『鐘の音』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
毎朝6時に近所の寺院から鐘の音が聞こえてきます。その音を聞くと、夏の暑い日も冬の太陽が昇っていない薄暗い日でも、春夏秋冬を通して朝が来たと感じます。
鐘の音
おかしい。鐘の音がしない。
今日は朝から学校行事のオリエンテーリングのため、この湿原にきている。このコースはチェックポイントに鐘があり、その鐘を鳴らすことでチェックポイントがクリアーとなる。だから、さっきからチェックポイントを通る人たちが次々に鐘を鳴らしていたのに、今は音が全くしない。私たちがが最後なのだろうか?
「ねえ。鐘の音しないよね」
「そう。うーん。道を間違がったのかな」
そんなはずはない。湿原はそれほど広くないし、至る所に先生がいた。間違える前に誰かが声をかけてきそうだ。
でも、鐘の音がしない。
私たちは本当にあの湿原にいるのだろうか?鐘の音どころか人や鳥の声、気配すらしない。強い風が足元を吹き抜けていき、冷や汗が背中を流れる。
怖い!
怖い!
ここはさっきの湿原ではない。
何処?ここは何処なの。
カーン。カーン。
「鐘の音するよ。道合ってたじゃん」
本当だ。鐘の音がする。このまま進めばチェックポイントのはず。早く、早く鐘のところまで行かなければ捕まる。
え?
捕まる? 何に?
鐘の音は、雨が降ったあとや空気が澄んでいるときはよく聞こえるという。
鐘の音は何か危険を知らせたり、予感や警告であるとも言われる。
じゃあ鐘の音が聞こえない時は…
それは何かが迫ってくるための序章なのかもしれない。
「鐘まてもう少しだよ。頑張ろう」
何かが私の足首を掴んだのはその時だった。
体温計は7℃を表示したまま
昨日から上がりも下がりもしない
平日 空調に甘やかされた私の体温調節機能は
休日になっても働く気がないらしい
先週もそうだった
こんなときには
体感温度が2℃下がるらしい魔除けを窓に吊るす
多趣味な伯母のお手製
つるりと丸い 陶器の風鈴
茶碗を叩く音のような
けれども もっとやわらかくてよい音が鳴る
どうか我が身に巣食った魔のような熱を祓い給え
蘇りの札を貼られたキョンシー の気分で
額に冷えピタを貼る
思い出したように吹き出す汗を拭いながら
部屋の掃除をする
腐りかけの死体の速度で
室内にあるまじき湿った土の匂い
仏壇に供えた 貰いもののメロンから 無言の圧を感じる
傷んでしまったのか
切るのが億劫だ なんて思ってごめんなさい
ザラついて黴臭さい皮に恐る恐る刃をいれる
とたんに
ハマナスの花がひらいたのか と思うほど
濃密な甘い香り
瑞々しいオレンジの果肉
熱に浮かされた心身に染み渡る
風鈴の音と甘いくだもの
生き返った気分で
ぼんやりと風邪を引いたときの優しさを思い出す
猛暑の昼下がり
『鐘の音』
鐘の音が鳴る
ここはどこだ
見たことない草原
建物も鐘も見当たらないのに
わたしはどこまでいっても
一人ぼっちだ
もしかしたら
死んでしまったのかもしれない
確かめる術もない
誰もいないのだから
夢なら覚めてくれ
思いつくのは除夜の鐘と、祇園祭のお囃子か。
実はどちらにもなんのエピソードもない。
ただ季節は巡る。
鐘の音。
学校で、教会で、御寺で、
何かを知らせる時にそれは鳴る。
でも他の人には聞こえない鐘の音が、
君と初めて会った時、
鳴り響いたんだ。
よくある話だが、
小さい頃、親に捨てられてからの僕は、
本当に、碌でも無い人生だった。
施設でも学校でも苛められて、
何度も生まれて来なきゃ良かったと
世の中を恨んだりもした、
笑顔なんて、一度も心から出た事がなかった。
大人になって就職して、
何となく自分の将来が想像できるようになった頃、
君が青天の霹靂の様に現れた。
新卒で緊張した面持ちの君は、
纏めた髪が不慣れな感じで、
とても可愛く映った。
そんな君の教育担当になれた時、
初めて運命ってのを信じてみようかなって
