『雪を待つ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
淡紅色の光を放ち
裸木に雪を待つ
遠き春に焦がれて
/ 雪を待つ
雪は雨より生まれ、積り溶けてゆく。
「雪と桜はよく似ていると思わないか」
もう一人の「自分」がこちらに語りかける。
雪は溶ける、桜は散る。短く儚い命の代償にした美しさには古より語り継がれてきた。
「確かに」
私のところはめったに雪が降らない。
雪が一面に広がったときは、勝手に飼い犬と出かけて怒られたんだっけ。
雪は綺麗だけれども、その重み故に我々の命を脅かすこともある。
「ねぇ、お願いがあるんだけど」
「何?」
「春が来たら、そっちの桜を集めてほしいんだ」
何をするのか、少し考えてみる。
「こっちの桜は遅いし、色が濃いんだ。薄いのも欲しくて」
「そっか……わかった、何を作るの?」
「雪を使うとだけ言っておこうか。楽しみにしてて」
心の底から楽しいのだろう。内緒だと言って笑う姿が無邪気で、愛おしく思えてくる。
鏡の向こうに映るノートには、何かがびっしりと書き込まれていた。
「考えるのもまた一興。春になったら答え合わせしようか」
『冬春の美巧』
お題
「雪を待つ」
『雪を待つ』
白い羽毛によって隠されていた新芽は芽を吹き、
今か今かと眠っていた動物たちは目が覚める。
桃色の花びらが降り注ぎそれはやがて陽の光を浴び青々と風と共に囁く。
そうしてやがてそれらは紅葉に染まり、動物たちは次の眠る準備に入る。
再び白い羽毛が降ってき、私たちを白の世界へと閉じ込める。
私は待っている。
もう春になることがない、永遠に冷たいままのあの人のことを。
私は何度も春を迎え、来る年も幾度なく吐息を漏らす。
誰でもいい。
あの人の氷った体を溶かしておくれ。
もう二度と眠らないように、凍らぬように。
そして、あの人にも春を。
持つ(まつ):
1. 人・事・順番が来るのを望み、頼みとして、時を過ごす。
2. 用意して備える。
(Wikipediaより)
#雪を待つ
【冬だけの友達】
木の枝、バケツ、石
必要な物は揃ってる
あとは雪だけ
雪さえ降れば、完成するんだ
雪だるまのユキちゃん
今年も会いたいな
#雪を待つ
雨は夜更け過ぎに
雪へと変わるだろう…
山下達郎のクリスマス・イブ
やっぱりクリスマス・イブには雪が似合う
賑わう街に雪が降り積もる
しんしんと積もる雪は
街のざわめきを消しながら
真っ白な世界に変えていく
やがて静寂が訪れる…
White Christmas❄
やっぱりこれがいい
🌈黒猫のつぶやき🌈
雪は綺麗だと思う
でも
降ったその後が嫌だなぁ〜
今日は雪が降るって君が言ったから
炬燵は窓越しの位置に入ってスタンバイ
なかなか降らないね
いつ降るんだろうね
そんな会話を楽しみながら
ふたりで雪を待つ
そんな日が来て欲しかったんだけど
「雪を待つ」
真っ白い雪が何もかも覆い隠す
沢山の色は1色に、鮮やかな色はモノトーンに。
暖色は寒色に。
気温も色までも寒さを感じる。
寂しさも混じった、切ない色。
雪は全てを隠してしまいそうな気がする。
何もかも見えなくなって、何もかも消えてしまいそうな。
それが悲しくて、切なくて。
それなのに、そう思うのに。
どこかで自分も雪を望んでいる。
自分も雪に溶け込んでしまいたくなる。
覆い隠して、消して、溶かして。
何もかも白紙にして欲しくて、けれど雪を待つ私の顔は
涙で濡れていた。
あの日...
私はずっと空を見上げてた
頬に舞い落ちて溶ける六花が
流れる涙と混じって
悲しみを減らしてくれる
そんな気がして...
