『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
その日は雨だった。いつものように校門を抜け1人で家へと帰宅する。傘を忘れてしまったがどうということはない。これくらいの雨ならば大丈夫。
そう思っていました。雨足は私が1番目の交差点を渡る時に既に強く帰路の半分まで来るとゲリラ豪雨と見まごうくらいの大雨へと変貌した。
携帯で天気情報を見てみる。勘違いしないので欲しいのが私は学校に違反物を持ってきたわけでも私立の中学校に行っているわけでもない。
私は現役高校生である。
今日も今日とてぼっちで家へ帰ろうとしてこうなってしまったのだ。
「「はぁーついてないなぁ」」
え?声が被った事に驚いて慌てて向こうを見ると向こう側の人も驚いた表情でこちらを見ている。
彼女の名前は牧野桜と言った。彼女もこの近くの高校に通っていて雨のせいでここに雨宿りしにきたらしい。ついでに彼女も同じぼっち仲間である。
私達はすぐに打ち解け世間話をするぐらいの仲になった。それがやがて1月経つと友達となり2月経つと親友と呼べる仲になった。
今日も一緒に家に帰っていると彼女が突然、「私転校するの」と言い出してきた。
驚いて言葉が出ずにいると彼女は酷く申し訳なさそうにそして寂しそうに目を伏せていた。
彼女の前では心配したりして快く送ったが内心はとても乱れていた。たった1人の友人が居なくなってしまうなんて。
1人だけの帰路で私は目から雫を零した。
お題「雫」
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
更新が遅れてすみません。
雫
わらって
悲しさが消えた
眠って
疲れも消えた
飲んで
なかったことにした
何かが震えている
抑えているものが溢れていく
何粒かが滴り落ちて
ようやく
私を知った
私は変態だろうか。
いつもの、前から5両目の、自動ドア付近で音楽を聴いている彼。
目を閉じて、身体を揺するでもなく、座席のエンド側に長身を少し預けている。
私は、彼とは対角線上の自動ドア付近に立ち、彼を横目でちらりと眺めていた。
今年最初の真夏日となった今日、車内はエアコンが稼働しているとはいえ、自動ドア付近に立っていると、湿気を含んだ生ぬるい外気とエアコン若干の冷気が混合して肌を撫で、べとつく嫌な感触がしていた。
車内全体が湿気を孕み、これ以上混雑すれば、衣服が肌に貼り付くような不快感が増すに違いなかった。
けれども、私の目に写る彼が纏う空気感は、別物だったように思う。
どこか俗世離れしたような、深緑の中のような心地よいひんやりした空気。
彼と彼の周りの空間だけが切り取られたような錯覚を起こしそうだった。
私は、眼鏡を外して額に浮いた汗をハンカチで拭いた。ついでに鼻の頭も、ぽんぽんと軽く叩く。
小学生の頃、あれも真夏日だった。
クラスの男子に、鼻の頭に汗をかいているところを嗤われたのだ。
「浜里の汗、樹液っぽくてきしょいわ~。」
それから、男子間での渾名は『浜里カブト』とか、ただの『カブト』とかになった。
第二次性徴期に差し掛かる時期だったこともあり、私にとってはあまり思い出したくもない苦い記憶だ。
私は眼鏡をかけ、改めて彼をちらりと見た。
相変わらず、エンド側に背を預けている。
その首筋が少し汗ばんでいることに、私は気づいた。
まるでオートフォーカスされたように、私の視線は彼の首筋に釘付けになり、「なんて、艶っぽいんだろう」と思った時には、頬が一気に火照りだした。
変態か、私は。
彼の汗ばんだ首筋に見惚れてしまうなんて。
汗の雫は、醜悪の対象でしかなかったのに。
彼の其れは、違って感じられた。
#雫
とある小学校の、とある教室。
その休憩時間、子供たちは自分の好きなように過ごしていました。
外で遊ぶのが好きで、外でサッカーをする子。
寝るのが好きなのか、机に突っ伏して寝ている子。
友達とおしゃべりするのが好きな子。