気分になれた。
とはいえ、今まで人付き合いを避けてきた
僕に出来ることは何も無く、
ただ仕事だけの関係から進むことは、
無かった。
半年の研修期間が終わり
あとは実務経験を積む段階に入った頃、
君からご飯に誘われた。
と言っても、お世話になった代わりに
社員食堂で奢ります、ぐらいのものだが。
福利厚生でワンコインの定食を断るのも
逆に気を使わせるだろうと
食堂の隅でご馳走になる事になった。
彼女は、はにかんで
「ここの定食、結構ボリュームあるから
助かりますよね」
なんて事を言っていた。
「そうだね、その代わり
スタミナ付くんだから
午後からも会社の為に頑張らなきゃね」
だなんて、微塵も思って無いことを返した。
彼女は、そんな僕を見て
少し伏し目がちになりながら
話し始めた。
「先輩は、凄いですよね、私本当にこの会社に、ううん先輩みたいなしっかりした人に会えて良かったです」
彼女は少し悲しげに
身の上話を始めた。
「あまり話すようなことじゃないかもしれないですけど、実は私、小さい頃から両親が居なくて、施設出身なんですよ」
「‥だからこうして、人と話しながらご飯を食べるのも久しぶりで、本当に、この会社に入って良かったです」
正直、言葉に詰まった、
実は僕も、と言おうとも思った、
でも彼女が本当に、良かったという顔で
はにかんで笑うから、そうか、頑張ろうな
としか言えなかった。
彼女は、この会社に人生の意味を見つけられた
そんな気がしたから、何も言えなかった。
そんな日から数年後、
彼女は、更に人生を豊かにするパートナーと
一緒になる事になった。
僕は会社の上司として結婚式に呼ばれた。
思う事は色々あった、
正直悔しくもあった。
でも、彼女の
あの日と変わらない
はにかんだ笑顔を見たら
心から良かったな、と思えた。
彼女の新たな旅立ちを祝福する
鐘の音を聞きながら、
次は僕の番だなと
自然と笑顔になれた。
カーン
カーン
カーン
何の音?
と思ったら
近くに
チャペルがあった。
そうか、
きっと
知らない誰かの
結婚式。
早足で
チャペルの前を
通り過ぎる。
全然知らない
誰かの式なのに
いいなぁ。
わたしだって
結婚したいのに。
モヤモヤしてしまう。
わたしだって
好きな人と
祝福されたい!
あの
知らない
誰かのように。
#鐘の音
【鐘の音】
15年後
僕は世界を代表する
あの鐘を鳴らすから
鐘の音が聞こえたら
いつもの場所集合ね
ひぐらしの鳴き声が響き、
オレンジ色の空が広がる午後17時の駐輪場。
少し夕立の匂いがした。
ついさっきまで音楽室で一緒に歌っていたあいつと帰ろうとしてる訳じゃないけど、待たなくても一緒になるのは必然で。
「さっき、生徒会長と男が2人でいちゃついてんの見ちゃった」
いらない情報ありがとう。
やってんなあ、なんて月並みなツッコミ。
ぽつりぽつりといまだ雫を落とす空に、くっついてなかなか開かないビニール傘を無理やりこじ開けた。
「…おまえ、それさして帰るの?」
「まぁ、そうだけど」
ずっと友だちだ。
でも、心のどこかではこのメガネのイケボ野郎に期待してしまう、浅はかなわたし。本当に厄介だ。
もう何年こんな気持ちでいればいいんだろう。
「君は?」
「俺んちはお前の家と違って遠いの。迎え呼んだ」
じゃあなんでここ(駐輪場)に来たのよ、といいたい気持ちを堪えて、開いた傘を片手で持ったまま自転車を手押しする。
そしたらこのひとはごく自然に隣を歩くから、まったくもってわたしの心臓はもたない。
「…文化祭、うまくいくかな?」
「…さあ??」
気づかないふりをした方がよかったのかな?
何度も肩が振れる距離にいたこと。
本当は傘に入りたかったのかな。
心臓の音が大きすぎて、下校を促すチャイムが遠く聴こえた。
遠くから鐘の音がした。
とても素敵な音だった。
またいつか聴きたい、
静かな場所で。
耳を澄ましてみて
どんな音がする?
その音はどんな音か?
