『雨に佇む』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
なかなか衝撃的な映像を見た
周りの景色が斜線に見えるような先日の豪雨の中、身動きひとつせずひっそりと佇む一匹のシマウマ
恐らく動物園での出来事を誰かが捉えたものなのだろうが、その映像のシュールさに私も身動きひとつせず見入ってしまった
あまりの豪雨の急襲に、驚きすぎてただ呆然と立ちすくんでいたのか、
あるいは、その雨に自分のルーツを本能的に思い出しサバンナに思いを馳せていたのか…
とにかくその姿の物語るものが多すぎて、私は笑いと涙が溢れ出てしまった
この夏の暑さや豪雨は、動物さえも詩人にしてしまう?!
『雨に佇む』
降りしきる雨の中、じっと静かに佇む
止まない雨の音、漂う雨の匂いを感じながら
じっと静かにあなたが来るのを待っている
例えどんな天気であっても、あなたが笑顔で会いに来たら私の心は晴れやかになる
あなたが悲しそうにしていたら私の心にも悲しみの雨が降る
今日のあなたはどんな顔をして会いに来るのだろう?
『雨に佇む』
No.103『雨に佇む』
涙が雨と一緒になって落ちていく。
大丈夫。バレてない。
でももう少しだけ雨に佇ませて。
雨に佇む
私はナルシストである。
カッコつけるのが好きだ。
服を着たまま全身びしょ濡れになり、雨に佇む自分。
うーむ、かっこ良い。
学生時代は午後から天気予報が雨でも、なるべく傘を忘れたふりをし、雨に佇む自分に酔いしれたものだ。
そして大人になり、濡れる機会は減った。
が、ゴルフは別である
雨でも雪でもプレーができる時は行う。
しかし今の私には髪の毛が少ないから、どうしてもあの時のびしょ濡れ感にならない。
髪は肌にべったりと張り付き、鼻水が垂れ、唇は紫に染まる。そして、早く乾かさないと、風邪をひいてしまう。
何よりスコアも伸びない。
でも、ナルシストな自分は、雨予報でもゴルフ場に向かい、雨具をなるべく着ないで今日もゴルフをする。
風邪をこじらせるかもしれないのに。
ナルシストって大変だよなー
…なぁ、あの人さっきも居なかったか?
ほら、コンビニに来る前からあそこに立ってただろ。
…やっぱ居たよな?な?良かった〜、なんか俺にしか見えてない幽霊とかそんな感じかと…。
……でも、変だよな。
こんな雨なのに…ずっとあそこにいるんだぜ。
傘も無さそうだし、カッパを着てる訳でも無いし。
誰かを待ってるわけでもなさそうだし…な。
…あの人、なんなんだろう。
……なんか不気味だし、さっさと行こうぜ。
幽霊でも、生きた人間でも怖いからさ。
君が去った後の僕の隣には
あまがえるがちょこんと座っていた
「……初めまして――」
固い声で名乗ったあと、彼はギクシャクと頭を下げた。
「……いらっしゃい」
歓迎しているとはとても思われないトーンになってしまった。それはそうだろう。高校生の娘が初めて彼氏なんぞを家に連れてきたのだから。
「どうぞ上がって!」
妻は俺とは対照的に弾んだ声だ。その声に励まされるように、緊張気味だった娘がさらに緊張している彼の背中を押した。
食卓の椅子に向かい合って座り、「雨の中ありがとうね」「いえ、」などと妻と彼は当たり障りのない会話をしている。
「娘から君は明るい茶髪でピアスを着けていると聞いていたけど」
「はい、普段はそうですけど」
「親に気に入られたいと思ったの?」
「ちょっとお父さん!」
「はい、そうですね」
彼が素直に頷いたので、それ以上嫌味なことは言えなくなってしまった。
「ふ、二人はどうやって出会ったの?」
とりなすように妻が言う。それは俺も気になっていたことだ。妻もまだ知らされていなかったらしい。親に言えないなんて、高校も違うし合コンとかナンパとかどうせそんなところだろう。娘は少し迷ったように視線を彷徨わせる。みんなの顔を一巡してから口を開いた。
「雨の日にね。助けてもらったの」
「助けてもらった?」
「うん、私傘もなくて転んじゃって泥だらけで。お店の軒下で休んでたの。通りかかる人は『あの子悲惨〜!』って目で見て通り過ぎるだけ。涙出てきちゃって」
「ああ、制服が汚れた日ね!」
妻が相槌を打った。そういえばそんなことあったなと俺も思い出す。
「そしたらね、一度通り過ぎた彼がコンビニで傘とタオルを買って戻ってきてくれたの」
「いや、その、近くにコンビニがあったんで」
「それで私お礼がしたくて、それから毎日同じところで待ち伏せしてたんだよ。恥ずかしくてお母さんたちに言えなかったんだけど」
娘は彼の方を向き、はにかんだように笑った。彼のことが大好きだというような笑顔。微笑み返す彼の目も同じように柔らかく細められていた。