そして本を読むのが好きな子。
何の変哲もない休憩時間の風景。
そして休憩時間は元気いっぱいの子供たちも、授業となれば静かになります。
学級崩壊もなく、皆真面目に授業を受ける……
何の変哲もない一般的なクラスでした。
ですが、こんな平和なクラスにも、学校の先生たちが頭を悩ます二人の生徒がいます。
一人目の名前を、鈴木 太郎といいます。
容姿はこれと言った特徴は無く、物静かな印象を受ける、本が好きな子供です。
休憩時間はいつも本を読んでいます。
そして、『読書に集中するあまり、周りの事に気が付かないタイプ』でした。
何も知らない人間からは『大人しくていい子』と見られるこの少年……
実は、学校の行事を当たり前の様に休み、授業態度も悪い、超問題児なのです。
何度言っても反省せず、『あいつはもうだめだ』と先生たちも半ば匙を投げていました。
二人目の名前は、佐々木 雫《しずく》。
太郎とは違い、彼女は校則ギリギリまで制服を改造し、派手な印象を受ける、オシャレが好きな子供です。
休憩時間はいつも、友達とおしゃべりしています。
そして『おしゃべりに夢中になるあまり、周りの事に気が付かないタイプ』でした。
何も知らない人間からは『学校の風紀を乱している』と見られるこの少女……
実は、学校行事を率先して参加し、授業も真面目に受ける、超優等生なのです。
ですが何度いっても服装だけは絶対に改めず、『服装さえ直してくれれば文句は無いのに』と先生たちから嘆かれていました。
正反対で、一見接点のなさそうなこの二人……
物語は、雫が太郎に声をかけるところから始まります。
◆
とある日の昼休憩の時間の事でした。
「ねえ、タロちゃんタロちゃん、何読んでるの?」
「……」
雫は親し気に、太郎に呼びかけます。
ですが、太郎は読んでいる本に集中しており、全く気が付きません。
「おーい、タロちゃんー」
「……」
「ねえってば!」
「……」
呼び続けても太郎は身じろぎ一つしません。
このまま呼びかけても、らちが明かないと考え雫は、太郎の肩を掴み揺さぶりました。
「へ?え?何?」
太郎は驚いて、読んでいた本から顔を上げました。
「やっと気づいた。 何回呼んでも、気づいてくれないもん」
「え?ああ、ごめん」
太郎はよく分かりませんでしたが、とりあえず謝りました。
そして混乱しながらも、状況の把握のために声をかけてきた人間の顔を見ます。
ですがそれが雫だと気づき、太郎はげんなりしました。
というのも太郎は、雫とは出来れば関わり合いになりたくないと思っていました。
雫は容姿こそ太郎の好みでしたが、太郎はギャルが嫌いなのでした。
『ギャルのような陽キャは、自分のような陰キャを馬鹿にしている』と思い込んでいるのです。
太郎は卑屈でした。
「なんで、私の顔を見て嫌そうな顔をするの?」
「別に……」
ただし、太郎にはそれを直接言うほどの度胸はありませんでした。
「それで何の用? 佐々木さん」
「ええー、そんな他人行儀みたいな呼び方をしないで。
雫って呼んでよ、タロちゃん」
「へっ」
太郎はまたも混乱しました。
タロちゃんと呼ばれたこともですが、親しくない女子に名前呼びを要求されるとは夢にも思わなかった(妄想ではあった)からです。
『これがギャルか…… 距離感がおかしい』と、太郎は思いました。
もちろん思うだけで、特に何も言いませんでした。
要求を無視することにしました。
「それで何の用? 佐々木さん」
「雫って言って」
「……」
「雫」
「……雫」
「オッケー」
太郎は屈しました。
太郎は度胸も無ければ根性も無いのです。
「それで何の用? ……雫」
「うん、タロちゃんが何の本を読んでるのかなと思って」
3度目の質問にしてようやく答えが得られたことに、太郎は安堵しました。
太郎は読んでいた本の表紙を見せます。
「ありがとう…… うん、やっぱりこれアニメでやってるやつだよね」
「うん、これが原作」
「おおー」
雫は思わず感動の声を上げました
「小説好きなの?」
