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ひぐらしの鳴き声が響き、
オレンジ色の空が広がる午後17時の駐輪場。
少し夕立の匂いがした。


ついさっきまで音楽室で一緒に歌っていたあいつと帰ろうとしてる訳じゃないけど、待たなくても一緒になるのは必然で。

「さっき、生徒会長と男が2人でいちゃついてんの見ちゃった」

いらない情報ありがとう。
やってんなあ、なんて月並みなツッコミ。
ぽつりぽつりといまだ雫を落とす空に、くっついてなかなか開かないビニール傘を無理やりこじ開けた。

「…おまえ、それさして帰るの?」
「まぁ、そうだけど」

ずっと友だちだ。
でも、心のどこかではこのメガネのイケボ野郎に期待してしまう、浅はかなわたし。本当に厄介だ。
もう何年こんな気持ちでいればいいんだろう。

「君は?」
「俺んちはお前の家と違って遠いの。迎え呼んだ」

じゃあなんでここ(駐輪場)に来たのよ、といいたい気持ちを堪えて、開いた傘を片手で持ったまま自転車を手押しする。
そしたらこのひとはごく自然に隣を歩くから、まったくもってわたしの心臓はもたない。


「…文化祭、うまくいくかな?」
「…さあ??」


気づかないふりをした方がよかったのかな?
何度も肩が振れる距離にいたこと。
本当は傘に入りたかったのかな。


心臓の音が大きすぎて、下校を促すチャイムが遠く聴こえた。

8/5/2024, 11:43:56 AM