もしかしたら目に見えていないだけで
それは鐘の音かもね
目も耳も全ては確実じゃない
【鐘の音】
幼い日の事
一緒に歩いてる母から
「風は何処から来ると思う?」
と聞かれた
数日前に幼稚園で見た
絵本の挿絵が浮かんだ
話の内容は覚えてないが
教会だと思われる鐘の陰から
息をふうっと吹く男の顔
そのまま伝えた
「町内の鐘の中」
自分の子供が同じ事を言うと
その将来を心配してしまいそうだが
母はとても興味深そうに聞いてきた
「どこの?」
「外国と思う」
「鐘が鳴ったら風が吹くの?」
「分からないけど男の人が息をして風が吹く」
そんなやり取りをしばし続けた
拙い言葉を拾いながら
どんな空想を膨らませてたのか
母はとても楽しそうだった
数十年後
母は脳を患った
見舞いに行くと
空想と現実の境い目が無くなり
辻褄の合わない色んな話を
それは楽しそうにしてくれた
あの日
息子の拙い話の中に
母が聞いたであろう
鐘の音が
何処か遠くで
聞こえた気がした
お題「鐘の音」(雑記・途中投稿)
久々に雑記でも書きやすそうなお題が来た。
鐘の音、というと世間一般的には学校のチャイムなんだろうか。結婚式で使われる教会の鐘なんだろうか。
昔の勤め先が、何社か学校よろしく休憩時間毎にチャイムが鳴っていたのを思い出した。
今の勤務先は鳴らないんだよなー。携帯の時計と職場の掛け時計とパソコンの時間が全部違っててびっくりした。
パソコンの時間はちゃんと自動取得しているはずだろ!?と設定を確認したら、「時刻を自動補正する」のチェックが外れてて呆然とした。手動設定ならそりゃ狂うよ。
ガラケーを目覚まし時計代わりに使っているんだけど、最初にちゃんと合わせたはずなのにいつの間にやら五分ぐらい早くなっているの謎。遅いと困るけど早い分には良いやと思ってそのまま使っている。
学校のチャイムって元はクラシックの楽曲なんだっけ?
日本の家電はクラシック曲が多いってネットニュースを見て真っ先に「新曲使ったらカスラックがうるさいからだろ」と思った。そのニュースのコメントに、「某社の炊飯器は炊き上がりに、何かに負けたような音が鳴るからすぐに止めている」と書いてあって、笑ったしどこのメーカーか知りたい。
リンナイの風呂給湯器は商標登録したんだっけ。これも元はクラシック曲らしい。
暗いといえばJR新今宮駅の発車メロディが変に暗くて嫌いだけど。しかも某ゲームの曲に似ているといういらんオマケつき。まあ京橋は沿線民全員から総スカン食らっているけど。京橋っつったら一曲しかないだろ!?(某所CMソング)
こんな事を書きながら、小説『アクセルワールド』でライム・ベルって時を戻す能力の持ち主に主人公が指摘した「俺たちが通っていた小学校のチャイムの音なんだよ」(過去に戻りたい思いが能力として現れた)を思い出した。小学校なんか糞教師に当たったから絶対戻りたくないけどね。
幼馴染とは中学の時にはもう全然会わなくなったなぁ。
結婚式の鐘って自分で書きながら全然音色が思い浮かばない……。
あれ、キリスト教の結婚式には何回か出たはずなんだけどな??
クリスマス曲によくあるアレは教会の鐘なんだろうか。キンコンカンコン鳴る歌が好きです。
少し前にふと思い出してアニメ『仙界伝封神演義』の主人公:太公望のキャラソン『Chi-Ko-Go-Its』を聴き直して、あれこの頃から私鐘の音が鳴る歌好きだったんだ!?ってびっくりした。
元はアニメ『美少女戦士セーラームーン』の主題歌『ムーンライト伝説』なんだけど。それより古いアニメは全く覚えていない。(見ていたという記憶があるのに内容を何一つ覚えていないアニメが複数ある……)
ちなみに鐘の音といえば、実家のお寺の鐘が思い浮かぶ。正しくは梵鐘と呼ぶのだけど、除夜の鐘を思い浮かべてくれれば音色は分かるかと。
つくの下手な人はほんと下手だけどね。力が入っていないのが音で分かる。
慣れると片手でついても普通の音が鳴る。
除夜の鐘以外に鳴らしていないわけじゃなくて、実家の場合はお寺の行事のたびに鳴らしているんだけど、知らない人は知らないかも。