「うん」
「カッコいい」
「う、うん」
太郎は急に褒められて、照れてしまいました。
そして『これがオタクに優しいギャル!? 実在したのか』と勝手に感動していました。
太郎の中で、雫への好感度が爆上がりしていきます。
「ねえ、タロちゃん。コレの一巻持ってる?」
「家にあるけど……」
「貸して」
「やだ」
「おねがーい」
「やだ」
雫の渾身のお願い攻撃にも関わらず、太郎は断りました。
太郎は自分のコレクションを他人に触らせたくないタイプのオタクでした。
こんな時にだけ、太郎の意思の強さが発揮されたのでした。
そして太郎は代替案を提示します。
「自分で買えよ」
「無理。 ママからお小遣いもらえないの」
「そのたくさんのアクセサリーとか髪飾りは?」
「コレ? これはお下がりとか、貰いものとか…… お金無いから、貰いものでやりくりしているの」
「ふーん」
太郎は気のない返事で答えます。
正直雫のお小遣い事情には興味が無かったからです。
ですが、心の中に少しだけ同情する気持ちが芽生えていました。
同じ作品を愛するものとして何とかしてやりたいと思ったからです。
雫とは関わりたくない。
だけど、この小説もおもしろいから読んで欲しい。
太郎は心の中で葛藤した末、結論を出しました。
「分かった。 貸してやる」
「ほんと、うれしー」
雫は嬉しさのあまり、その場で飛び跳ねました。
雫の短いスカートがめくれそうになり、思わず太郎は目をそらします。
太郎は紳士なのです。
「一つだけ条件がある」
太郎の言葉に、雫は飛び跳ねるのをやめます。
「もう少し大人しめの格好をしてくれ。スカートも長くして」
「えー可愛いじゃん」
「派手な格好が苦手なんだよ」
「ふーん。まあ、いっか。タロちゃんに嫌われても仕方ないしね」
雫は太郎のお願いを受け入れました。
「あ、そうだ。 せっかくだから、私も言うね。
授業中に本を読むのは駄目だよ。授業はちゃんと受けましょう」
「いや、でも――」
「だめ」
「……」
「持ってきちゃいけないスマホを持ってるの、先生に言うよ」
「う、分かったよ」
太郎は、隠れてゲームをするため、先生に内緒でスマホを持ってきていました。
大事なスマホを没収されてはたまりません。
渋々ながらも雫の要求を飲むことにしたのでした。
こうして二人は、お互いに駄目なところを直すことを約束したのでした。
◆ ◆
その二人の様子を見ていた人物がいました。
香取 翔子という担任の教師です。
翔子は、この問題児二人をなんとか更生しようと頑張っていました。
ですが、頑張りに対してあまり効果が出ていないのが現状でした。
しかし、二人のやり取りを見て、自分が間違っている事に気が付きます。
過度の干渉はかえって反発され、成長の妨げになると……
そして教師があれこれ言わずとも、子供同士の交流で子供たちはお互いを刺激し合い成長すると言うことを……
途中で聞き捨てならないことが聞こえましたが、些事な事。
教師にとって、子供の成長は何よりも喜ぶべきことなのです。
翔子は感動でのあまり、目から雫を――もとい涙を流すのでした。
「雫」
朝目が覚める。今日はやけに静かだ。
いつもならテレビや料理の音、あとあいつのデカい声が聞こえてくるはずなのに。何かあったのか?
少し不安になったので、リビングへと早足で向かう。誰もいない。
テーブルの上には、朝ごはんのサンドイッチとメモが置かれていた。
「おはよう!!!これを読んでいるということはようやっと目が覚めたということだね!!!今日はちょっと家を空けるよ!!!桜餅をたーくさん買って帰りを待っていてくれたまえ!!! ボクより」
珍しいこともあるもんだ。……というか、ここはあんたの家じゃないんだが……。居候のくせに。
ただ少し気がかりなのは、行き先も帰る時間も書いていないということ。念のために、自分は自称マッドサイエンティストに連絡をすることにした。
「あ!!!おはよう!!!何か用かい?!!」
どこにいるんだ?