心温まるいい話だ。
だけど、これはあまりにも。
「ふ、くくっ……」
笑ってはいけないのに笑いが零れてしまう。
「ふふっ、ふふふっ」
妻も同じように堪えきれないようで、口を覆った手の隙間から笑い声が漏れていた。
「ちょっと! 何なのお父さんもお母さんも感じ悪い! 私たちはちゃんと真面目に……!」
「ごめん、ごめん、本当に悪気はないんだよ」
「そうなのよ。あのね、あなた達の出会いが私たちとあまりにもそっくりで、可笑しくなっちゃったの」
「えぇ!? そうなの!? 知らなかった……」
妻が恥ずかしいから娘には内緒、と言って話したことはなかった。娘と妻はよく似ているらしい。
「ごめんなさい、お茶もお出ししなくて」
妻がキッチンへ向かう。
「時間大丈夫だったらゆっくりしていって。この雨の中、帰るのは大変だからね」
そう言った俺の声色はいつものものになっていた。娘と彼はホッとしたように目を合わせて笑った。……まぁ可愛い娘なんだ。チクリと胸が痛むのはまだ暫くは続くだろう。
窓の外では雨が降り続いている。俺は耳に手をやり、ほとんど塞がりかけたいくつかのピアスホールを撫でた。
#17 『雨に佇む』 2024/8/28
雨に佇む
手を広げ
落ちてくる雨を受けとめながら歩いた
やっと降ってきた雨は
泣けない私の涙みたいで
泣いているつもりになって
落ちてくる涙をぬぐいもせず
天を仰いだ
心が麻痺しているのなら
悲しみも苦しみも感じないはずだ
なのに
悲しすぎて可笑しかった
どうどうと雨は流れた
部屋に入りなさいと言われたけれど
私は泣きたかった
雨に打たれ
雨に佇む
服は濡れたけど
心は乾いたまま
風邪をひいたのは
心だった
たまに人のことで泣くときがあるけれど
自分の悲しみでは泣けない
豪雨が来ると
ああ
私の悲しみが氾濫していると思う
泣けない私の悲しみが
繰り返し降ってくる
悲しみはおそろしい
ポツポツと降ってくる雨に踊る
薬じゃ悲しみは癒えない
心は誰にも救えない
強く
強く
抱きしめてほしくて
ずっと雨を待っていた
ポツポツと降ってくる雨に佇む
為す術もなく
雨に佇む
雨に佇む私達…
君と雨を眺めてる
私のとなりにいる君は
今なにを思っているの?
私はしばらくこのまま
君と雨をみていたい
たまに、何も持たずに雨に当たりたいなて思う。泣いてたって誰も分からないから。雨が全部洗い流してくれるような気がするから。雨が私の事を叩いて、私は、きっと安心する。私は存在してるんだって実感できるから。雨に佇んでいる自分を想像したらお化けみたいで怖いけど。だから、誰もいない世界で、雨に当たりたい。誰かからどう見えてるとか何も考えたくない。
雨に佇む
折り畳み傘を差して、バスを待っていた。
土砂降りの轟々という音に聴覚が支配される。こんなに酷くなるとは思わなかった。折り畳み傘では小さく、私のカバンはあっという間に濡れて重くなった。中身は仕事の資料だ。ますます憂鬱な気分になる。
小学校低学年くらいの小さな女の子が私の隣に並んできた。激しい雨でぼやけてよく見えないが、隣といっても少し距離を空けている。ふとその子が近づいた気配がし、声が聞こえた。
「このバスで茶池に行けますか?」
「え?あ、すみません、分からないです。」
「ありがとうございます。」
しっかりした話し方に驚いた。はっとした。そういえば、なんでこんなにはっきりとお互い声が聞こえたのだろう、雨の凄まじい音の中で……。それに、あの子傘を差していただろうか?差していなかったように見えた。それなら合羽を着ていたのだろう。あの子は雨の中で平然と佇んでいたように見えたから。なんとなく意識してしまってあの子の方を向けなかった。バスがなかなか来ない。
「土砂降りですね。」
「ええ。」
また、あの子が話しかけてきた。答える時に何気なくあの子の方をちらりと見た。目を疑った。本当に合羽を着ていなかった。質問が口をついて出た。
「雨、好きですか?」
「はい。雨の日しか、お出かけできないので。」
「そう…ですか。」
雨の日しかお出かけできない?ますます謎が深まる。不気味さより好奇心が勝り何か会話したいと思ったその時。雨の中に、ぼんやりとバスの姿が浮かび上がった。輪郭のぼやけた2本の光を発しながらこちらに近づく。私はバスに乗ったが、あの子は行き先を確認して違ったのか乗らなかった。
座席に座って暗いバス停にあの子の姿を探したが、もう見当たらなかった。ふと、魚なんじゃないか。なんて思った。魚が水の中で会話できるという話を聞いたことがある。だとしたらバスに乗るというのは自殺行為だ。水がないから。水を一定時間溜めておける生物……河童?いやまさか、でも…。我にかえった。そんなことを考える自分が滑稽だった。
