日キミの笑顔の中に
誰かの哀しみが見えたから
飲み込んだ言葉。
心のなかに、
『雫』
きらり。
一粒の雫が小波にもまれて消えた。
夜空の星が瞬いて、私を慰めてくれているような気がする。
それでも、まだ止まってくれない。
とめどなく零れるそれは、まるで海を作ってしまうんじゃないかってくらい、ボロボロ、ボロボロと溢れ出してくる。
その海に溺れてしまいそうな気分。
何でこんなになってるか、理由は聞かないで欲しい。
波の打ち寄せる音と、生ぬるい風に乗って、私の嗚咽はどこかに届くのでしょうか。
〜雫〜
この恋が小さな小さな雫となって君のもとに舞い降りたなら、どうかもう一生拭い去れない染みとなってその美しい魂を犯せますよう
珍しく早く起きた朝。
こんな日にぴったりではないかと、
普段は飲まない貰い物のドリップコーヒーを
引き出しの奥から取り出してみる。
封を切ると広がるコーヒーの香りを
めいっぱいに吸い込んで、
お湯が沸くのをぼーっと待つ。
ふつふつとお湯が沸いた音が聞こえてきたら、
ここからはお楽しみの時間。
そーっと注ぐと聞こえるパチパチという豆の音と共に、
温まってふわりと鼻をくすぐるほろ苦さに癒されながら、
最後の一雫がぽちゃんと落ち切るまで待つ…
出来たてコーヒーを持って、
いつもは開けない窓を開けて、
眩しい朝日とまだ冷たい風を感じながら一口、
そして大きな深呼吸。
こんな1日が最高の幸せ
「……なんだ。」
「映画。」
俺の目の前に立つ友人は、悪びれもせずにビニール袋を揺らした。
自分でも最近、調子が悪いことをわかっていた。自覚はしていたが、見ない振りをして今まで足掻き努力してきたのが今の自分だと思っている。
それでも人には限界というものがある訳で、それはなんの前触れもなく俺を襲った。
襲われた結果が、このザマだ。
「足の捻挫、疲労とストレスによる不眠症。わーお、ものすごい焦燥してるんだ?」
俺の了承を得ることもせずに部屋にズカズカと入っていった友人は、リビングの机に置かれた医者からの診断結果を見て分かりやすく目を見開く。
「そうだ。帰れ。」
「それは無理。僕このDVD楽しみにしてたし。」
毎日のように映画を見る自分と、よく家に来る映画好きの友人。何となく意見が一致して何故か俺の部屋に置くことになった映画専用の高級スピーカーをONにして、友人はディスクをDVDプレーヤーへと入れる。
こんなことなら俺の家に置くのをやめれば良かった。
と考えて、かといって友人の家までわざわざ行くのは気が引けるなと顔を顰める。
そんな俺を気にする素振りもなく、友人は座んないの?とソファを叩いた。どうやら自分はソファの前の床に座り込み映画に集中するらしい。家で見ろよ。
映画が始まると、こちらの様子など一ミリも気にならなくなった友人は画面を食い入るように見つめ始めた。友人が座らないならと嫌がらせに寝そべり、ため息をつく。
実は、こういう調子の悪い日は必ずといっていいほどコイツが来るのだ。何も連絡などしていないというのに、どこからか突然現れて映画を見たり話をしたり、満足したら帰っていく。正直何を考えているか分からない。でも、それに助けられている自分もいるというのが、もっと癪に触る。
「んー、やっぱり。熱出てる。」
深い海の底に沈んでいた意識が徐々に浮上し、水面まで辿り着く頃には、俺の体は倦怠感と節々の痛みに襲われていた。心做しか朦朧とする意識に混乱しながら起き上がろうとすると、ぬっと黒い影が自分の上に現れる。
「起きちゃダメだよ。熱あるんだから寝とけ。」
よく見ると青いラベルのペットボトルを持った友人がソファの前に立っている。差し出されたペットボトルを受け取る気にもなれずにぼんやりしていると、額にそれを押し付けられた。
「さっき冷蔵庫から出したからまだ人並みの体温ほどでは無いんだよなー。熱出てる時に冷たいもの一気飲みは危ないって言うし…ちょっとそこで温めといて。」
なんて雑なんだ。突っ込む気にもなれず、返事をしない俺に了承と取ったソイツはキッチンの方へと消えていった。
額に置かれたペットボトルを片手で抑えながら、友人を待つ間に窓の外へと目を向ける。外はもうとっくに暗くなっており、窓に多くの雫がついていた。雨降ってんのか?と疑問に思いながらそれを確認しに行く体力もないので思考を放棄する。
この症状なら風邪だな。
そういえば、俺の家に青いラベルの某人気スポーツドリンクのペットボトルなんて置いていただろうか。最近は買い出しもサボる傾向にあったし、買ったとしても食事に最低限のものしかないはず。
何故これが冷蔵庫に…?
ふと、友人が来た時に下げていたビニール袋を思い出した。DVDをみたいという割には少し大きめなビニール袋に少しだけ感じた違和感。
まさか、こうなることを知っていた?