「あー、え〜っとアレだよ!!!再発行した公認宇宙管理士の認定証を受け取りに行っているのさ!!!」
なるほど。それならいい。
「ちゃ〜んと桜餅を買って待っていてくれたまえよ!!!それじゃあまた……ね。」
……切れてしまった。
まあ、大した用事じゃなさそうだからいいか。
そう思って買い物に出掛けた。
洗剤と、電池と、それから桜餅をありったけ。
買い物もやることも済ませて、掃除やら夕食の準備に取り掛かる。
……にしても、随分と時間がかかるんだな。
もう夕方なのに、あいつはまだ戻ってこない。
もう一回連絡を入れるか。
『これは自動音声だよ!!!』
『ボクに用があるんだね!!!悪いが今は話ができないんだよ!!!悪いがまたあとで連絡をくれるかい?!!それとも留守番電話モードに切り替えるかい??』
留守番電話モードなんてものがあるのか……。
とりあえず一言だけメッセージを残そうか。
「おい、今どこで何やってる?」
……なんとなく違和感がある。
好物の桜餅があるのになかなか帰ってこないうえ、大抵連絡がつくはずなのに、いつもと違ってそれもない。
もしかしたら何かあったのかもしれない。
あいつの端末をこっそり見てみるか。
位置情報は……『未知の存在』が作った空間内を示している。
認定証の受け取りをしに行ったんじゃなかったのかよ。
なんであの空間にいるんだ?
自分はあいつの居場所へと急いだ。
01110011 01110101 01101101 01100001 01101110 01100001 01101001
〜明朝〜
さて、認定証が再発行されたみたいだから受け取らないといけないなぁ!仕方ない、受け取りに行くとするか!!
受け取りの準備をしている途中で、例の空間の質量が増加していることに気づいた。
……ん、待て。これは……?
まさか、何故だい?!!
あの空間を編集する権限はボクにしかないはずだぞ?!!
もしかして、残り僅かの宇宙を吸収してさらなるエネルギーを得たというのかい?!!
かなり古い機械人形が過剰なエネルギーを得ると宇宙規模の大爆発が起こるリスクがさらに高まる!
……仕方ない。ボクがなんとかしなければ!
彼らには悪いが、ボクだけで決着をつけるしかない!
こんな危険なことに巻き込むわけにはいかないからね。
……もしかしたら無事に帰ることもかなわないかもしれない。
それでも、宇宙を守るためならこの身を犠牲にすることも厭わないよ!ボクはそう決めたからね!!!
それじゃあ、行ってくるね。
今まで、ありがとう。キミもちゃんと、幸せになってね。
*.。+o●*.。+o○*.。+o●*.。+o○*.。+o●*.。+o○*.。+o●*+.。o○
「……で、なんでキミがここにいるんだい?」
人手は多い方がいい、と思ってな。
「どうして、ボクがキミに何も言わずにここに来たか、わからないのかい?」
抑揚のない口調だ。
いや、何かあったのかと思って、その……心配になったんだ。だから危険を承知でここに来た。
「……。ボクよりもずっと脆いニンゲンの分際で、なにができるというのだね?」
……。
「わかったのなら早く元いたところに戻りたまえ」
いや、戻るわけにはいかない。あんたをひとりこの場所に置いてはいけない。自分に「誰かに頼ることを覚えろ」って言ったのは、ほかでもないあんただろ?
「全く……いけしゃあしゃあと!」
「予備の装備を持って来ておいてよかったよ。ほら、これ。その赤いボタンを押すだけだよ。」
渡された装備を身につける。言われた通り赤いボタンを押した。本当にこれだけでいいのか?何かが変わったようには思えないが……?
「今度はそっちの青いボタンを押したまえ。そうすれば武器が出てくるはずだよ。」
……小型の銃のような武器が出てきた。
「試しにボクを撃ってみたまえよ。今身につけているそれの強度がわかるはずだ。」
ほ、本当にいいのか……?!かなり恐ろしいと思いつつ銃口を向ける。レーザーが当たったが、かすり傷ひとつつかない。
「今の一発はキミの星が吹き飛ぶほどの威力があるがこの通りだ!……この武器の出番がないことを祈るが……。」
そうだ。聞くのを忘れていた。ここで何が起こっているんだ?