まだあの子の正体が気になっていた。確か目的地は茶池と言っていた。今度出かけてみようか、雨の日に。
大切にしている箱の中は
誰かに見せなくてもいい
知っているのわたしの瞳
曇天の空色は澄んでいる
泣いているのわたしの瞳
ナナカマドが薄紅をさす
風がもうすぐ連れてくる
雨が上がる静けさを空に
風がもうすぐ連れてくる
今はただ此処にいたいの
何もかも忘れていたいの
『雨に佇む』
雨に佇む
予報以上の豪雨の中、屋根のある場所を探して走る。
折り畳み傘は最早頼りにならなかった。
やっと見つけて一息ついたとき、
霞む視界の中、ずっと遠くの場所に、確かに、
雨に佇む、人では無い何かを見た。
まいったな、と葉月は呟いた。
図書館に籠もり、閉館時間だからと追い立てられてエントランスに出ると、豪雨だった。
戻ろうにも図書館は閉まってしまうし、司書に頼んで雨宿りさせてもらおうにも、追い立てたあの顔色を思うとそれも無理そうだった。
まさか降るとは思わず、傘の用意もない。
視界が効かないあたりを見渡すが、近くに雨宿りできそうなところも無かった。
まいったな、と再び呟き、道の向こうに確かあった電話ボックスまで、雨に濡れる覚悟を固めているところに、車がきた。
町が運営するコミュニティタクシーだ。
助かった、と乗り込む。
良かったです、あのままでは雨に佇むことになりました、と声をかけると、人の良さそうな笑顔の運転手が、大変でしたねぇ、と労ってくれた。
とりあえず、駅まで。駅ビルのショッピングセンターで雨が止むのを待って、歩いて帰ろう。
道すがら、運転手は話をした。町の交通機関のこと、道路の舗装の話、町の役員だったが退職して運転手をしているとのこと、町の観光スポット、小さな石仏の話。
この町にはあちこちに小さな石仏があるということだった。いつからあるのか、誰が造ったのか、何を祀っているのかなど、細かなことはわからない。だが地域の老人を中心に、それぞれの石仏を熱心に拝んでいるらしい。どんなご利益があるのかもよくわからない。
信心深い人が多いんですよ、と運転手はどこか自慢気だった。
まさに葉月が調べていたことだった。
もっと詳しく聞きたいが誰に聞くといいか、と尋ねたところで駅についた。
運転手は、さあて、町の教育委員会かどこかに尋ねるといいんじゃないかねぇ、と答えた。
料金を払ってバスを降りる。町の役所も閉まってる時間だ。メールか電話で尋ねて、今度は役場へ行くことになりそうだ。
糸口は見つかった。
雨はまだ降っている。
『雨に佇む』
満天の星空で有名な神津島。
船でたどり着いたのにまさかの荒天。
夜も雨はやまず空は真っ暗。
何しに この島に来たんだろう。
#雨に佇む
木霊を見たことがある…と言ったら笑われるだろうか、子供の頃の話だ。
祖父母の家の庭外れに大きな百日紅の木があって、季節には白いきれいな花が咲くのだが、独身で同居の叔父はいつも邪魔物扱いしていた。
カーマニアの叔父は、そこに新しい駐車場を作りたかったらしい。
家主の祖父も大して思い入れはなかったようで、では切ってしまおうという話になった。
いよいよ伐採業者が入る前日の夕方、祖父母宅で一人で留守番をしていた私は、テレビアニメが終わったタイミングでなにげなく窓の外を見た。
すると、百日紅の木のそばにポツンと佇む人影が見えた。
雨が降っているのに、女性が傘も差さず激しく泣きじゃくっている。
身も世もない…という言葉を当時は知らなかったが、まさにそんな泣き方だった。
私はびっくりし、そして怖くなった。
カーテンをそっと閉めると家中の鍵を確かめ、テレビを消してひたすら母と祖母の帰りを待った。
買い物へ行っていた二人は、その後10分ほどで帰ってきた。
庭で女の人が泣いてる!という私の話を母も祖母もまともに聞いてくれず、そんな人は居なかったし、気のせいだ、と言われて終わってしまった。
実はつい最近、この話を十数年ぶりに母にしてみたのだが、母は全く覚えておらず、苦笑しつつこんな風に言った。
「たぶん悟の元カノか何かだと思ったのよ、あのころ派手に遊んでたから」
悟というのは叔父の名前だ。
そうなのだろうか、そうかもしれない。
でも私は見たと思う、泣いていた女性は、体の半分が透けて木に溶けていた。
今でもあれは、明日伐られることを悲しむ、百日紅の精霊だと思っている。
ポツポツ
サー
こういう雨が
少なくなった
と感じる。
降る時は
【バケツをひっくり返した】
という
喩えが
ほんとに
ピッタリな
ジャーーーーー!!