もしやエスパーなのか?そうか、だから毎回調子の悪い日によくここに来るのか。くだらない考えを持ち、少し冷静になってから破棄する。確かに彼は頭が良く優秀だが、そこまでの力を持ってるわけが無い。
「ほーい。持ってきた。」
軽い口調が聞こえたと思えば、やっと戻ってきた友人の手にある冷えピタと言われるもの。
あぁやっぱり。と友人が自分を気にかけていたことを理解して、思わず頬が緩んでしまった。
そんな俺に気づくこともせずに、彼は冷えピタをペットボトルを避けた額に乗せると、なんでもないように言った。
「日が沈む頃に雨が降っていたんだけど、天気雨でさ。窓についてた雫が夕焼けの赤い日を浴びてキラキラ輝いてて、めっちゃ宝石に見えた。」
雫、ドロップ、ビー玉、ラムネ。
綺麗なものを集めたい。
透き通っていて、キラリとひかるもの。
雫がきらめく貴方の目元にそっと親指をおき雫が溢れないようにすっと拭き取る
普段からは想像できないほど弱った貴方
ずっとずっと我慢してたんだね。
貴方が沢山笑うのは、涙をぐっとこらえるためだったんだね。私、酷いや。好きな人をこんなに泣かせちゃった、最期は、二人共笑顔でお別れしようと決めてたのに、
あぁ、看護師さんたちが慌ててる、
私、終わりそうなんだね
でも、良いよ最期に貴方の顔見れたから…
そんなに泣かないでよ、笑えなくなるじゃん
大丈夫だよ。貴方は、強いから。私以外の人と幸せになってね。
もしも、貴方が泣いてたら神様でも何でもぶっ飛ばして転生でもしてあなたのこと助けるからね。その時は、おかえりって言ってね
じゃあ、逝ってくるね、
【雫】
熱い雫が頬を濡らす。
辛いわけでも、悲しいわけでもない。
なんの意味などなく、ただ涙が溢れてくるのだ。
人間そんな時もある。
ただそれが世界が自分にとって優しいものだからなのか、
はたまた、世界が自身にとって優しくないからなのか、
きっと色々な考えが渦巻いている。
それでもワタシは世界がワタシにとって優しいものであると思いたいのだ
雫
「みてー! 何にもなーい!」
少女の元気いっぱいの声が響く。その声につられてそちらを向けば、見慣れた景色とは大きくかけ離れていた。
一ヶ月、いやもっと経っているだろうか。日にちの記憶は曖昧だが、相当な時間が経っていることだけはわかっていた。
何日も、何日も降り続いた雨は水位が増した川のように建物を沈ませる。十階ほどあったこの建物もほとんど浸水してしまって、十階部分と屋上だけが水上から飛び出ているようになっている。
この辺り一帯は背の高いビルはあまりないから、見晴らしのよすぎる景色になってしまった。
久々に晴れた空に懐かしさを感じているとベランダに置かれたバラの花びらに溜まった雫がゆっくりとこぼれ落ちる。
水面が円を描くように揺れて広がり、やがて消えていく。
「これからどうしようねぇ?」
そんなことをのんきに考えながら、果てまで続く水平線を見ていた。
貴女が笑って色々な話を私の隣でする、それがどれだけ幸せなのか私はその時まだ知らなかった。貴女が居なくなってから貴女が隣にいる、笑っていることの幸せに気が付いた。棺桶のなかに居るひどく肌を白く塗られた貴女を見たとき。私の瞳から雫が落ちた。
こぼれ落ちる。
知識経験記憶までも。
数分前のことは分からない。
数年前のことも分からない。
幼少期のことならなんとなく。
あなたはわたしの大切な人。
あなたから見たわたしは幼なじみ。
#雫
麻袋のなかで蛇がとぐろを巻いていた。玄関を出て道路までの窮屈な庭に、母が所狭しと植物を植えている。通り道を塞ぐように根っこに土がたっぷりついた草達が並々に入ったそれを足で跨ごうとしたところで、目があった気がした。ズザズザズザザザ‥‥‥ゆったりと麻袋の擦れる音がする。奥へと入り込んでいくその尻尾の先をじっと見やる。何年か前に畦道で蛇の交尾を見た。絡み合いながら体の半分は宙に浮いていて、その筋肉に驚愕したのだった。道路際の花壇の、水やりしたあとの草花の葉先から雫が滴る。気付けば靴が濡れていて、なんとなく、蛇が靴を這っていくところを想像してみる。蛇に滅多に出くわさないものだから、あの袋を突付いて蛇が飛び出すところを見てみたい心がそうさせた。
僅かな希望を
天に祈るよう
見上げた空
あの日の朝を
思い出すよう
庭に咲く
紫陽花の葉から
流れる落ちる雫
もう
泣かないで
辛くないよ
苦しくないから
どこにいても
一人にしないから
そう言って
大切なあなたを
抱きしめたい
ピアノの鍵盤をひとつ、ふたつと叩くように、雨はゆっくりと降り始めた。降ってきたねと呟いて、あなたはふたつ並んだカップにお茶を注ぐ。ティーポットを掴む指は細く長く、適度に節の立って美しい。
携帯の画面に目を落とすふりをしながら、その優美な手をシーツに縫いつけることを考える。やがて注ぎ口からぽたりぽたりと滴る琥珀色。目の前に置かれたカップから香り高い湯気が立ち昇る。
「今、何か変なことを考えていなかった?」
あなたは意外に勘がいい。
「変なことってなあに?」
アタシはすっとぼけてニヤリと笑い、カップに口をつけた。口中に広がる芳しさを楽しみながら、ゆっくりと飲み下す。何を考えていたかって?そうね、例えば。これからあなたの頬を濡らす涙について。それとも上気した肌を伝う汗について。これからゆっくり教えてあげる、アタシのお姫様。
窓硝子を淫らに這う雨が、とろとろと官能をなぞる。ピアノの鍵盤を叩くように、アタシの指はあなたを奏でるだろう。あなたのこぼす雫は地面に染みこむ雨のように、アタシの耳を濡らすだろう。