「例の彼女がこの空間内に戻ってきたんだ。そしてここでキミの暮らす宇宙をさらに吸収したんだ。」
「この狭い空間内に膨大なエネルギーが集まるとどうなるかわかるね……?そう、宇宙規模の大爆発のリスクが非常に高くなる。」
「前時点ですでにかなり危険な状態だったのに、さらにエネルギーが加わった。準備が済み次第適切な処理を行うつもりだったが今は最早一刻を争う事態だ。」
「ボク達がすべきことは、この2つだ。彼女を無力化し、宇宙を切り離すこと、だよ。」
「ボクが彼女の内部にあるシステムにアクセスして動きを止め、機能を凍結させる。だからキミは彼女に紐づいたエネルギー源を切り離してくれたまえ。」
「おそらくエネルギー源はこの空間のどこかに複数ある。キミはそれを探して切断するんだ。おそらくこの前のスノードロップの花みたいに、わかりやすい形で存在するだろう。一刻も早く、見つけてくれたまえ。」
自分たちは急いで作業に取り掛かった。
どこにあるのかもわからないエネルギー源を探す。
何か四角い石碑のようなものがある。そこから根っこのようなものが出ている。
……これが宇宙と繋がっているのか?
「よく見つけてくれた!!!それを切り離したまえ!!!ボクの予想ではあと7つある!!!任せたよ!!!」
急に喋られるとびっくりする。
でもいつもの調子が戻ってきたみたいだ。よかった。
その後、すぐに宇宙と繋がる石碑が見つかった。
無事に切り離し終わり、自称マッドサイエンティストの元へ向かう。
「よくやってくれた!!!ボクも彼女の動きを止められたよ!!!さあ、最後に、彼女を回収しようか!!!」
もうすぐ決着がつくのか。
ホッとするような、不安なような。
「油断は禁物だよ!!!」
気を引き締め直して、宇宙を吸収する存在の元へと急ぐ。
「……いたぞ。あれがキミたちの宇宙を吸収した彼女だ。」
「ここはボクに任せたまえ。」
「……やぁ!久しぶりだね!調子はどうだい?」
「……貴方は私に嘘をついた。許すことはできないわ。それに、私が呑み込んだ宇宙まで奪った。どうしてそんなことをするの?」
「どうして、って……。この宇宙はキミのものではない!それにそもそも、ボクはキミの敵じゃないよ!」
「そうやってまた私を油断させるつもりなんでしょう?」
その直後、あいつは固まったかのように動かなくなった。何かが起こったに違いない。
「貴方も私の言う通りになって頂戴?」
「……すまない。」
小さな声で呟いたあと、こう続けた。
「ボクはここまでみたいだ。彼女の言いなりになる前に、キミの手でボクを葬ってくれないかい?」
こっちを向きもせずに、震える声で。
なんで、こんなことに……?
自分はあんたの後ろ姿を見つめることしかできなかった。
あんたの顔の縁から、雫が溢れた気がした。
……もしかしたら、「彼女」を止めたらどうにかなるんじゃないか?何か、なにかできることは?
……この銃についているロープで縛ればやつの動きを止められるかもしれない!とにかくやるしかない!
……それも虚しく、ロープはあっという間に解けてしまった。
「何やってる……?早く逃げたまえよ……。」
自分にできることなんて、何もなかった。
……だが今できることはひとつ。
逃げることだけだ。
自分はあんたを担いで逃げた。意外と重いな……。
……。
なんとか戻れた。
おい、戻れたぞ!
「……。」
反応がない。
おい、どうしたんだよ!桜餅、食べないのか?
「……。」
そのあと、色々試しているうちに、何日も経った。
でもあんたは動かない。
どうしたんだよ。なんで、なんで動かないんだよ。
あんたの端末が鳴っているのが聞こえたが、自分にはそれを確認する余裕すらなかった。
自分があの空間に勝手に行ったからあんなことになったのか?自分がもっと強ければあんたを守れたのか?