土砂降りのことが
多くなった。
しかも
ちょっと待っていても
降り方が
あまり
変わらない。
地球の今後って
ほんとに
どうなっちゃうの?
#雨に佇む
雨に佇む
雨は色んなものを止める感じがする
人の歩みとか
音とか
リセットする感じがする
佇むのはいいのだ
立ち止まって、ぼんやり眺めたり
考えたりするのは必要な時間だと思う
大切なことは
そこで腐らないこと
また1歩踏み出すことなんだと思う
「雨に佇む」
最悪だ。
今日はせっかくのお出かけだと言うのに
外ではザァザァと音を立てて雨が降り続いていた。
窓を開けると、じっとりとした風が
全身にまとわりつく
まるで執着でもしているように
じわじわと僕の、気力すべてを奪っている気がした。
諦めよう。
気持ちを切り替え、改めて何をしようかと考える。
数十分考えてみたものの、特にやることがなく困ってしまった。
そんな時にふとあの子のことを思い出した。
今何をしているんだろうか。
と、ふと興味が湧いてきた。
僕とあの子の家は小さい頃から隣同士で
記憶が確かならば、今も隣に住んでいるはずだ。
……しばらく顔を見ていないけど、大丈夫だろうか。
残念ながら僕とあの子は中学卒業と同時に疎遠気味で
ここ数ヶ月は会話も交わしていなかった。
段々と増えていく不安を他所目に、僕は思い切って
会いに行くことにした。
案の定、あの子の家にはすぐ着いた。
やけに暗い家の中。
もしかして、引っ越してしまったのだろうか?
いや、でも人が住んでいないにしては妙に小綺麗と思った。
留守にしているんだろうか、と思いつつ
そっとドアノブに手をかけた。
思い返すと、昔は親同士も仲が良くて
好きな時にこうやって出入りしてたっけ
と、暖かな思い出が蘇ってきた。
ゆっくりとドアノブを回すと、鍵はあいていた。
もし、知らない人が住んでいたら、と
一抹の不安に駆られたが
きっとあの子は居るだろう、と信じ
部屋に向かった。
……居た。
かつてあの子と遊んだ子供部屋に向かうと
部屋の真ん中で、ひっそり佇むあの子を見つけた。
あの子は泣いていた。
僕は触れようとして手を伸ばした。
どうしたの?と声をかけてあげたかった。
けれど、それは叶わなかった。
身体が思ったように動かなくて、喉からは息が漏れるだけで
ただ、見つめることしか出来なかった。
僕は無力だ。
どうにか体を動かし、あの子に触ろうとした
……が、出来なかった。
実体が無いみたいに、するりとすり抜けてしまったのだ。
間違いなくあの子は存在しているし、ここが夢な訳でも無い。
なのにどうして──。
仕方なく顔を上げて見渡すと、僕は目を見開いた。
鏡に、映るはずの姿が見えないのだ。
あの子の姿はあるのに、まるで存在しないかのように
僕のたっている空間だけぽっかりと空いていたのだ。
僕は酷く動揺した。
もしかして、僕は死んでいるのだろうか。
でも、意識も記憶もあるし
幽霊みたいに手足が透けてる訳でもない
息だってしてるし、生きて……。
嘘だと思い込もうとする、が
目の前の光景が現実だ、と無常にも突きつけてきた。
手が震える。
じゃああの子が泣いているのは──。
あの子の手元を見ると僕の写真があった
その脇にはよく見知った、お母さんの文字が見えた。
(うちの子は先日旅立ちました
手紙での報告になって、ごめんなさいね。
今まで仲良くしてくれて本当にありがとう
きっと幸せだったとおもいます。
改めて、本当に今までありがとうございました。 )
悲報を知らせる手紙。
その時僕はやっと理解した
あぁ、いつの間にか死んでいたみたいだ
僕は何も出来ない。
もう、声をかけることも、触れることも
あの子の目に映ることも……
もう、二度とできない。
涙がひとつ、ふたつ、とこぼれ落ちる。
止めようとしても止められない。
雨に佇む
(本稿を下書きとして保管)
2024.8.27 藍