目の前には、ぐつぐつと煮える鍋。
白菜は琥珀色に染まりつつ……あるかもしれない。
ああ、待ち遠しい。
「大根おろし、まだ?」
もうちょっとだよ。
「急いでよ」
辛い雪鍋は嫌だろう?
【雪を待つ】
No.14『営業スマイル』
散文 / 掌編小説
手のひらに吐き出した息は白く、そして暖かい。つかの間の小さな幸せを味わったわたしは、営業スマイルを浮かべ、
「クリスマスケーキはいかがですかー!」
アルバイト先の店先で声を張り上げた。
クリスマスケーキの売り子。それがわたしの短期のアルバイトだ。短期というか今日だけなのだけれど、一日でもそれなりのバイト代をもらえるのは有り難い。
「さぶ……」
ただ、このカッコだけはどうにかならないか。同じアルバイトの男の子は普通のサンタの格好なのに、わたしだけミニスカートで胸元が大きく開いたサンタコスだ。多分、顔だけで選ばれたんだと思う。バイト代も男の子より多かったが、それは性を売っているようで最初は少し戸惑った。
ホールケーキを買ってくれた家族連れの小さな女の子が、雪が降るといいのにねと笑った。雪を待っている彼女には悪いけど、雪に降られたらとても困る。
ショートケーキをひとつだけ買ってくれたサラリーマンのお兄さんは、そっと使い捨てカイロを手渡してくれた。クリスマスイブにアルバイトをしているわたしには、サンタさんからのプレゼントより嬉しかった。だけど、わたしが返せるのは営業スマイルだけで……。
お題:雪を待つ
最悪だった,少しは気に入られているのかなって思ってた
勘違いだったみたい、あの笑いは嘘に見えた
2人で歩きたかった坂道,1人で歩きたくなかった
初雪祭
僕の街では、初雪が降った次の日は必ず晴れて、虹がでる。これを狐の嫁入りのためだと考え、"きつね様"たちを祝福するという、初雪祭が、朝から夜まで開催される。稲荷神社から商店街まで、雪や氷を活かした美しい露店がずらっと並ぶのだ。小さいころから僕の冬の楽しみのひとつで、初雪が降るのを胸を躍らせて待っていた。そして、今年もその日がやってきた。
僕は幼なじみのユキと露店が並ぶ道を歩いている。彼女は「雪のお祭りなんて、私のためのお祭りみたいなものじゃない?最高!」と、例年のようにはしゃいでいた。
「ねえ、何でさっき一緒にかき氷買わなかったのよ、こんなに美味しいのに。勿体ないわ」
ユキは狐に似せてトッピングされた新雪のかき氷を見せてきた。けれど僕はこの街のみんなと違って、生まれつき冷たいものが苦手だ。
「うーん、寒いせいで不味そうに見えてたのが、寒いけど美味しそうって思うようにはなったんだけどね…」
だから僕は露店の食べ物より、氷の彫刻や氷細工に興味がある。氷の糸で織った緻密な掛け軸や、黒いキャンパスに描かれた霜の絵画、雪と氷のグロッケン……初雪祭は芸術で溢れている。一方、ユキの目的は真逆だ。
「あ、綿雪飴だ!買ってくる!」
なんて言ってまた駆け出して行ってしまった。自由奔放である。でも、彼女の喜んでいる顔を僕が一番近くで見れる点は、どこか優越感があって、悪くはない。そんなふうに思いながら、僕はまた、ユキを待つ。
12月16日『雪を待つ』
雪を待つ
やかましい蝉が死に絶えたから
勝手に霜が降りる。
季節なんて一つ老けるためのオマケだ。
雪を待つ
久し振りに去年からつけている日記を遡ってみた。
日付に穴が空いている部分もあるけれど
どうやら今年の1月6日に雪が降ったらしい。
丁度、受験が終わって浮かれていたようで
高3にもなって雪うさぎの親子をせっせと作って