こんな静かな暮らし、すごく寂しいよ……。
自分はただただ自分の涙の雫が落ちていくのを見ることしか出来なかった。
雫
雫が落ちた
その雫は、サシャフローレスが流した涙だった
彼が、可愛らしい女性、次期にクリステン王国の姫様と
なる〇〇と、出会う前、さまざまな問題を抱えていたのだ
「はいこれ、誕生日の」
食器をシンクに持っていったあと、テーブルの上にポンと置かれたベルベット張りの小箱に心臓が跳ねた。
ジュエリーケース特有の引っかかりを指に感じながらそっと開ける。
ティアドロップ型のプラチナのフレームに、繊細に揺れる青い石。きれいなペンダント。
「サファイアだよ、誕生石だろ?」
「……いや違うし、アクアマリンだし」
「ええ?」
「知らないの? 天使の涙」
とたんにブハッと吹き出した。
「天使って柄かよ!」
「ひどっ」
「まあどっちでもいいじゃん。お前よく泣くからさ、ぴったりのデザインだろ」
そう言って屈託なく笑う。プレゼントのチョイスに心から満足しているんだろう。
それ以上なにも言える気がしなくて、ため息とともに飲み込んだ。
明るくて優しくて、ちょっとおっちょこちょいなところも可愛い私の恋人。そのはずなのに。
どうせならその朗らかさで、私を泣かせないようにしようとは思ってくれないの。
(雫)
書きながら宮部みゆきさんの『火車』を思い出しました。完璧だった計画を綻びさせた婚約指輪のくだり。
あなたの瞳がゆっくり瞬いて、まつ毛に乗った雨粒が頬に落ちるさまから目が離せなかった。
ずぶ濡れの体は冷えることも忘れていた。
お題:雫
突然強い雨がばうっと降ったあと、窓にぽぽぽとついてる雫。あれを見ると、なにやら不思議な気持ちになって、家の中にいてよかった。窓があってよかったな、と思うのです。
こんなに辛い気持ちになるまで
どれだけ涙と汗を流したことか
雫ほどで済んだのなら
どれだけ楽だったことか
私は自分が信じた道を進もうとした
でもそれはみんなとは違った
それだけなのに
私は組織の中でただひとり悪になった
私の周りを孤独がつきまとったせいだろうか
私はとうとう自分を見せることを避けた
これからもずっと
私は誰の気持ちも理解できない気がしている
そんな自分がせいぜいできるのは
自分の気持ちも理解しないことだけだ
雫
よくパワーストーンを雫の形にされているのを見かけますが、どんな意味があるか皆さんご存知ですか??
スピリチュアル的な意味では、雨や水、涙が滴り落ちて生まれる雫は、癒しや浄化、そして生命力や希望を意味するシンボルです。 乾いた大地を潤し、自然に恵みをもたらす雨は神秘的な生命や成長の源であり、雫は恵みの雨そのものを象徴してるのです。
沈む夕日の続き
雫
パラパラと雨が降り雨の水が水滴になり
木々の葉っぱや建物の屋根に溜まって
雫となって地面に落ちる。
そんな疎らな雨の日だった。
ハイネはトレーナーのパーカーの
フードを被り自宅のソファーに膝を抱えて
寝転がり蹲って居た。
そうして 酷く不機嫌だった。
昨日から視界が黒く靄がかって居たからだ
眼鏡のレンズ越しで見れば消えるそれは
普通の視界では無いのだろう。
幼い頃から魂の色を見る事が出来る
特殊な目を持つハイネは時々こう言った
現象に悩まされる事があった。
特にこう言う天気が悪い時は
たまに起こる現象だった。
それは、生者のマイナスな思考
ネガティブな考え方とでも
言えば良いのか
生きている者の愚痴 本音 嫉妬
羨み 見下し 蔑みなど生きている
者のマイナスな色の感情を受け取って
しまうのだ。
今も家の中で一人きりなのに
壁越しに通行人でも通ったのだろう
その人達の負の色を受け取ってしまって居た。
でも視界だけなら眼鏡をしていれば
見えないので何ら問題は無いのだが
厄介なのは負の感情が直接頭の中に
流れ込んで来る事だった。
時々起こるこの現象厄介なのは普通の
病気では無い為薬も治療法も無い事だった。
バインダー専門の医療機関もあるには
あるがまだまだ特異な体質や現象に対して
研究中な事も多くハイネみたいな
特異体質な人は稀な為あまり治療も出来ない
なのでこの現象が起きた場合ひたすら家に
引きこもり一日が過ぎるのを待つしか無い
外出したら人の負の感情が流れ込んで来て
直接頭の中で声として響く為ハイネに
とって鬱陶しく億劫だった。
しかしこの現象は本当に時々で
この現象が起きた一日だけ乗り切れば
また元に戻る為今日一日外に出なければ
良いだけの話だったのでハイネは
不機嫌になりながらもひたすら引きこもり
今日一日は仕事が入ってもキャンセルする
つもりだった。
しかしそんな外に出たくない時に
限って訪問客と言う者は
やって来るもので....