近くに数軒お寺があるんだけど、台風で崩れてから再建していないとか、最初からない(他県というか他府だけど両親の実家がこのタイプ)とか、意外とお寺に必ずあるものではなかったりする。
……小学校の修学旅行で広島に行かされた時、鎮魂の鐘か何かを鳴らした思い出が蘇った。
鐘の音
遠くに聞こえた鐘の音は
今はもう過去のこと
建物が遮断しているのか
そもそも鐘を鳴らさなくなったのか
知ろうとする気力はなくて
ただ全てを過去のものにして
勝手に遠くに来たつもり
ひとりで納得したつもり
(ほんとはまた聞いてみたい)
お題…鐘の音
帰らなきゃ
「待って!」
「っ…」
引き留める声を無視して走った。
「ぁ…」
あの人に見られているのに
足を止めてしまった、彼に追い付かれてしまうのに
またあの“シンデレラ”に戻ってしまう。
魔法を脱いだシンデレラじゃ、あの人の愛は受け取れないから、
さようなら
もう鐘が鳴ってしまったから
鐘の音
「除夜の鐘といえばさ」
縁側で棒アイスを齧りながら呟く。日陰になり風が通るここは涼むにはちょうどいい。
「随分と季節外れだな」
「涼しくない?」
「お化けの方がいいな」
あちらも棒アイスを舐めつつ言う。それでも話を続ける。
「子供の頃、近所のお寺に毎年行ってたんだけど、その年の大人たちは腰が重くてさ」
鐘の音が聞こえる中、そわそわしつつ何度も早く行こうと言ったのに、なかなか出かけようとしなかった。
「やっと辿り着いたと思ったら最後の鐘鳴っちゃって」
「108つ目が終わっちゃったのか」
「そうなのよーそれで」
不貞腐れる子どもにマズいと思ったのか、いつもは行かない年始の初詣に連れて行ってもらったのだった。
「初詣はなんか買ってもらったのか?」
「そこまでは覚えてないわー」
「親不孝者めー」
「そこまで言う?あ、溶ける」
棒アイスを食べ尽くす。あちらも食べ切って一言。
「もっと涼しい話が欲しい」
「鐘に貼り付けば涼しいのでは?」
「鉄臭くなりそう」
しょうもない話をしながら過ごす。
除夜の鐘などまだまだ遠い夏の日だった。
鐘はゆっくり音を奏でる。
私達、心の中では鐘がゆっくり揺れている。
静かに
どこかで。
キンコンカンコン、半端に間延びした鐘の音が校舎全体に響く。
それは、もちろん生徒会室も例外ではない。
蝉が鳴き、日差しが体に容赦なく照りつけるある夏の日。
「みずきぃ~~……生徒会長権限でここにクーラーつけれたりしない…?」
「流石に無理…できたら苦労してないよ……」
書類を捌きながら会話をする。
外では大会に向けて部活動に勤しむサッカー部や野球部のかけ声、校舎内ではギターや小気味のいいドラムをならす軽音部やヴァイオリンやチェロの美しい音が聞こえる弦楽部。
それぞれの部活が、それぞれの時間とペースで青春の一ページを埋めつつある。
そんな中、生徒会室には多少の会話と蝉の鳴き声と紙がめくれる音が響く。
これも青春の一ページなのかな、とも思う。
ふと顔を上げるとチャイムの音が鳴って、気付けばもう夕方になっていた。
「やっばい!瑞希もう最終下校時間!!」
彼がそう言うから時計を見ると、時刻はとっくに六時を過ぎていた。
「本当、早く帰んないと!」
僕たちは急いで荷物を持って靴箱へと走った。
校門からでた瞬間、もう一度、キンコンカンコンと半端に間延びした鐘の音が響いた。
ゴォーン。ゴォーン──。
茜色に染まる空に鐘の音が六つ響く。
最後の音がまだ終わらぬうちに、その青年は食っていたまんじゅうを飲み込み立ち上がった。
「暮六つ。──逢魔時」
呟きは風にかき消される。彼の羽織っている衣がはためき、通りすがりの女がギョッとした顔をして走り去った。
真っ赤な着物から覗く青年の左手は茶色く、節々しく──まるで枯木のようだったから。
「ぎゃはは! 逃げられてやんの! なあ、悲しいか?」
「うるせえぞクソガキ!」
隣で笑う子どもの頭へ即座に拳骨が落ちる。殴られた方は堪らず頭を押さえて泣き出した。
「痛い! 最低! 暴力はんたーい!」