写真にも収めていた。
豪雪地帯に住んでいたら、こんなに悠長なことは
言っていられないのかもしれないけれど
降る年と降らない年がある地域に住んでいるからか
今年も降らないかなと心が浮き立ってしまう。
うっすらと屋根が白くなっているのを見ると
粉砂糖が振りかけられたみたいで嬉しくなる。
我が儘な私は、
降ったら降ったで寒いと言うのかもしれないけれど
きっとまた雪うさぎを作れるくらいには
雪が積もることを望むのだと思う。
「田邊先生」
#雪を持つ
田邊先生のことは今でもよく覚えてる
初めてあったのは冬休みの終わり学校に行かなくなった私はそういう子供が授業を受ける施設に
週4日ほど授業を受けることになった
雪が降る中お母さんに車で連れてこられた特別学級
そこで先生に会った
「初めまして田邊幸ですよろしゅたうな宇留部ちゃん」「よろしくお願いいたします…」
うつむいた私を気にせず、先生はニコニコしていた
先生は20代後半で黒い長ズボンにワイシャツを着た
眼鏡の明るい先生だった
勉強が始まると
先生と一対一
気まずさが残る
私が勉強に身が入らない様子を見兼ねて
先生は一度授業を止めた
「いったん停止にして外でも歩こうか」
勉強を止めて二人で外の庭を歩いた
「嫌じゃないですか私みたいな子といるの?」「僕はまだ宇留部ちゃんのこと何も知らんからな嫌かどうかもわからん」「私のことはほっといてもかまいません、お母さんには私がてきとうに言っておくんで無理に私にかまわなくても…私の人生はもう駄目ですよどうでもいいです何もかも」「駄目なんか?」「駄目ですよ、学校にもいけない、もう普通じゃないです、私はレールを踏み外したんです…」
私は思わず座り込んで泣いてしまった
「レールを外れたんならまた見つけたらえぇよ宇留部ちゃん、なんならキミが自分でレールを敷いたっていい」
「…自分で…」
「そうや、今は肩の力抜いて、そんなことまで深く悩まんでええ」
「ありがとうございます…先生」
「そうや! 雪合戦でもしようか宇留部ちゃん」
「雪合戦ですか」「そうや、先生に雪玉当てられたら今日は授業なしにしたるわ」
「ホントですかじゃ本気でやります」
「ええなおもろくなってきた」
雪を持つと先生は私に雪玉をぶつけて子供みたいにケタケタ笑ってた
先生は大人気ないくらい強くて結局帰って先生の授業を受ける羽目になったけど
私があんなに笑ったのは本当に久しぶりだった。
雪を待つ
ただ雪を待つ
それだけの暮らしに
何ができるというのだろう
愛した人も
時が奪い去り
私はひとりぼっちになった
もしも願いが叶うなら
愛する人を
私にください
暗くなった
夜の街並みを
見つめて思う
雪を待つ_ #3
初雪はいつになるだろうか。
未だに私は貴方のことを待っている。
来ないとわかっているはずなのに。
ボールと一緒にくびとばねえかなーって
ちょっと本気になって考えた
所属してる輪の中で
限りなく弱者で底辺な自分。
弁えるのに慣れた
イキイキしてるのが憎かった
《____女子生徒、初冬の手記》
あいつと結ばれた君は
どんな想いで雪を待つんだろうな
私の地方はなかなか雪は降らない。
大人は迷惑がるが、子供の私は雪が大好きだ。
友達と雪合戦とか、雪だるまを作ったりだとか、楽しい思い出が蘇る。
今年の雪はこっちまで来ないかもしれない。
それでも、あの光景だけはずっと覚えてる。
あの楽しかった雪の日。
服を全力で汚して帰ってきたあの日。
また降るといいな
子供の私は、雪を待つ。