ピンポーン
家のチャイムが鳴った。
しかしハイネは無視を決め込む事にする。
しかしチャイムは中々鳴り止まない
何だこの非常識なチャイムの鳴らし方は
とハイネは苛々してきたが我慢して耐え
無視をしていたが....
玄関のドア越しに絶対に身近には訪問して
来ない けれども馴染みのある声が聞こえた。
「はー君居る?遊びに来ちゃった!」
ハイネはその声にびくんとして起き上がる。
自分の事をそんな風に呼ぶのはハイネの
知る限り一人しか居ない....
ハイネは今すぐ家から逃げ出したい
衝動に駆られる。
しかし続いて聞こえて来た声に....
「ハイネ居る!」
「ちょっと何で出て来ないのよ大丈夫なの!」
お馴染みの二人の声が聞こえ....
ハイネは反射で玄関のドアを開けた。
「久しぶりね貴方はー君の家に入るの!」
「そうだな!」
そこには可愛らしい感じの30代位の女性と
精悍な顔付きの40代位の男性がソファーに
座って居た。
そうしてソファーからそれぞれ空いている
スペースにお馴染みのメンバー三人
「しかし驚いたね!」
「本当まさか街中で偶然声を掛けられたのがハイネのお父さんとお母さんだったなんて!」
「改めて自己紹介しますね はー君の
母のリンネクラウンです気軽にリンちゃんって呼んでね そうして私の隣に座ってる
格好いい人が私の愛しの旦那様
はー君のお父さんハイルクラウンさん
私は貴方もしくはイルさんって呼んでいるわ!皆も気軽に呼んであげてね!!」
「宜しく頼む!」両親の自己紹介に
周りが盛り上がって居たが
ハイネは心底早く帰って欲しかった。
(よりによってこんな時に来るなよなぁ...)
「あらミーナちゃんとナイト君は恋人同士なの良いわぁ~若いわぁ~!」
リンネが頬に手を当てて二人を
微笑ましい顔で見つめる。
ミーナとナイトが照れた様に笑って
「有難うございます。」と声を揃える。
「シズクちゃんは大人しいわねぇ
それにとっても可愛いわぁ~」
シズクはリンネの視線にどぎまぎしてしまう 「あっ....ありが...とう...ごさい...ます...」
ハイネは鋭い視線で両親が三人に
余計な事を言わないか見て居たが 不意に
.... 「っ....」ハイネは頭を抑えて
リビングの部屋から廊下側にそっと出る。
「ちっ....」頭が痛い 頭の中から
声が聞こえる。
『あいつ偉そうでむかつく』
『何であの子があの人と一緒に居るの
大して可愛くも無いのに....』
『死んじゃえば良いのに!』
「っ....」負の感情が 言葉が頭に
流れ込んで来る。
黒い靄が眼鏡の隙間から闇を湛えて
ぽっかりと口を開けて居た。
その闇に負の言葉と一緒に引っ張られそうになる。
ハイネは目を瞑る。早く一日が過ぎれば
良いのに....
ハイネは無意識に今一番側に居て欲しい人の名前を呟く
「シズク....」ハイネは廊下に座り込み
腕で顔を覆う。
自分が泣きそうになってるのが分かり
情けなくて顔が上げられ無い。
するとふわりと優しい温もりがハイネの
頭を撫でる。
「ハイネ....大丈夫?....具合悪いの?」
シズクが蹲って居るハイネと目線を
合わせてハイネの頭を優しく撫でて居た。
「っ....」ハイネは涙を見られない様に
眼鏡を押し上げる。
そうして自分の頭を撫でて居るシズクの
腕を取る。
「大丈夫だから向こう行ってろ!!」
また心にも無い事を言ってしまう...
本当は側に居て欲しいのに....
「で....でも....」シズクはハイネの言葉に
躊躇う。
「良いから向こう行け!!」ハイネの
言葉に従ってシズクは踵を返すがしかし
また戻って来て今度は自分の胸に
ハイネの頭を抱えて抱きしめた。
「なっ....」これにはハイネも予想外で
言葉が止まる。
「ハイネが....大丈夫でも.... それでも....