「カッ、こんくれェで泣くなら最初から変な口きくんじゃねェ! いいか、こっちはアンくらいのこと慣れっこだからな!」
唾を唾しながら青年は左腕を長い手袋へ通し、何度か握ったり閉じたりした。黒い布で覆われた腕は、まるであの一瞬が嘘だったかのように自在に動く。
「……ギンジ殿。そろそろ参りましょう」
「ヨキ坊〜、勝てもしないのに喧嘩売るんじゃないわよぅ。あとギンジロウはそれを受け流せるほど大人でもないからねぇ。殴られる覚悟はちゃんとしときなさいよ」
ひとりは前髪を切りそろえた袴姿の生真面目そうな青年。もうひとりはヒョロリと背の高く肌の白い、洋装の男。
ふたりに声をかけられ、ギンジは「わぁってるよ」と手を振った。
「逢魔時。昼と夜の混ざる時間。──現世〈うつしよ〉と幽世〈かくりよ〉の混ざる時間。人々が床に入り、妖〈あやかし〉どもが目覚める時間だ」
一歩を踏み出す。影が揺れる。
真紅の着物を纏った青年を先頭に、彼らは歩き出す。
「人々に害をなす妖は俺が許さねえ。この俺──妖霊士ギンジが許さねぇ! 行くぞ、真弓、ロウジュ!」
「御意」
「はいは〜い。な〜んか今日は気合い入ってるわねぇ」
三人が列を成しゆらりと歩を進めたところへ、
「兄ちゃん、兄ちゃん! オレもいるぜ!!」
童子が先頭へ回り込みギンジの前でぴょんぴょん跳ねる。
ピクリ、と青年の眉が動いた。
「だ、か、ら!!! 危ねぇからついてくんなっていつも言ってンだろ!! ヨキ!!!!」
出演:「からくり時計」より 銀次郎、ヨキ、真弓、ロウジュ
20240805.NO.13「鐘の音」
鐘の音
除夜の鐘。それは私にとって最も注意すべきものだ。私が"この世"に居られるのはあと僅か。この短期間で、捜さねば。"あの小娘"を…
とうとうこの時を迎えてしまった。正月で賑わう人々の中を通り、"あの小娘"を捜す。絶対に近くにいる…私はそう確信していた。予想通り居た。私は急ぎ小娘の"背中"に飛び乗った。相手は勿論、無反応。私は小娘へ怨み、小娘が死ぬまで呪ってやろう。そう思っていた、そう思っていたのに、彼女の口から思わぬ言葉が発せられた。
「〇〇天国で元気にしてるかな?」そう言ったのだ。
「なんでぇ?」と隣の奴。
「いやぁ、だって可哀想だもの。あの娘の彼氏ストーカーだったのよ、"彼女の"。」
「どういうこと?」
「う〜ん、〇〇がストーカー被害にあってるときにタイミングよくくる男性がいてね、その人〇〇にとても優しくて一緒に夜帰ってくれたり、〇〇が一人にならないようにしてくれたりして優しい人…そう最初は思ってた。それからも〇〇のストーカー被害はなくならなくて、なんならエスカレートしていったの。そのときにはもう二人は付き合ってたから、あたしも流石に警察に…と思ってある日、被害届を勝手に提出しておいたの。その日はたまたま帰りが遅くなって夜道を一人で歩いてたら、少し先に〇〇の彼氏がいて声をかけようと思ったら、彼氏が〇〇をストーカーしてたの。だから、〇〇に別れたら?って言ったら怒っちゃって…そっから連絡がつかなくなってテレビで事件を知ったの。」
「あぁ〜!"ストーカー被害に遭っていた女性が殺害。犯人は〇〇さんの恋人でもあり〇〇さんのストーカーでもあった人物"で有名になった事件か!好きすぎて彼氏が殺っちゃったんですよね?確か!」
「そうそう。あの時怒らせずに〇〇に言えばよかった。本当の事を…」
「本当の事?ってなんですかぁ?」
「実はあの時、早く別れさせたくて"〇〇の彼氏私に下心あるみたいだから別れたら?私といるときのほうが楽しそうだし"って言ってしまったの。」…
私は思わず涙が溢れてきた。私の事を思っててくれたんだ。私の声は、思いは届かないかもしれないだけど口にしてあなたに言いたい、
「じゃあ、先輩。除夜の鐘鳴らして思いを晴らしましょっ!〇〇さんも先輩妬んで悪霊になんてなられたら困りますから、お祓いの意味も込めて!じゃあ、引っ張って!」
鐘の音が鳴ってしまえば二度と会えないし言えない。大きく息を吸って…
「ありが…」ドーン…ドーン…ドーン…
私の声は思いは最後まで、彼女に伝わる事がなかった。