ハイネが皆の所に戻りたいって思うまで....
私も....此処に....居る....」
その言葉にハイネは目から涙が雫になって
流れそうになるが眼鏡を押し上げて
誤魔化す。
「何だよそれ...うぜえ....」
ハイネは自分の腕をシズクの背中に回して
抱きしめ返したい衝動に駆られるが
それをすると自分の気持ちが溢れそうで
怖くて出来なかった。
そうして 雨も上がり晴れ間が覗いた頃
ハイネの両親の見送りに皆が立った。
「今日はありがとうね!はー君の
お友達と喋れて楽しかったわぁ~」
「ハイネたまには実家の方にも来て良いん
だぞ!」
「行くかよ面倒くせェ!」ハイネは父親から視線を逸らしそっぽを向く
「それじゃあ皆今日はありがとね
さようなら!」
そうしてクラウン夫婦は背を向けて
駅の方へ去って行った。
そうしてハイネの家から遠く離れた後
クラウン夫婦は話し出す。
「あの子こう言う雨の日はたまに
情緒不安定になるから心配で見に来たけど
要らなかったわね!
あんなに心を開けるお友達が居るんですもの.... それに弱さを曝け出せる
大切な子も出来たみたいだし....
ああいう恋愛に不器用な所貴方そっくりね」
「何を言う俺はちゃんと君に気持ちを
伝えただろう...」
「其処まで来るのが長かったけどね!」
リンネの指摘にハイルは黙り込む
(そう言う所が似てるのよ!)
リンネはふふっとハイルを見て微笑む
そうしてクラウン夫婦は手を繋ぎ
息子の状況を知れて大満足だったのだった。
雫
今はたくさん雨が降っているかもしれない
でも雨あがりの雫はとてもキラキラしていてきれいだよ
雫が、ぽとりと地に落ちた。
それを見てはじめて、自分が泣いていることに気がついた。
「わ、わ。なんでだろ」
誰かに見られていないだろうか。
落ちた雫は無理でも、せめて心だけでも隠そうと取り繕おうとして、泣き笑いの笑顔を作った。
だけどそれも無駄な足掻きだったみたい。
誤魔化そうとすればするほど、ぽたぽたと雫は落ちて、止まらなくなった。
『雫』
ぽと。
もう
水で
いっぱいのコップに
また
雫が
落ちる。
自分でも
分かってる。
もう
これ以上の
我慢は
無理。
とっくに
限界なんだ。
なのに、
水が溢れないように
まだ
頑張ろうとしている。
限界が来て
その先
自分がどうなるか
分からなくて
怖いから。
溢れないように
溢れないように
溢れないように。
もう無理
もう無理
もう無理!
わたしの
ほんとの声は
どっち?
#雫
はらりと、あなたの頬を伝うひと粒の雫
赤く充血した瞳から次々と零れ落ちていく雫たち
なぜだかとても綺麗だと思った
お題 雫
雫
「母さん、ここさあ。ほんとに、氷柱みたいな雫があったのさあ。」
あぁ、これはこの家の少年の声だ。母親を引っ張って私を見に来たんだね。
「だってさあ、西森中の姉ちゃんたちが【氷柱みたいだ】【インスタ映えする】って言ってたの、聞いてたんだもの。」
「嘘おっしゃい。雨も降ってないのに、あるわけないでしょう。」
雫って言葉を見るとアニメのしずくちゃんを思い……出した
あの声、あのキャラクター性が好きだったな
「すぐ泣くから、雫な」
昔あなたに付けられたあだ名
懐かしいな
今どうしてますか?
『僕をここまでお世話してくれてありがとう。
いつも吠えて君を困らせてばっかりだったよね。
でも嫌な顔見せずにいつも笑顔でお散歩に
付き合ってくれてありがとう。
◯◯、最後くらい笑った顔見せて。
そんな悲しい顔してたら安心して旅立てないよ。
本当に僕は君の家族の一員になれて良かった。
君の腕の中で天国に行けるなんて物凄く幸せ者だな。これからもずっと君の心に僕はいるから。本当にありがとう。』
僕はそう言った後、静かに息を引き取った。
目には澄んだ美しい涙の雫が光った。